【倒産を追う】コロナで躓いた「見守りサービス」、社内トラブルも足かせに~(株)AIプロジェクト(前)
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小学生を中心とした児童の「見守りサービス」で先駆的な存在だった(株)AIプロジェクト(大阪市)が2020年12月21日に大阪地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約27億円。子どもの安全確保という社会的なニーズの高いビジネスだったが、内部的な問題を抱えていたことに加え、コロナでの休校要請から営業活動に急ブレーキがかかり行き詰まった。同社が倒産するまでの経緯を検証してみよう。
コロナで売上急落
AIプロジェクト(以下、AI社)が手がけていたのは、「ツイタもん」事業という児童見守りサービスの受託事業。事業主体は、(特非)ツイタもん(以下、NPO法人)だ。ツイタもんは、NPO法人がサービス提供に関する契約を締結した自治体や学校の門にICタグ検知器を設置し、児童の登下校をICタグによって記録するシステムだ。
ICタグをもった児童が門を通過すると小学校内に設置されたパソコンにデータが送信され、登下校の時間管理を監視カメラとセットで用いて行う。見守りサービスを導入した学校の全児童には、無償でICタグが配布される。別途、有料サービス(月額440円)を申し込んだ保護者には、登下校情報のメール送信など付加的なサービスも提供している。「ツイタもん」サービスを導入している学校は全国で700校におよび、文字通り、北は北海道から南は沖縄まで利用されている。ICタグを保有する児童は23万人だ。
見守りサービスの浸透とともに、AI社の売上高も上伸基調となった。10期目となる2018年3月期には売上高が7億6,814万円、経常利益が322万円、19年3月期には売上高が10億9,490万円、経常利益が478万円まで伸びた。ところが20年3月期には売上高が6億2,313万円に急落。経常利益は▲5億1,449万円と大幅な赤字に転落した。
新規の有料会員と利用料収入の増加が見込まれるはずの20年3月から、新型コロナウイルス感染症の影響で小中学校が休校となり、事業収支の見込みが大きく崩れた。後述するビジネスモデル上の問題に加え、後に発覚する社内トラブルの影響で経営不振に陥っていたところに、コロナが襲いかかってきたことで実質的にAI社の経営は破綻した。
ビジネスモデルの問題
ツイタもんは、児童の登下校時の不安を軽減する社会的な要請を踏まえたサービスであるが、ビジネスモデルの確立には至っていなかった。このサービスは、NPO法人が学校や自治体(教育委員会)、PTAなどとサービス提供の覚書を締結するところから始まる。NPO法人はAI社に設備設置工事を委託し、ICタグを全児童に配布する。ただしICタグの購入費用はAI社が負担する。有料会員の申し込みの受け付けや利用料の収納はNPO法人が行い、一斉メール送信などを行うAI社に委託料として支払われる。
ここで問題となるのは、設置工事費用やICタグの購入費用などが、AI社の先行投資負担となることだ。有料会員の利用料収入でこれらを回収していくかたちであるが、それまでは立替となるため資金的な負担が大きい。そこで設置した物件(システム)をいったんリース会社に売却したうえでリース契約する(いわゆるリースバック)による負担繰り延べや、第三者(ホルダー)に売却して保有してもらうかたちが徐々に増えていった。
ホルダーから見れば、物件にともなう費用を払う代わりに利用料収入を得る投資物件となる。この場合、AI社はホルダーから保守料収入を得る。AI社に豊富な資金力があれば、すべてを自社保有したうえで有料会員を増やすことに注力し、利用料収入で利益を生み出すことが可能になるのだが、AI社はそこまでの費用負担には耐え切れなかった。
【緒方 克美】
法人名
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