2024年11月22日( 金 )

【倒産を追う】コロナで躓いた「見守りサービス」、社内トラブルも足かせに~(株)AIプロジェクト(後) 

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 小学生を中心とした児童の「見守りサービス」で先駆的な存在だった(株)AIプロジェクト(大阪市)が2020年12月21日に大阪地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約27億円。子どもの安全確保という社会的なニーズの高いビジネスだったが、内部的な問題を抱えていたことに加え、コロナでの休校要請から営業活動に急ブレーキがかかり行き詰まった。同社が倒産するまでの経緯を検証してみよう。

想定以上のオファーで窮地に

 AI社の大きな誤算は、学校から想定以上のオファーがあったことだ。自社で保有する物件の利用料収入、他社ホルダーへの物件売却収入と付随する保守料の収入が主な収入源だが、利用料収入で設置工事費用を回収するには相応の時間がかかる。

 長期的に見れば確実に利益に転換していくのであるが、ほかの物件の申し込みがあれば新たに設置工事費用が必要になり、投資回収ができないまま新規投資をすることになる。AI社は資金不足を他社ホルダーへの物件売却収入で補うかたちになり、その営業活動に追われて肝心の有料加入者の加入促進活動が手薄になったことで、加入率の低下が利用料収入と保守料収入の低下を招く悪循環に陥った。

 新規物件の他社ホルダーへの売却が順調な間は、銀行からの借り入れで資金繰りもまわっていたが、2019年10月頃からホルダーの確保と銀行からの追加融資が困難になり、同社の資金繰りは逼迫していった。この過程で創業者の株式は(株)アクセルが取得し、アクセル社に資金面の支援も依頼した。

 20年2月には、各金融機関へ返済条件を変更してもらうリスケジュールを依頼。福岡県中小企業再生支援協議会に対して、再生支援も申し込んだ。さらに同月には前社長が病気で死亡。創業者である会長との2人代表制だったが、X氏が社長に就任する新たな2人代表制となった。新体制となった矢先の4月、今度は社内トラブルが表面化する。同社関係者によれば「役員の資金流用が発覚した」という。X氏は組織の立て直しを図ったが、コロナ禍もあり思うようにはいかず、自力での再建を断念。新たなスポンサーの下での再生を目指すことになった。

新たなスポンサーの下で再生へ

 「ツイタもん」サービスは社会課題を解決する仕組みであり、時代にもマッチしたものだった。そのことはサービス需要の多さが証明している。一方で、ビジネススキームが確立されておらず、投資側の利益が不明瞭で、投資案件としては不安感がつきまとうものだ。

 最終的にホルダーがどれくらいの利益を得るビジネスモデルなのか、それはいつ頃に実現できるのか、こうした疑問に納得感のある回答ができなければ、その場しのぎの資金集めにしかならない。同時に、ホルダー側にCSRやSDGs(持続可能な開発目標)の観点から、社会貢献を含めた投資と理解してもらう必要もあっただろう。市場占有の時期や先行者利益の見通しなど、右肩上がりのグランドデザインを描き切っていれば、同社の境遇も今とは異なっていたのではないか。

 「ツイタもん」サービスの事業主体はNPO法人であり、サービスそのものは今まで通り継続される。委託を受けていたAI社が、図らずも法的再建の道を選ぶことになったが、魅力的なサービスであることには変わりなく、ぜひとも、新たなスポンサーの下、ビジネススキームを確立して再生をはたしてもらいたい。

【緒方 克美】

(前)

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