師岡が2戦連発も、終盤に被弾。アビスパ、勝ち点3こぼれ落ちドローに沈む

この日のスターティングメンバーボード
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泥沼3連敗、背水のホーム戦

 茜色に染まる博多の空の下、ベスト電器スタジアムのスタンドには、祈りにも似た熱気が満ちていた。キックオフを前に、ゴール裏を埋め尽くしたネイビーブルーのサポーターから地鳴りのようなチャントが響き渡る。

 前節の逆転負けを含め、チームはまさかの泥沼3連敗。3試合で8失点と誇りにしてきた堅守が崩壊し、降格圏の18位へと沈む苦境にあっても、スタジアムに集ったサポーターの誰1人として下を向く者はいなかった。

 「今日こそ悪夢の流れを断ち切り、強いアビスパを取り戻す」。サポーターが抱く切実な勝利への渇望と熱い期待感が、選手たちをピッチへと力強く押し出していた。

 2026/27明治安田J1リーグ第6節、アビスパ福岡がホームに迎えたのは水戸ホーリーホック。前節、宿敵・鹿島アントラーズを相手に4得点を奪って歴史的勝利を飾り、勢いに乗る難敵である。

 背水の陣で臨む塚原真也監督は3-4-2-1の布陣を採用。GK藤田和輝の前に、辻岡佑真、田代雅也、岡哲平を3バックに並べた。ボランチには前田快と見木友哉、右ウイングバックに橋本悠、左には新加入の深澤大輝を抜擢。前線はシャドーに重見柾斗、前節1ゴール1アシストと気を吐く師岡柊生、そして最前線には2試合ぶりにウェリック・ポポが復帰をはたした。

 序盤から両者の激しい攻防が続く。福岡は集中を切らさず「リスク管理」を徹底した。前がかりになった際のバランスを崩さず、コンパクトな陣形で中盤のセカンドボールを回収。前線からのハイプレスが水戸を苦しめ、ゲームの主導権は福岡が握る。守備陣も岡の体を張ったシュートブロックなどで相手に決定機を許さず、何より直近3試合すべてで前半に失点を喫していたチームが、無失点で試合を折り返したことにスタジアムは大きな手応えを感じていた。

 そして後半8分、福岡に待望の瞬間が訪れる。

師岡が2戦連発、終盤に痛恨の同点弾

 連動した鮮烈な崩しから試合が動いた。見木からパスを受けた岡が絶妙なタメをつくって左サイドへ展開。深い位置へと進入した深澤が冷静にグラウンダーのクロスを折り返すと、そこへ猛然と飛び込んできたのは師岡だった。右足ダイレクトで完璧に捉えたシュートがゴールネットを激しく揺らす。

 スタジアムは歓喜の声に包まれ、値千金の2戦連発・今季3ゴール目を決めた師岡はサポーターの元へと一直線に駆け抜けた。新加入コンビがもたらした完璧な先制点に、スタンドのボルテージは最高潮に達した。

 しかし、歓喜の直後、残酷なアクシデントが福岡を襲う。前線で圧倒的なキープ力を誇り、攻撃の絶対的な起点となっていたポポが負傷交代を余儀なくされたのだ。前線の基準点を失った福岡に対し、同点を目指す水戸は長身FW根本凌を投入して露骨に高さを強調するパワープレーへとシフトしていく。

 嫌な予感は、試合終了間際の後半41分に現実となって突き刺さる。自陣左サイド深くで痛恨のファウルを与えると、水戸の大森渚生が左足で放り込んだ鋭いボールに対し、ファーサイドへ走り込んだ木本恭生に頭で叩きつけられた。一瞬の隙を突かれた同点被弾。ベススタのスタンドは、まるで時が止まったかのような深い静寂に包まれた。

 追いつかれた福岡は、アディショナルタイム8分に攻撃的な藤本一輝を投入し、GK藤田までもが前線へ駆け上がる執念のパワープレーを敢行した。しかし、5バックで固める水戸の分厚い壁を最後までこじ開けることはできず、1-1のまま無情のタイムアップの笛が鳴り響いた。

勝ち点「2」を失った重みと反撃の光

 勝利の手応えが掌から滑り落ちた結末に、ピッチ上の選手たちの表情は険しく、笑顔は一切なかった。試合後、塚原監督は「見方を変えれば連敗が止まったという捉え方もありますが、我々はそこではない。ホームで勝ち切る姿を見せなければいけないし、勝たないとダメなんです。最後の際の部分ができなかった」と唇を噛みしめた。

 その一方で、指揮官は価値ある先制弾を奪った背番号13を高く評価した。2戦連発の師岡については「点を取りたいという気持ちが表情や立ち振る舞いから出ている。技術も高く、攻守において今のアビスパのキーパーソンだ」と絶賛した。

 だが、称賛を受けた師岡自身に笑みはなかった。自身のゴールについて「自分の特徴である感覚が発揮できた、自分のかたちのゴールだった」と手応えを口にしつつも、チームを勝たせられなかった悔しさをその全身から滲ませていた。鹿島アントラーズという常勝軍団でトップレベルの選手とともにプレーしてきた経験から、「試合に出ている以上、出ていない人の分も背負い、最低限戦わなければいけない。もっと決めないとチームを勝たせられない」と高い基準を自らに課している。そして、「改善しなきゃいけないところがたくさんあるので、このチームには伸びしろがあるのかなと思っている。最後の質をしっかりしないといけない」と前を向いた。

 連敗こそ「3」で止まり、4試合ぶりの勝ち点「1」を手にした。だが、勝てたはずの試合で手放した「2」の重みはあまりに大きい。リードした終盤の試合の締め方、セットプレーにおける高さへの対応など、乗り越えなければならない壁の高さは明白だ。

 それでも、光は確実に見えた。崩壊していた守備陣は90分を通して粘り強さを取り戻し、新戦力の深澤と師岡が描いた鮮烈なゴールへの航路は、今後の反撃のたしかな狼煙となったはずだ。

 試合終了後、ピッチを一周する選手たちに向け、サポーターからは決して罵声ではなく、胸を打つような拍手と叱咤激励の声が降り注いだ。サポーターの願いは、ただ1つ。「次こそ、泥臭くても最後まで守り抜き、全員で歓喜の歌を歌いたい」。その祈りと魂は、確実に選手たちの背中へと託された。

 次節のアウェー清水エスパルス戦。指揮官と師岡の言葉通り、再び一からすべてを研ぎ澄まし、真の堅守復活と歓喜の勝ち点3を博多の地へ持ち帰ることを、すべてのサポーターが信じて待っている。

【森田みき】

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