2次電池市場の急成長と次世代電池の開発(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
日中韓のメーカーは電池の形状にもそれぞれ特色がある。日本のパナソニックは円筒形を、中国のCATLは角形を、韓国のLG化学はパウチ形の電池生産している。ところが、ヨーロッパ、米国の企業でパウチ形に対する関心が高まり、韓国企業のシェアが伸びることにつながった。
韓国の電池メーカーはこれ以外にも、電池の設計および製造に強みがあるようだ。それに、中国、ヨーロッパ、米国などにも製造拠点を構え、グローバル完成車メーカーと良い協力関係が築かれていることも、大きな強みのようだ。
しかし、電池のコア素材に対する技術力では、日本に遅れていることが課題であるようだ。正極材、陰極材、電解質、パウチなどの技術において、韓国は日本に比べ、1年くらいの技術格差があるという。
最後に、次世代の電池である全固体電池の開発動向をみてみよう。現在のリチウムイオン電池の場合、電解質は液体である。当初、水が電解質として使われていたが、水は電気的に不安定で、電圧を上げることが難しかった。それで、水の代わりに別の液体を使っているのが現在のリチウムイオン電池だ。別の液体を使うことによって、電圧を4Vまで上げることにも成功した。電池の電圧を上げることに貢献した米国のグットイナフ・テキサス大学教授はノーベル化学賞(19年、吉野彰氏らと受賞)を受賞している。
以降、ほとんどのリチウムイオン電池は正極材としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)を使っている。 わかりやすくいうと、正極材のリチウムが電解質を通って陰極に移動することによって充電されるのが、リチウムイオン電池の原理だ。このように正極と陰極の間の電解質を液体から固体に変えたのが全固体電池で、次世代電池の本命とされている。
既存のリチウムイオン電池は、携帯電話などでも、発熱による爆発などの事故が発生していた。ところが、自動車は携帯電話より電池のサイズが大きいため、爆発すると、大きな事故につながる危険性がある。ところが、電解質を液体から固体に変えることで、安全性が高まるようになる。それに体積も小さくなるようだ。
さらに、全固体電池は電解質を液体から固体に変えることによって、エネルギー密度を高めることにも成功した。エネルギー密度とは、同じ重量の電池に、もっと多くのエネルギーを入れられるかどうかのことだ。エネルギー密度を高めたことによって、一度の充電で航速距離を800kmにできるという。
しかし、夢のような全固体電池であるが、商用化までには課題も多いようだ。固体の電解質は液体よりリチウムイオンの移動速度が遅くなり、電池の出力が弱く、寿命も短くなるという課題がある。近日、サムスン総合技術院が全固体電池に関する技術を発表し、業界の注目を集めている。しかし、リチウムイオン電池のような価格競争力を確保できるかどうかも大きなハードルのようだ。
日本は全固体電池の開発において、韓国などほかの国に比べて5年から10年先に取り組んでいる。とくに、トヨタ自動車は全固体電池の開発で世界をリードしているという評価を受けている。全固体電池が市場に登場すると、今までの市場は一変される可能性がある。まさにゲームチェンジャーの技術である。世界各国が次世代の電池技術である全固体電池の開発に命運をかけているのはいうまでもない。
(了)
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