感染再爆発東京に責任転嫁の筋違い
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「意味なく都知事との勢力争いに血道を上げる菅首相に、即刻退場してもらう必要がある」と訴えた4月21日付の記事を紹介する。
後手後手・小出し・右往左往。菅コロナ3原則は今も健在。東アジアのコロナ被害は相対的には極めて小さい。しかし、この「地の利」をまったく生かせていない。大失政で3度目の「緊急事態」を迎えている。
政策対応は先手必勝。菅首相は水際対策に失敗して変異株の国内流入を許した。N501Yの特徴は感染力が強く、重症化もしやすいこと。基礎疾患がない若年層でも重症化するケースが伝えられている。
昨年12月にコロナ感染拡大が鮮明になった。しかし、菅首相はGoToトラベル事業を12月28日まで推進した。年末に東京都の新規陽性者数が1,000人を超えた。しかし、年明け後も菅首相の対応は鈍かった。首都圏4知事が緊急事態宣言発出を要請し、菅首相がようやく動いた。緊急事態宣言は3月1日から21日にかけて解除されたが、2月中旬以降、人流は再拡大に転じていた。人流拡大が新規陽性者数拡大に反映されるまで3週間のタイムラグがある。3月の緊急事態宣言解除が誤りだった。
菅首相は小池百合子東京都知事と張り合っている。どちらが主導権を握っているかどうかの見栄えを過剰に意識している。東京都の対応を批判するため、メディアと大手芸能社まで動員している。動員されて小池都知事批判を展開する御用コメンテーターや御用芸人の立ち振る舞いは「片腹痛し」。みっともなくておかしい。
菅首相は器量が小さすぎる。東京都知事と張り合うこと自体が器の小ささを証明している。今回の「緊急事態宣言」開始日を1週間先に設定することもコントのよう。
菅首相は昨年12月14日にGoToトラベルの停止を表明した。しかし、GoToトラベル事業を12月28日まで推進した。12月27日まで、駆け込み旅行が大規模に実行されたことはいうまでもない。すべての対応が遅い。しかも、国民に対する説明力が欠落している。
菅内閣はファイザー社のワクチンを9月までに調達することで合意が成立したように伝えているが、実際にはファイザー社と協議しているだけ。ファイザー社のCEOと電話で相談するなら、わざわざ不要不急の訪米をせずに、日本から電話すれば済む。
不要不急の訪米でバイデン大統領から東京五輪開催への支持を取り付けようとしたが、これにも失敗。バイデン大統領の東京五輪訪日を要請したが、相手にされなかった。菅首相が東京五輪を開催しようとしている「努力」が支持されただけ。
その米国は海外渡航中止勧告の対象を一気に拡大する。日本は現在レベル3だが、レベル4に引き上げられて日本への渡航中止が勧告されることになる可能性が高い。米国は五輪選手団の日本派遣を見送るのではないか。
IOCは必ず東京五輪を開催すると主張しているが、ここまで来ると、日本政府はIOCを反社認定すべきだ。IOCは「威力により経済的利益を追求する集団」でしかなくなっている。五輪開催が日本および世界のコロナ感染拡大をもたらそうが我関せずの姿勢だ。IOCは自分たちの利権しか考えていない。
内外の調査で7割以上の国民が東京五輪について中止または延期が妥当と判断している。この状況は、二階俊博氏がいうところの「とてもこれでは無理だと、誰もがそうご判断されるような状況になったとき」に該当する。こういうときがきているのだから、スパッとやめる。これは当然のことであるといえる。
IOCも日本の五輪組織委員会も、結局は自分たちの利権しか考えていない。このとき大局的見地、国民の視点から判断し、リーダーシップを発揮するべき存在が首相だ。その首相の能力が足りない。しかも、首相自身が自分の利益しか考えていない。日本国民は不幸だが、このような政治状況を生み出した責任が国民自身にあることを忘れてはならない。
政治が国民の幸福を第一に位置付けていない。菅首相が3月21日、強引に緊急事態宣言を解除したのは3月25日に五輪聖火リレーをスタートさせるためだった。大阪府が3月1日に先行して緊急事態宣言を解除したのは、五輪優先の菅首相の意向を忖度したからだ。神奈川県知事が緊急事態宣言解除に積極姿勢を示したのも、五輪優先の菅首相の意向を忖度したからだ。国民の命と健康を最優先する姿勢がない。
感染爆発によって被害を受けるのはハイリスクの人々。基礎疾患をもつ高齢者はコロナ感染で重篤化するリスクが高い。感染収束を実現しなければならないのは、これらの人々を守るためだ。
ワクチンにその効果が期待されるが、残念ながらワクチンの安全性が確立されていない。ワクチンの安全性が確認されるには一定の時間が必要。見切り発車でワクチン接種を推進し、後に重大な惨禍がもたらされても、そのときには手遅れだ。当面はコロナ感染収束を慎重に追求する必要がある。
コロナ被害の小さい東アジアとその周辺地域では、コロナ収束に成功している国・地域がある。台湾、ニュージーランド、オーストラリア、ベトナムなどの国や地域だ。これらの国や地域では感染症対策の基本に忠実な対応が取られた。「検査と隔離」である。
ところが、日本政府は「検査と隔離」の基本を無視し続けてきた。さらに、GoToトラベルやGoToイートなどの感染拡大推進策に巨額の公費を投入してきた。
感染拡大推進策と緊急事態宣言の間で右往左往を繰り返している。感染収束に百害あって一利のない五輪開催について、冷静、適正な中止の判断を示せずにいる。判断を遅らせれば遅らせるほど混乱は拡大し、国民の資金負担は重くなる。強引に五輪開催を強行すれば、大きな災厄が日本と世界の市民にもたらされる。
大失政を繰り返し、意味なく都知事との勢力争いに血道を上げる菅首相に、即刻退場してもらう必要がある。
このタイミングで菅内閣発足後、最初の国政選挙が実施される。衆議院北海道2区、参議院長野選挙区、参議院広島選挙区の投票が4月25日に実施される。紆余曲折はあったが、反自公陣営が共産党を含むかたちで共闘体制を構築した。この国政3選挙で菅内閣が3敗=惨敗するなら、日本政治の潮流が転換する。同時に、野党共闘破壊をなお追求するなら連合6産別と国民民主党の「敵性」が露わになる。
この場合、野党共闘破壊を目論む連合6産別と国民民主党は実態に即して自公陣営に立ち位置を移すべきだ。野党陣営に潜入して野党共闘を破壊する工作活動を許すべきでない。日本政治刷新のために、政策を基軸に反自公の「政策連合」を構築し、決戦の衆院総選挙に備えなければならない。
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