腕だけで勝負できる世界もある
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(株)崎田工務店 代表取締役社長 小林 好盛
教育の本質とは何か
国の成長、安定には子どもたちへの教育が最も重要です。歴史の時間には過去を学びますが、将来を学ぶ機会は非常に少ない。将来の予測を知らないままでは、5年後、10年後の自分たちがどうなるか、わからないまま大人になってしまいます。現代の若者にはもっと危機感を持ってほしい。
また学校教育にも、教育の本質を見つめ直してほしい部分があります。中学や高校の先生たちは、進学率ばかり気にしているように思えてなりません。「高校ぐらいは卒業しておかないと」とよく耳にしますが、大学を出ても就職ができない現状があります。高校を卒業しても仕事に就けるかわからない。それでも、ほとんどの中学生が高校へ進学します。学生本人が希望して進学するなら、問題はありません。しかし、学ぶ意志がないのに、嫌々高校へ引っ張り、その後通う目的が見出せず中退、非行に走る子どもたちもたくさんいます。
それなら、中卒でも技術を身につけて、特定の道に進ませるのも教育ではないでしょうか。高い進学率を打ち出す中学校もありますが、ではその先、高校入学後に、どれぐらいの学生が退学してしまったのか、把握しているのでしょうか。
技術と熱意がモノを言う世界
ものづくりの世界では、学歴よりもその腕、そして熱意が試されます。中卒でも、企業の役員など中枢を担う人材がたくさんいます。10代半ばから、その世界でひたむきに生きてきたから、認められているのです。ですから、進学ばかりが教育の本質ではありません。中学を卒業して、仕事を始めることを教えても、何ら問題はないはずです。
建設業界は空前の人材不足です。外国人研修生の活用が打開策として、挙げられていますが、やはり本質は日本人が建設業の未来を背負っていくべきです。このまま外国人頼りになってしまうと、建設業―とくに専門工事業では、外国人が主導権を握る日が来ると感じています。
ハングリー精神が成長を促す
弊社では最近、保護観察中の若者を1人、採用しました。保護司の方と相談しながら、丁重に受け入れ、対応したつもりでしたが、わずか2カ月で採用を打ち切りました。何とかして、若くして挫折を味わった若者を一人前に育てたいと思っていたのですが、非常に残念でした。
我が家は兄弟も多く、かつては経済的に進学ができる状況にありませんでしたから、早く仕事で一人前になろうとがんばってきたのです。私は高校へは行きませんでしたが、胸を張って、自分のこれまでを話すことができます。高校へ行かなくても、誰にも迷惑をかけていません。国が安心して存続していくには、良き納税者を育てることにあります。進学だけが教育ではないことを強く訴えたいのです。当然、この道を選んだときは、がむしゃらに働き、苦労はしました。それでもそのときの苦労が人生を豊かにし、努力の大切さを知りました。
若者を一人前に育て上げるのは、年々難しくなっているように思います。かつては3年から5年で一人前だと言っていましたが、今はもっと時間がかかります。7、8年前のことです。高校を中退し、弱々しかった少年が弊社に入ってきました。ひたむきに仕事に打ち込み、仕事の合間に通信制の高校を卒業しました。今では職長教育を受講し、作業主任者等の資格を目指すまでに成長してきました。彼の姿を見て、可能性のある人材はまだまだいると感じています。現実と理想の間で、悪戦苦闘は続きますが、「ものづくり」を通じて、今後も人材育成に力を注いでいきたいと思います。(談)
※記事内容は2015年8月31日時点のもの
<COMPANY INFORMATION>
(株)崎田工務店
代 表:小林 好盛
所在地:福岡市西区今宿青木372
設 立:1979年7月
資本金:9,000万円
TEL:092-807-6336
URL:http://www.rc-sakita.com/<プロフィール>
小林 好盛(こばやし よしもり)
1955年、宮崎県生まれ。中学卒業後、10代で建設業に従事し、型枠職人として腕を磨く。80年10月に同社入社。82年9月に同社取締役に就任。95年6月に代表取締役に就任し現在に至る。趣味はゴルフ。関連キーワード
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