豊洲市場における設計偽装 政商・日建設計(4)
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豊洲市場の設計の違法性
豊洲市場水産仲卸売場棟における違法設計は、設計者である「日建設計」が作成した設計図書の構造計算書に重大な偽装があるということである。
○豊洲市場における設計の偽装
(1)層間変形角が建築基準法を満たしていない(建築基準法施行令第82条の2違反)。
豊洲市場水産仲卸売場棟の構造設計では、最も重要な基準項目の1つである「層間変形角」が建築基準法施行令に定められている「200分の1以内」の規定に反していることを日建設計は認めていて、構造計算書に手書きで言い訳めいた苦しいコメントを追記している。
(2)保有水平耐力計算における係数を不正に低減しているので安全が確認できない。
東京都の市場問題プロジェクトチーム(PT)における日建設計の説明では、既製品柱脚を採用した場合の、保有水平耐力計算における構造特性係数「Ds値」について、「割増しは不要」と説明しており、東京都も、日建設計の見解を容認している。
問題として取り上げられているのは、「Ds値の割増し」ではなく「Ds値が不正に低減された設計が行われていること」である。これは、国交省監修の「建築物の構造関係技術基準解説書」(2007年版:豊洲市場の設計当時は2007年版)に規定されており、保有水平耐力計算が必要なことは建築基準法施行令に定められている。
仲盛氏によれば、保有水平耐力計算とは、簡単にいえば 大規模な地震の際に内部の人間が安全に避難できる時間を稼げる壊れ方を設計することであり、梁よりも柱が先に壊れ、床が落ちて(落階)中にいる人間が下敷きになるような壊れ方を避けることを目指す計算方法である。建物がもっている力「保有水平耐力」が 地震に耐えるために必要な力「必要保有水平耐力」を上回っていれば、避難に必要な時間を稼ぐことができると判断される。
この保有水平耐力と必要保有水平耐力の割合を「保有水平耐力比」といい、一般的に「耐震強度」と理解されているということである。
豊洲市場など 用途が公設市場の場合には用途係数が1.25と条例で定められており、保有水平耐力比が1.25以上であれば最低限の強度が確保されているといえる。しかし、仲盛氏が確認した水産仲卸売場棟の構造計算書では保有水平耐力比は1.25ギリギリ(その後、日建設計は1.34と訂正)となっている。
仲盛氏によれば、水産仲卸売場棟の構造計算においては Dsという係数が違法に低減され、保有水平耐力比が偽装されている。この建物は鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)であるが、1階柱脚(柱の根元)が埋め込まれていない形式なので、1階のDsは鉄筋コンクリート造(RC造)のDsを採用しなければならない。SRC造の場合 鉄骨のしなやかさを考慮してRC造に比べてDsを0.05低減してもよいとされているが、柱脚が非埋め込み形式の場合にはSRC造の低減を適用することができない。
水産仲卸売場棟の構造計算では 各階ともDsは0.3となっており、これはSRC造として低減されたDsである。1階については低減してはいけないので、0.05の低減を適用せずDsは0.35となる。日建設計が説明している保有水平耐力比1.34はDsをSRC造として低減しているので「0.3/0.35」の比率で計算をすると
1.34×(0.3/0.35)= 1.14となり、条例で定められた公設市場の用途係数1.25を下回るので、現状のままでは 豊洲市場水産仲卸売場棟は公設市場として使用できないということになる。
(3)鉄骨鉄筋コンクリート造である建物の1階の柱脚の鉄量が規定の半分程度しか存在しない。
建設省(当時。現・国交省)も含め、監修の建築物の構造規定や技術基準解説書など建築確認審査の際の判断規準において、「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の1階鉄骨柱の柱脚がピン柱脚である場合、柱脚の鉄量(鉄筋(主筋)とアンカーボルトの断面積の合計)が、柱頭の鉄量(鉄骨と鉄筋(主筋)の断面積の合計)と同等以上でなければならない」と規定しているが、豊洲市場の柱脚の鉄量は規定の半分程度しか存在していない。
構造計算偽装の1つ「保有水平耐力計算における係数の偽装」に関して、構造形式による係数の違いを下図にて説明する。本件建築物は内部の鉄骨が基礎・地中梁部分に埋め込まれていない形式にもかかわらず、不正に係数が低減され実際よりも構造耐力が高いように偽装された構造計算が行われていた。
建築物の構造関係技術基準解説書(国土交通省監修)には「柱を支える柱脚の鉄量が柱頭の鉄量と同等以上でなければならない」と規定されているが、水産仲卸売場棟では、規定の56%の鉄量となっていることが判明している。
東京都は裁判において、「建築基準法には鉄量の規定がないので、日建設計が設計した本件建築物の鉄量が56%しかなくても問題ない」という旨の主張をしている。さらに東京都は「56%でなく59%である」と主張しているが、これは「41%不足していること」を東京都が法廷で認めていることになる。
(つづく)
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