全国賃貸管理ビジネス協会(以下、全管協)名誉会長・高橋誠一氏が、自民党ちんたい支部連合会会長、全国賃貸住宅経営者政治連盟会長として、与党自民党と近い関係にあることを一連の記事で明らかにしてきた。
『全国組織・全管協を仕切る高橋誠一名誉会長とは(3)石破前首相との近さが示す影響力』では、全管協や職域支部である自民党ちんたい支部連合会のカウンターパートが「自民党賃貸住宅対策議員連盟(ちんたい議連)」であることや、自民党議員のなかでも高橋氏と懇意の関係にあるのは議連会長を務める石破茂前首相であることを紹介した。
『全管協名誉会長・高橋誠一氏と自民党政権幹部(当時)の深い関係(4)』では、石破氏が首相時代、高橋氏を厚遇した理由を2点挙げた。
1つ目は莫大な自民党員票だ。総裁選で多くの業界団体が別の候補者を推したが、約4万人の党員(職域支部の党員数)を有し高橋氏が会長を務める「自民党ちんたい支部連合会」が石破氏の支援にまわったことが、石破総裁実現に大きな役割をはたしたとされる。
2つ目は資金面での支援だ。石破氏の政治資金パーティーのパーティー券を全管協が大量に購入していたことが政治資金収支報告書で確認された。
首相在任中も議連会長を他の議員に譲らなかった石破氏
さらに取材を進めていくなかで、ちんたい議連に対する石破氏の強いこだわりを示す話を聞いた。
自民党議員277名が所属する自民党賃貸住宅対策議員連盟(ちんたい議連)は、2013年以来、石破氏が会長を務めており、会長在任中の24年10月に石破氏は内閣総理大臣に就任した。本来、総理大臣や監督官庁の大臣に就任した議員は、業界団体と連携する議連の会長などを務めることは立場上好ましくないとして、交代することが慣例になっているが、複数の全管協加盟企業の代表者らによると、「石破さんは総理に就任後もちんたい議連会長を空席として、他の議員に譲らなかった」という。
石破氏が首相在任中の25年6月3日に、ちんたい議連の25年度総会が開催された。総会には、全管協名誉会長や自民党ちんたい支部連合会会長などの立場で高橋誠一氏と、当時の全管協会長・三好修氏も出席した。しかし、議連会長は不在で、逢沢一郎氏が会長代行として出席した。議連会長が不在とされた背景には、石破氏のこだわりばかりでなく、業界側の高橋氏らにも、石破政権は自分たちが支持したからこそ実現したのであり、会長は実質的に現職総理の石破氏であるとの思いがあったのではないか。
阿部俊子事務所「コメントする立場にない」と回答
石破政権は、24年10月の衆議院選挙で少数与党となり、25年7月の参院選でも過半数割れして約1年で幕を閉じることとなった。石破氏は同年9月に首相辞任を表明し、10月4日に行われた臨時の自民党総裁選で高市早苗氏が新総裁に選出された。高市政権の発足は同月21日であるが、総裁選直後の10月14日、全管協本部の会議室で、石破首相の代理として現職の大臣が講演をおこなっていたことが分かった。
講演は代議員総会が行われることに合わせたものだが、講演したのはちんたい議連事務局長の阿部俊子文部科学大臣(当時)である。当社は阿部氏の講演内容を入手し、内容を確認した。阿部氏は講演のなかで、全管協と連携する自民党ちんたい支部連合会が有する4万人の自民党員数が総裁選に大きな影響力をもつことに言及し、政策実現のためにさらに党員数を増やすことを求めていると受け取れる発言をしていた。
約20分の講演のなかで、日韓交流の話や国政状況に関する話もあるが、自民党員拡大に関係する部分を抜粋して紹介したい。(赤字は自民党員拡大を求める部分)
今回厳しかった総裁選挙でございますが、何といっても皆さん方、賃貸住宅経営政治連盟の自民党員数が、何とこの自民党のなかで4万近くいらっしゃるということは大変大きな勢力でございまして、皆さん方がいわゆる政策提案をしていったものはかなり通って、高橋会長をはじめ皆さんが大きく動いているなかにございます。
皆さまの資料にもございますが、実現した政策、たとえば家賃の消費税の非課税のケース、これは大変大きいところでございまして、さらには2011年の賃貸のみなし課税、これも皆さんが住むところがない、仮設住宅をつくらなきゃいけないというなかにあって、東日本大震災では皆さん方の仮設住宅制度の災害救助法の運用を拡大させていただきながら、賃貸の空室を使って6.1万戸を皆さま方から協力をいただいたところでございます。新しいものをつくることではなく、きちっと今あるものを活用していくということを、連携させていただきながら進めさせていただきました。
また2011年には、家賃のいわゆる取り立ての法案がございましたが、これがやはり賃貸の方々のいわゆる賃借金と居住の安定確保を図るという意味で、実は家賃の取り立ての行為が非常に厳しくなるということがございまして、これは国土交通委員会において可決をされて、しかしながら、いわゆる督促をしていく行為そのものが違反となってしまうのではないかという懸念のところから、2011年12月に国土交通委員会の理事会で廃案とするということをさせていただきました。これも皆さん方が一体現場では何が起きてるのかということを声に上げていただいたということでございますが、声に上げていただいただけではなく、声だけなら誰でも上げられるわけですが、大きな声になっていく党員数をやはり援助をしてくださってるというのが一番大きなところでもございます。
石破会長は今、一時、総理ということで出ておりませんが、会長代行代理として皆が一丸となって皆さん方の意見を私は、しっかりと私どもは可決をさせていただくところでございまして、ぜひとも皆さま方にこれからもしっかりと政策を可決させていただくために、また、自民党員をぜひとも増やしていただきたいと思うところでございます。
どの政治家も支持してくれる各種団体の集まりで同様のリップサービスで団体側を持ち上げることは常だが、阿部氏は賃貸住宅経営政治連盟の自民党員4万人とその会長高橋誠一氏の存在感に言及したうえで、「声だけなら誰でも上げられるわけですが、大きな声になっていく党員数をやはり援助をしてくださってるというのが一番大きなところ」と述べ、当時まだ首相の座にあった石破氏について「石破会長」と明言した上で、「ぜひとも皆さま方にこれからもしっかりと政策を可決させていただくために、また、自民党員をぜひとも増やしていただきたいと思うところでございます」とさらなる自民党員の獲得を求める発言を行っている。
このことは出席していた全管協関係者たちに、強いプレッシャーになった。全管協加盟企業の代表者Aは「講演で阿部大臣ははっきりと自民党員を増やしていただきたいと仰っており、業界のためにやらざるを得ないと思った人は多いと思う」と語った。
あべ俊子事務所Facebookより
本件について当社は、阿部俊子事務所に事実関係の確認とコメントを求めたが、「講演したことは事実であるが事務所として内容は確認しておらず、コメントする立場にない」との回答であった。
阿部氏は当時、賃貸住宅業界とは直接関係しない省庁の大臣で、高市政権発足が予定された時期の講演とはいえ、このようにあからさまな「党員獲得要請」発言からは、高橋氏ら全管協本部が会員企業にノルマとして課してきた自民党員拡大が、自民党側からの要請でもあったということがうかがえる。
(了)
【近藤将勝】








