9・11テロ発生から25年目:いまだに解けないナゾ(前)

国際未来科学研究所
代表 浜田和幸

 2001年9月11日の米同時多発テロから25年。世界貿易センタービルの倒壊やハイジャック機の飛行経路、物的証拠となる鋼材の早期処分、旅客機が突入していないWTC7号ビルの崩壊など、事件には今なお多くの疑問が残る。トランプ政権は関連機密の全面公開を掲げ、グアンタナモ基地では主犯格とされる被告らの軍事裁判も続く。未公開資料は、サウジアラビア関係者による支援の有無や米情報機関の失態、公式調査の限界をどこまで明らかにするのか。25年目を迎える今、改めて事件の未解明部分を検証する。

機密解除と終わらない軍事裁判

WTC イメージ    01年9月11日、世界を震撼させる事件が起きた。ニューヨークの世界貿易センタービル(WTC)にハイジャックされた旅客機が相次いで激突。世界有数の高層ビル2棟が跡形もなく倒壊した。あれから25年が経とうとしているが、事件の真相はいまだに闇の中だ。

 トランプ大統領による「関連機密ファイルの全面公開」への明言と、グアンタナモ米軍基地における首謀者たちの「死刑を前提とした軍事裁判の再開」が、最大の最新情報として世界的な注目を集めている。

 トランプ大統領は、26年現在の第2期政権において「政府機関への信頼回復」を大義名分に掲げ、過去の歴史的事件の機密解除を次々と実行し、すでにJFK暗殺事件やUFO・未確認異常現象に関する国防総省の機密ファイルを徐々に公開している。

 トランプ氏は米メディアのインタビューに対し、「大統領に返り咲いたならば、9・11テロに関する未公開ファイルを即座に機密解除し、国民に真実を明かす」と明言した。これに対し、1万人以上の遺族や生存者で構成される団体「9・11 Families United」は、隠蔽されてきた真実が暴かれるとして、大統領の決断を強力に歓迎・支持する声明を発表。

 過去のバイデン政権下でも一部のFBI捜査資料が公開されたが、依然として重要部分は黒塗りのままである。トランプ氏による全面公開が実現すれば、「テロ実行犯(ハイジャック犯19人中15人がサウジ国籍)に対する、サウジアラビア政府高官や外交官による兵站・資金面での直接的な関与・支援の度合い」について、これまで伏せられてきた決定的な新事実が明るみに出る可能性が極めて高いと思われる。

 テロから25年が経過しようとしているにもかかわらず、事件の裁判はいまだに決着していない。キューバのグアンタナモ米軍基地に拘留されているテロの主犯格ハリド・シェイク・モハメドら被告4人の処遇をめぐり、司法の場では激しい攻防が続いている。

 バイデン政権下の24年、検察側は被告側と「有罪を認める代わりに死刑を回避し、終身刑とする」という司法取引を一度は結んだ。しかし、「正義が行われない」と遺族や米世論から猛烈な反発が起き、当時のロイド・オースティン国防長官がこれを撤回。その後、連邦控訴裁判所もこの司法取引を正式に無効とする判決を下した。

 司法取引が破棄されたため、26年現在、再び「死刑を求刑する軍事裁判」の公判前手続きが再開されている。CIAによる過去の過酷な尋問で得られた自白の証拠能力をめぐり、弁護側と検察側の泥沼の法廷闘争が続いており、トランプ政権はテロリストへの一切の妥協を排し、死刑判決に向けた手続きを加速させる方針である。

 トランプ大統領が約束通り機密ファイルを完全に開示すれば、これまでの「実行犯=アルカイダ」という構図を超えて、中東の同盟国であるサウジアラビアとの当時の複雑な外交上の闇ルートや、米情報機関であるCIAやFBIの当時の大失態が白日の下に晒される可能性が高い。

処分された鋼材と4機の飛行をめぐる疑問

 実は、世界貿易センタービルに使われていた日本製のH形鋼は、たとえジェット機が突入、爆発したとしても簡単には崩壊しないほど耐熱性の高い鋼材だった。ハイジャック犯による激突によって、あれほど簡単に崩壊することはあり得ない。

 現場で発生した大量の鋼材の瓦礫は、スクラップ材としてタダ同然で中国に売却され、08年に開催が予定されていた北京オリンピックの関連施設や各地のインフラ整備に役立てられた。

 本年、5月2日から9月11日まで、全米各地で「Steel Across America」と題し、世界貿易センタービルの鋼材を巡回展示するイベントが進行中である。当時を知らない若い世代にも悲劇を伝えるということのようだが、主眼は「テロに負けないアメリカの強さ」をPRすることに置かれている。

 しかも、9・11テロ以降、「テロ」というレッテルを貼れば、米国民はほぼ何でも許してくれるという心理が定着したようだ。直後のアフガニスタンやイラクはもちろんのこと、キューバやベネズエラ、そしてイランに対しても攻撃の正当化に使われてきた。

 日本人24人を含む3,000人もの命が失われたにもかかわらず、これまでFBI、FEMA、警察、米軍による専門的な原因究明がほとんど行われてこなかったことも理解できない。犯人の特定やビル群の倒壊の原因を究明するうえで欠かせないはずの物的証拠を残さず、中国に払い下げたことは隠蔽工作ではなかったのか。

 ハイジャックされた1機目と2機目はWTCビルの南北のタワーに激突し、3機目は首都ワシントンのペンタゴンに激突。地球上で最も厳重に警備されていたペンタゴンの1階に困難な軌道をたどって突入したとされているが、経験豊富な航空会社のパイロットでも困難過ぎる飛行であり、アメリカ国内で短期間の訓練を受けたアラブのテロリストが本当に操縦したのか、いまだに不明な点が多く残されている。

 そして、4機目はペンシルベニア州の草原に墜落したとされるが、確たる証拠はないままである。ペンシルベニア州シャンクスヴィル近郊の住民も市長も、特定された墜落現場に旅客機は見当たらず、エンジン部品を含む機体の一部が1.6km以上離れた場所で発見されたと不信感を募らせており、納得が得られていない。

 さらに驚くべきは、09年に科学専門誌で報告されたことだが、WTCの粉塵から大量のナノサーマイト残留物が発見されたとのこと。これは高性能爆弾にほかならない。この点についても、政府の調査委員会からは何ら追加の説明がなされないままである。

WTC7号ビルの倒壊と不完全な公式調査

 不思議なことに、ハイジャックされた旅客機が突入していないWTC7号ビルも同じ日の夕刻には倒壊。同ビルの鉄柱は82本あったが、すべてが同時に折れてしまった。あり得ない現象だが、理由は不明のまま。ここにはアメリカ証券取引委員会(SEC)の事務所が入居していたが、当時のアメリカの経済界を震撼させていたエンロンやワールドコムの不正問題の調査拠点となっており、これら金融スキャンダルに関する捜査資料がことごとく灰になってしまった。

 また、この7号ビルにはシークレットサービスが管理するアメリカ最大のフィールドオフィスも入っていたが、最高の機密情報がすべて消滅したにもかかわらず、その詳細や影響についての説明がないままだ。

 16年にそれまで黒塗りだった公式報告書の一部が開示されたところ、サウジアラビア政府の高官や王室関係者がテロリストに資金を提供していた可能性を示す具体的な捜査記録が含まれていた。また、23年4月、米議会軍事委員会事務局が裁判資料として提出した文書には、ハイジャック犯のうち少なくとも2人はCIAの工作員で、サウジアラビアの情報機関との連絡員を通じて採用されていたと結論。

 政府の「9・11調査委員会」のキーン委員長(元ニュージャージー州知事)とハミルトン副委員長(下院外交委員会委員長)は、調査委員会が資金不足に陥り、調査権限が不当に制限された上、ペンタゴンや連邦航空局によって妨害を受けたと述べ、公式報告書は不完全で欠陥だらけと指摘しているほどだ。

 キーン委員長曰く「自分が目を通した調査報告書の3分の2は黒塗りのままだった」と隠蔽体質を批判してきた。言外に、「9・11テロ以降のアメリカの軍事行動にも不可解な部分が隠されている」ということである。

(つづく)


浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。著作に『イーロン・マスク 次の標的』(祥伝社)、『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)など。

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