【倒産を追う】(株)九設 排除措置公表から2週間 急転直下の倒産劇
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管工事や電気工事を手がける九設(大分市)が5月10日、大分地裁に自己破産を申請した。地場大手の設備工事業者でもあり、負債総額は30億円が見込まれている。近年は毎期50億円程度の売上高を計上するなど、安定した業績を誇っていた同社が、なぜ倒産に至ったのか。
発端は今年2月の事件に遡る。2月19日、福岡県警は暴力団組長を含む3名を風営法違反容疑で逮捕した。県公安委員会の許可を受けずに博多区でキャバクラ店を営業した疑いだ。営業許可を受けた人物が、実質的な経営者である組長に名義貸しをしていたとされる。そのキャバクラには「暴力団員立入禁止」の標章が掲示されていたと、一部の新聞が報じていた。
1カ月ほどが経過した3月21日、九設の田島社長は県警に呼び出された。そこで2月に逮捕された組長との関係を聞かれた。同社長の言い分は「定期的に食事会をするメンバーの1人だったが、暴力団員とは知らなかった」というものだ。一方で取り調べの厳しさに「つい知っていたと答えてしまった」と周囲に漏らしていた。さらに1カ月ほどが経過した4月19日、県警から今回の件の説明をしたいとの連絡があり、翌20日、田島社長は説明を聞きに行った。そのときに排除措置の会社になるので国、県、市、大分県警、熊本県警の広報などに排除通報することを告げられた。
排除措置を受けた会社は大きなダメージを受ける。指名停止措置などで公共工事受注が厳しくなることもあるが、民間工事においても対外的な信用失墜は免れない。社員にも取引先にも多大な迷惑をかけることは必定だ。田島社長は弁護士や知人を通じて排除措置の回避に奔走した。だが県警からの排除措置公表の知らせは思いのほか早かった。
県警から通告を受けた約1週間後の4月27日、暴力団関係事業者の対象業者として公表された。公表以降、田島社長は取引先への謝罪と金融機関へのお願いに追われることになる。折しも世間はゴールデンウィークに突入したが、その期間中も金融機関との交渉が続いた。同社の手形決済は5日付けである。5日は休日のため、実質的な決済日となる5月6日に注目が集まった。大分本社はコロナを理由に閉鎖されており、福岡支店も閉まったままだった。7日には決済が不調に終わったことが明らかになった。銀行が口座を凍結したとの話が取引業者の間を駆け巡った。銀行から手形不渡りを聞いた取引業者が相次いで事務所を訪れたが、相変わらず事務所は閉まったままだった。取引業者の1人は「昨日は銀行が大丈夫と言っていたのに、今日になって急に不渡りだと言われた」と顔をしかめた。
5月10日、同社は大分地裁に自己破産を申請した。県警の排除措置公表から、わずか2週間足らずで同社は倒産した。
詳報はI・B本誌に掲載予定。
【緒方 克美】
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