高市首相誕生の原動力となった維新の連立入りで、メディア露出度が急上昇した維新の藤田文武・共同代表は要注意人物だ。見た目はソフトでクリーンな印象を与えるが、一皮向くと、疑惑まみれで独裁体質の“素顔”が見えてくるためだ。
藤田氏について赤旗日曜版【11月2日号】は、「重大疑惑 公設秘書側に公金2,000万円 『身を切る』どころか 身内へ税金還流」と銘打ったスクープを出した。内容は、藤田氏側の公設第1秘書が代表の会社に約2,000万円の公金を支出、その会社が秘書に年720万円の報酬を支払っていたという公金還流疑惑。これを維新創業者の橋下徹・元大阪市長が「公金着服のビジネスモデルの疑いあり」などと批判、藤田氏は11月4日国会終了後の会見で釈明することになった。
もう一つの“素顔”である独裁体質は、維新が自民との連立政権合意書に盛り込んだ「議員定数1割削減」への対応で露呈した。10月24日の記者会見で、私の質問に対して「個人的には比例でバッサリというのが一番スピーディーだしシンプル」と断言。中小政党つぶし、少数意見切り捨ての姿勢を露わにしたのだ。
明らかな変節でもあった。総裁選中の9月24日の記者会見では、小選挙区制を中心とする現行選挙制度(小選挙区比例代表並立制)は二大政党制を前提にするもので限界にきている。多党制の時代にはそぐわないという現行選挙制度見直し論を藤田氏は訴えていたからだ。
この発言が飛び出した発端は、維新内に新設された選挙制度調査会についての質問を受けて「せっかくなので個人的な話を申し上げます」と切り出して、こう続けたのだ。
「小選挙区比例代表並立制というのは、小選挙区は二大政党制を目指すインセンティブが強く働くとともに、比例代表は多党化を産むという非常に難しい2つを組み合わせた制度。だから与党が安定しているときは非常に強い与党群と(弱い)野党群に分かれるが、与党が過半数を取れなくなった今、野党だけに進んでいた多党化が与党にも波及して全体で多党化が進む現象が起こっている。
もう1ついえるのは30年間、小選挙区比例代表並立制をやって二大政党制を目指したが、結局、それは成しえなかったという結論が出たのではないかと思っている。ですから、多様な民意を汲み取っていき、それに応えていく政治の意思決定の在り方自体を考え直さないといけないというのは、すべての政治家に突き付けられている現実だと思うので、そのあたりを含めていろいろ議論をしたいと思う」
そして、こう結論づけていた。
「二大政党制を機能させる主旨で始まった小選挙区比例代表並立制はもう限界を迎えているのではないかというのが個人的見解だ」
まさに正論だ。私はこのとき、小選挙区を中心とする現行選挙制度見直し論を主張した藤田氏は「合理的(論理的)思考ができる政治家だ」と評価していた。しかし、この評価は9月24日の会見発言で地に落ちた。藤田氏は小選挙区制を中心とする現行選挙制度は多党制の時代にそぐわないという問題意識をもちながら、「比例50バッサリ削減」という回答が返ってきたためだ。そんなことをすれば、さらに小選挙区の割合が増えてしまい、二大政党制前提の選挙制度の色合いが強くなり、多党制の時代に逆行するのは明らかであるためだ。
そこで私は「言行不一致」「論理矛盾」「二枚舌」と思いながら、「総裁選での藤田共同代表の会見発言と矛盾するのではないか。多党制の時代にそぐわないと(発言していた)」と再質問をすると、以下のように藤田氏は答えた。
「中選挙区を含めた議論をやっていこうというのが別立てであって、一割比例の数を削減することを確定させた後に、中選挙区の議論をやっても構わない。それは、まず(議員定数を)スピーディーに減らすべきだと思う」
これも暴論だ。議員定数と選挙制度問題は密接不可分で、別々に議論をすることは非常識かつ不適切だ。議員定数削減をするのなら選挙制度自体をどうするのかという議論を同時に進めることが不可欠なのだ。
大政党の独裁状態を招く恐れもある。比例をバッサリ削減した現行選挙制度について見直しの議論をしているときに、解散・総選挙となったら中小政党が大打撃を受け、少数意見切り捨てとなるためだ。
藤田氏にだまされてはいけない。見かけの印象はソフトでクリーンでも、中身はヒトラー並みの独裁体質を有しているのだ。吉村洋文代表(大阪府知事)とともに藤田氏は「青年将校」と呼ばれることもあるようだが、「多様な民意を汲み取る」という民主主義の破壊者であることを忘れてはいけないのだ。
【ジャーナリスト/横田一】








