外国人から見る日本のコロナ状況~イタリアのコロナ対策と比べると?
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日伊経済連合会会長 ディサント・ダニエレ 氏
昨年から欧州に在住している知人から「日本は東京オリンピックのために、PCR検査数をわざと低く抑えているのではないか」とよく聞かれるようになった。欧州の現地人は、「PCR検査数を増やしたら、日本もヨーロッパと同じ数の陽性者がいるのではないか」「PCR検査をしたくても、させてもらえないのではないか」と、疑問に感じているようだ。
たとえばイタリアでは、新型コロナウイルス感染拡大の初期のロックダウン時から、風邪の症状などがありPCR検査をしたい場合は、専用の電話番号に連絡をすると、自宅まで検査にきてもらうことができた。ロックダウン中は個人の判断で出歩くことができないため、自己判断で病院に行くのは控えようという方針だった。
ロックダウンの解除後は、大きな病院や保健所以外にも、小さなクリニックなど地域の各所でPCR検査ができるようになった。そのため、身近な人が新型コロナウイルスに感染したなど、「もしかしたら感染しているのではないか」という懸念があればいつでも最寄りの場所からPCR検査ができるようになり、知人から「検査を受けたよ」という報告も聞くようになった。
イタリアの保健省は、新型コロナウイルス感染拡大の初期からのイタリアの感染状況の推移をオープンデータでわかりやすく発表しており、リアルタイムの状況や過去の状況が地図やグラフで可視化されているほか、データのダウンロードも可能。個人主義であるイタリア国民に危機感をもって行動してもらうためには、このようにデータを可視化することも重要となるだろう。
イタリアでは現在、「第3波」が襲来中と言われている。2020年12月29日から21年1月5日にかけての1週間で、新型コロナウイルス新規患者数が11万4,132人と大きく増加しており、PCR検査の陽性率も前週の26.2%から30.4%に大きく増加したためである。1月7日時点での重症患者数も、イタリア全土で2,587人(前日比+156人)、入院中の人も2万3,291人と医療現場では厳しい状況が続いている。一方、無症状や軽症であり、自宅隔離している人は54万5,177人。
イタリアでは、11月上旬から感染拡大の危険度に応じて、州ごとに「レッド」「オレンジ」「イエロー」ゾーンに色分けをして、エリアごとの段階的なロックダウンを実施してきたたが、結局は年末年始にかけて全国で一斉のロックダウンが再び行われることになった。
日本の緊急事態宣言はイタリアの「イエローゾーン」よりもはるかにやさしい「自粛のお願い」だと感じている。イタリアではもっとも制限の緩いイエローゾーンでさえも、夜間外出は禁止、飲食店の営業時間は午後6時までだ。一方、レッドゾーンにおいては、仕事や緊急時を除き外出禁止、店舗も食料品・医薬品の小売店以外は営業禁止という厳しい処置であり、町では違反者がいないかと警察が見回りしており、罰金などの制度もある。
外国人の目から見ると、義務化されたわけではないのに、いつでもマスクを付けている日本人の国民性はすばらしい。「お願い」ベースがこれまである程度は機能していたのも、日本だからこその可能性がある。
残念ながら、日本やイタリアはじめ全世界では「経済」と「国民の命」を天秤にかけて政策を決定していかなければいけない厳しい状況にある。経済を回すためには外に出て消費しなければいけないが、新型コロナウイルスの感染拡大のなかで命を守るためには、極端にいえば家にこもる以外に方法がない。
イタリアをはじめ、欧州の国の多くは、国民の命を守るために、経済的な痛手は致し方ないという方針を立てている可能性がある。日本で緊急事態宣言が出された今、今後はその対象地域が拡大する可能性があることを考えると、事業主にとっては頭の痛い時期だ。しかし、すべての人を満足させることは不可能な状況であることはたしかだ。より多くの人が「あの時よくやってくれた」と数カ月後に評価できるように、新型コロナウイルス感染拡大を抑え込むため、これからの日本の決断に期待したい。
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