芸術基盤の強化進む福岡市 まちづくりにアートを組み込む

閉鎖された警固公園地下の福岡中央自動車駐車場
閉鎖された警固公園地下の福岡中央自動車駐車場

概算工事費は約140億円

 福岡市中央区に位置する警固公園の地下駐車場(福岡中央自動車駐車場)が、2026年3月31日をもって閉鎖された。跡地では、福岡市が運営する「福岡アジア美術館」の分館が計画されている。分館新設の背景には、既存施設における設備の老朽化や、展示・収蔵スペース不足などがある。たとえば作品点数は、1999年3月の開館当初は約1,000点だったが、25年には約5,700点と5倍以上に増加している。アジアにおける近現代の美術作品を系統的に収集して展示する、世界唯一の美術館として今後も活動していくために、福岡アジア美術館の機能分担は不可欠となっている。

福岡アジア美術館が入る博多リバレイン
福岡アジア美術館が入る博多リバレイン

    また、福岡アジア美術館は、福岡市地下鉄空港線・中洲川端駅直結の複合商業施設「博多リバレイン」の7・8階部分にあるが、動線の煩雑さもあり、市民や観光客がついで利用などで気軽に立ち寄れる場所かといえば、必ずしもそうではない。このことは、市公表の福岡アジア美術館【施設拡充等基本計画】(原案)でも言及されており、計画中の分館には施設拡充にとどまらず、周辺施設との回遊性も含めた、動線の明確化が求められる。

 こうした現状を踏まえ、分館には床面積規模約7,500m2~9,000m2、展示室の天井の高さ約4m~5m、都心部に位置する土地(公有地を優先)という条件付けがなされ、複数の候補地を比較検討した結果、警固公園の地下活用に決定した。地上との一体化や、象徴的なエントランス、都心部のアート・文化観光の核となるような施設の整備が実施される方針だ。分館にかかる概算工事費は約140億円(大雨発生時に懸念される浸水対策を含む)を見込むが、近年の建築資材価格高騰の影響や、周辺整備費を含めると費用は膨らむ可能性がある。

 竣工は32年度以降を予定しており、基本設計業務は公募型プロポーザルで今夏頃の公告を計画している。なお、基本設計者選定に係る発注者支援業務は三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が担当している。

博物館は入札目途立たず

 福岡市早良区に位置する福岡市博物館では、収蔵庫棟の増築工事や南側広場のリニューアル工事が進められている。これまでに発注された主な工事の概要は以下の通り。

表

 収蔵棟は工事が完了し、南側広場のリニューアル工事は今年10月頃の完了を見込む。一方で、本館および外構などのリニューアル工事については、25年4月に入札公告がなされたが、当初入札への参加を表明していた全企業が辞退したため、同年10月に入札の中止が発表された。以降、条件などの再検討が続けられているが、再公告のメドは立っていない(26年6月取材時点)。条件変更後には議会に諮る必要があるほか、先行き不透明な建築資材の不足や価格高騰の影響を鑑みると、再公告が27年以降になる可能性も十分考えられる。

 博物館(本館)の概要は、SRC造・地上3階建、延床面積1万6,920.62m2。リニューアルの方針として、1階の玄関ロビー東側および2階の吹抜け回りの回廊南側に、市民(とくに子ども)向けの体験学習室を設けるほか、2階の特別展示室・企画展示室・後継展示室をつなぐ動線の設置などが挙げられている。先行してリニューアルが進む収蔵棟や南側広場と比較して、本館および外構などの改修規模は大きく、当初の予定価格は188億9,501万3,000円(税別、PFI-RO方式)、施工期間は28年9月末、事業期間は44年3月末までで、入札参加者は法人で構成されたグループとし、落札者となった入札参加者は仮契約締結までに特別目的会社を設立しなければならないという条件になっていた。

 福岡市博物館は1988年に竣工し、90年10月に開館した。竣工後35年以上が経過しており、経年劣化への対応ならびに新たなニーズに応えていくことが求められている。

工事が進む福岡市博物館
工事が進む福岡市博物館

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 福岡市は、都市の魅力や観光・交流機能を高めるまちづくり施策として、芸術基盤の強化を着実に進めている。警固公園地下への福岡アジア美術館分館整備は、増大する収蔵需要や展示機能の拡充に対応すると同時に、都心部に新たな文化拠点を形成することで、日常のなかで市民や来福観光客がアートに触れやすい環境を生み出す取り組みといえる。福岡市博物館についても同様で、市全体で文化施設全体の再編・充実が図られていることがわかる。

 こうしたハード整備に加え、市では産学官が連携の下、Fukuoka Art Next(※)を展開し、市民が身近にアートを楽しめる機会の創出やアーティストの成長支援を推進している。アートを単なる鑑賞対象にとどめず、都市の価値と活力を高める資源として位置づける福岡市のまちづくりが、地域経済の活性化に寄与することを期待したい。

【代源太朗】

※Fukuoka Art Next:福岡市が主体となって推進するプロジェクト。市民が日常生活のなかで気軽にアートを楽しめる環境づくりと、福岡発のアーティストの育成・支援という2本柱で、都市の魅力を高める取り組みを行っている。

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