中国経済失速、韓国経済に忍び寄る危機(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
経済成長を牽引する要因は大きく3つある。1つは対外的な要因に影響を受けやすい輸出で、後の2つは国内で行われる消費と投資である。しかし、今は輸出も消費も投資も伸びておらず、韓国経済は深刻な状況になりつつある。韓国の産業通商資源部は、毎月の1日に輸出の統計を発表している。しかし、この統計は、あくまでも暫定的な数値で、約2週間後の15日に関税庁が発表する数値が輸出の確定値になる。
産業通商資源部の発表によると、2016年2月の輸出は、前年同期比で12.2%も減少している。輸出の減少が一時的な現象であれば、それほど懸念することもないが、韓国の輸出は、14カ月連続して減少しており、これは間違いなく構造的な問題で、構造を変えない限り、輸出は回復しないだろうと指摘する向きもある。
2月の輸出額は、364億ドルを記録しているが、前月比で3カ月連続二桁の減少を示している点は、問題の深刻性を物語っている。それでは、なぜ韓国の輸出は減少が止まらないのか。韓国の輸出の25%を占めている中国経済の減速が、まず原因としてあげられている。実は、世界金融危機が発生したときに、そのショックから早期に立ち直ったのは、意外なことに韓国経済であった。
世界的な経済ショックにも早く立ち直った韓国経済だが、なぜ今回はそのような底力を見せていないのか。今の韓国経済を語る上で、中国はとても大事な要因である。中国はリーマンショックの際に危機を脱するため、政府主導で大々的な投資を断行した。1990年の固定投資の比率は、GDPの35%であったのに、2007年には、その比率は41%に、それから2013年にはその比率は47%を占めるほどになった。すなわち、中国政府はGDPの半分くらいを投資に回したのである。その結果、隣国である韓国は、その恩恵にあずかり、比較的に早く経済回復をとげたわけである。しかし、今回は中国経済が失速することによって、その反対の状況が発生し、韓国経済に悪影響をおよぼしている。
中国の投資拡大によって、韓国は中間財を中国に輸出する絶好のチャンスを持つことになった。たとえば、道路工事などに必要な建機などをものすごく中国に売ることができた。その当時、中国に建機を売っていた斗山インフラコアという会社は、今は業績悪化し、リストラ中である。それに、その当時と比べれば、中国企業もかなり力をつけてきて、韓国製品と競合する中国製品も多くなっている。
韓国の輸出減少のもう1つの要因は、世界経済の低迷による新興国の不況である。原油安で資源国の経済はガタガタで、韓国輸出の主な市場に混乱が起きている。このような外部要因にもろに影響を受けて、韓国輸出は減少を続けている。これを解決するためには、中国経済の回復などを待たないといけないが、中国は投資の付けが回ってきて、過剰投資と過剰在庫が問題になっており、短期で在庫調整ができる状況ではない。
それから中国経済のもう1つの時限爆弾として懸念されているのは、不良債権問題である。中国の銀行は、政府の指示で、地方政府と不動産開発会社に、多額の融資を実施した。銀行は、危ういところに融資を直接やると、帳簿に痕跡が残るため、これを回避するため、信用会社を作り、資産管理商品というのを作って、一般投資家に販売していた。これがいわゆるシャドーバンキングである。銀行の不良債権もさることながら、シャドーバンキングの金額は膨大で、信用取引の残高は8兆元とも言われている。
(つづく)
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