中国税関総署が8月18日に発表した最新の統計月報によると、2025年7月の中国家電輸出は引き続き低迷し、対米輸出の減少幅が拡大している。米国による相次ぐ関税引き上げが、家電輸出に深刻な影響をおよぼしており、中国企業は新たな市場開拓や現地生産の強化を通じて対応を急ぐ。
7月の中国家電輸出は3億8,000万台で、前年同月比4.7%減となり、輸出金額も83億300万ドル(約1.2兆円)で同3.8%減を記録した。2025年1~7月の累計輸出数量は前年同期比2.2%増と微増したものの、輸出金額は0.4%減とほぼ横ばいにとどまった。とくに、米国市場への輸出が顕著に落ち込んでいる。中国家用電器協会の副理事長、徐東生氏は、「4月以降、中国家電の対米輸出は下降局面に入り、米国はすべての輸出先のなかで最もパフォーマンスが悪い」と指摘する。その主因は、米国による高関税政策の影響だ。中国機電製品進出口商会の試算によれば、鋼・アルミニウム成分が30%含まれる家電製品の対米輸出にかかる総合関税率は、2025年現在で67%に達する。
米国による対中関税は、2025年に入り、さらに引き上げ、まず2月4日に「フェンタニル問題」を理由に20%の追加関税を課した。さらに4月には「対等関税」として全世界向けに追加関税を導入し、一時は総合関税率が145%に達するなど、中米貿易はほぼ停滞状態に陥った。5月12日の中米交渉で対等関税は一時的に10%に引き下げられたものの、6月23日からは洗濯機、食洗機、冷蔵庫、オーブンなどの「鋼鉄派生製品」に50%の「232関税」が課され、中国家電輸出にさらなる打撃を与えている。
米国以外の市場でも、家電輸出の低迷が見られる。ASEAN地域は5月以降、輸出が減少に転じ、BRICs諸国や西アジア・北アフリカ地域では2桁の減少率を記録した。これに対し、2024年には東南アジアへの輸出が20.8%増と好調だったが、2025年は関税やグローバルな需要変動の影響を受け、成長が鈍化している。一方、米国市場への依存度が高い家電品目(エアコン、冷蔵庫など)はとくに影響を受け、関税率が45~48%に達する品目もある。これに対し、中国企業は東南アジア、中東、ラテンアメリカ、アフリカといった新興市場へのシフトを加速させている。たとえば、2023年にはアフリカ向け家電輸出が23.6%増、ラテンアメリカ向けが22.4%増と、欧米市場を上回る成長を示した。
高関税によるコスト上昇を受け、中国家電企業は現地生産の強化と新市場開拓を進めている。美的(Midea)やハイアール(Haier)は、メキシコやタイに生産拠点を設置し、関税を回避しながら米国や周辺市場への供給を維持する。TCLはメキシコのティファナとフアレスにテレビ製造工場を設け、米国市場向けの生産を拡大している。また、美的はタイで7つの製造拠点を運営し、グローバルなサプライチェーンを強化している。さらに、企業は自社ブランド(OBM)の育成にも注力する。美的は2023年に「OBM優先戦略」を打ち出し、2025年末までに自社ブランドのグローバル展開をほぼ完成させる計画だ。東南アジアや中東では、ハイアールが日本ブランド「AQUA」や東芝を活用しつつ、自社ブランド「Haier」の浸透を図る。こうした戦略は、OEM依存からの脱却と高端市場での競争力強化を目指すものだ。
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