2024年11月28日( 木 )

「TPP離脱は保護主義」は安倍首相のレッテル貼り

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、英国のEU離脱や米国のトランプ氏当選などの経済への影響を例に出し、「TPP離脱は保護主義」とするのはレッテル貼りだとする、11月19日付の記事を紹介する。


6月23日の英国国民投票で英国の主権者はEU離脱の意思を表示した。
メディアはEU残留を予言し、英国民がEU離脱の意思を表示すると、「世紀の誤判断」であると糾弾した。そして世界金融危機が発生すると吹聴した。

しかし、英国は本当に金融危機に突入したのだろうか。たしかに英ポンドは下落傾向を続けた。ポンド円レートは2015年6月に1ポンド=196円の高値をつけた。本年6月の国民投票前には1ポンド=160円の水準だった。これが、本年10月には1ポンド=122円にまで下落した。EU離脱でポンド下落が進行したことは間違いない。

しかし、株価をFTSETM100で見ると、本年2月に5,499ポイントまで下落した指数が6月の国民投票直前には6,300ポイントの水準にあり、国民投票の結果を受けて、一瞬5,178ポイントまで下落したが、3営業日後には6,300ポイントを回復。10月には7,129ポイントの史上最高値を記録した。

英ポンド下落で、英国は外国人旅行者で溢れている。日本人が訪英するとき、1ポンド=196円だったのが1ポンド=122円になれば、圧倒的な割安感が生じる。1泊200ポンドのホテルの宿泊代金は3万9,200円から2万4,400円になる。外国人観光客が押し寄せるのは当然だ。200ポンドの輸出製品を日本人が購入するとき、やはり3万9,200円が2万4,400円になる。英国の輸出が好調になるのは当然なのだ。

その結果、英国株価が史上最高値を更新した。経済成長率も欧州で最高水準を記録している。EU離脱で世界金融危機が来ると予測した人は、この現実をどのように説明するのだろうか。

米国でトランプ氏が大統領に選出されたら金融危機が来ると言われていた。たしかに、東京市場では11月9日に、日経平均株価が一時1,000円以上値下がりした。ドル円レートは1ドル=101円15銭まで下落した。「トランプショック」で、世界経済の混乱は確実だとされた。しかし、その日のニューヨーク市場では株価が上昇し、ドルも急反発した。そして、ニューヨークダウは史上最高値を更新。ドル円レートは1ドル=110円を突破した。
メディアや識者と呼ばれる人々が公言していた状況とは正反対の現実が現れている。

トランプ氏がこれから提示する経済政策には賛否両論があるだろう。それはいつでも変わらない。しかし、トランプ氏が提示している経済政策は、米国経済の成長を促すものであり、金融市場は、この政策内容に沿った反応を示しているだけなのである。TPP離脱を表明しているが、TPP離脱=保護主義などという論評は、お門違いの「レッテル貼り」である。

安倍政権に対する正鵠を射た批判を、いつも「レッテル貼りだ」と批判する安倍首相が、「TPP離脱は保護主義」と断定するのは、笑止千万と言うほかない。TPPにはさまざまな重大問題がある。だから、TPPは廃止するべきなのだ。しかし、TPP否定=自由貿易否定ではない。こんな基礎的なことを理解できずに経済政策など運営できるわけがない。

感情的に、情緒的にトランプ批判するのではなく、トランプ氏の政策運営の方向を冷静に分析することが求められている。

※続きは11月19日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1595号「反グローバリズム新時代の幕開け」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

 

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