(株)トクスイコーポレーション
徳島県の漁村から始まった(株)トクスイコーポレーションの歩みは、日本の近現代漁業の盛衰を反映している。時代の変化に即応して変革を続けてきた「100年ベンチャー」の軌跡でもある。同水産を原点に、食品、建材、不動産、さらに投資事業までを手がけるグループの各事業と国際社会との関わりついて見てみる。
水産・食品事業を軸に
徳島建征会長が述べるように、同社はかつて以西底引網業の代表的な事業者として、膨大な船団を擁する漁業会社であった。しかし、1970年代以降、200海里水域の設定や資源の枯渇といった環境変化に直面するとインドネシアで合弁事業を立ち上げ、90年代には創業事業である以西底引網漁業から撤退するという苦渋の決断を下した。この危機を乗り越えるカギとなったのが、グローバル化と多角化である。漁業で培った「目利き」の力を商社機能へと転換し、さらに製造加工、外食、投資へと川下・周辺領域へ拡大してきた。
祖業であり、現在も基幹事業としてグループのアイデンティティーを支えるのが水産事業。インドネシア現地で天然エビ漁獲の許可を受けており、ニューギニア島沿岸のアラフラ海を主要漁場に合弁会社「PT.Dwi Bina Utama」を通じて自社トロール船を操業している。ここで漁獲される天然エビは漁獲直後に船上で急速凍結されることで、圧倒的な鮮度と品質を維持しており、「Sea Angel」ブランドとして展開されている。ジャワ島の自社工場「PT.Toxindo Prima」では、養殖バナメイエビの加工を行い、「TOX」ブランドとして世界市場へ供給している。このように、商社としての事業が中心となったとはいえ、生産現場を保有し、管理することで、食の安全・安心と高い優位性を維持している。
食品事業では昭和30年代に魚肉ソーセージ製造参入し、大きく発展させた。宮城県塩釜市の(株)東北トクスイを製造拠点とし、切身や漬魚などの水産加工品を主力としている。国内初めて「チーズかまぼこ」を生産・販売したほか、冷凍みかんやパンの缶詰など、先駆者精神を発揮してヒット商品を次々と世に送り出してきた。全国の生活協同組合を主要な販路とし、厳しい品質基準の商品を提供している。
事業領域を拡げ多角化
漁業の周辺領域から派生し、収益の柱の1つにまで育てたのが建築資材販売事業だ。オリエント電機(株)、オリエント産業(株)を通じて、船舶用電機設備や建設資材の提供を行っている。不動産事業では、トクスイコーポレーションで本社ビルを含む資産の有効活用も行っている。IT事業では、(株)クローバーシステムズがシステム開発を手がけグループ内外にサービスを提供している。
近年力を入れている事業の1つが投資事業。米国の「Tokusui Corporation of America Inc.」とシンガポールの「Tokusui Investments Singapore Pte.Ltd.」が拠点となる。
また、この数年、インドネシアでのエビ合弁事業の売上高が急速に伸びており、2025年3月期は21億9,100万円とグループ連結売上高の10%以上を占めるようになり、建築資材販売貿易、食品、に次ぐ新たな柱となっている。
現在、グループで福岡の本社と東京・大阪の営業拠点、インドネシア、米国、シンガポールの海外拠点が連携するネットワークを構成している。
国際社会への貢献
海外事業では語学力だけでなく現地環境への適応力のある人材も必要となる。インドネシアの合弁会社は本社こそジャカルタに置くものの、生産拠点を置くのはニューギニア島のソロン。生活環境が厳しく、日本人駐在員がなかなか定着しないという悩みがあった。以前は漁師が現地生活を楽しみながら仕事をしていたが、時代も環境も変わった。
そこで国際協力機構(JICA)に相談し海外協力隊の経験者を募集したところ、現地の過酷な環境にも適応できるグローバル人材がきて、活躍しているという。海外にずっと駐在させるのではなく、数年ごとに日本と海外を経験する勤務形態をとるようにしており、当人にとっても自身が関わっていた商品が、実際に日本で流通している状況を見られることで大きな気づきが得られるなど、キャリア形成に寄与しているという。
人材採用を機にJICAとの連携を深めており、海外協力隊への支援を行うなど国際貢献にも積極的だ。開発途上国でのビジネスを通じて、その国の発展に寄与することを重視している。インドネシアでの長年にわたる事業展開は、単なる資源確保ではなく、現地の雇用創出や技術移転を含む共生のモデルとなっている。
次の100年へ
アジアのハブ拠点であるシンガポールなどでASEAN諸国など新興市場の情報収集を行い、徳島会長自身も直近ではインドとベトナムを視察するなど、同社は次の市場と新たな事業の構想を練っている。
同社は24年の100周年記念事業で、全従業員に対して「改めて創業の精神を振り返り、自らが主役となって次の100年をつくる」というメッセージを発信した。従業員1人ひとりが「ベンチャー精神」をもち、失敗を恐れずに挑戦できる環境づくりを推進し、今後も既存の事業のシナジー効果を高めつつ、内外で新たな挑戦を見せてくれるだろう。
【茅野雅弘】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:徳島洋武ほか2名
所在地:福岡市中央区港2-2-21
設 立:1947年8月
資本金:1億円
売上高:(25/3連結)188億7,000万円








