2024年11月22日( 金 )

佐川急便に7,200台の軽EV供給 EVベンチャー 「ASF」(前)

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 100年に1度の技術転換期といわれている。EV(電気自動車)である。EVシフトは世界的傾向だ。先行するテスラを追って、アップルなど巨大IT企業が参入の機会をうかがっている。ソニーグループはEVへの参入を表明した。「車は家電になる」。そう確信した元ヤマダ電機副社長・飯塚裕恭氏は日本発のEVベンチャー、ASFを立ち上げた。

中国メーカーが小型EV10万台をASFに供給

 「広西汽車集団、日本ASFと配送用小型EVで提携」。36Kr Japan(2021年1月12日付)は中国の国営通信、新華社通信の記事の日本語訳を報じた。

 〈中国広西チワン族自治区柳州市に本拠を置く国有自動車メーカー広西汽車集団と電気自動車(EV)の企画・開発などを手掛ける日本のスタートアップ企業ASFはこのほど、配送用小型EVの開発と製造で提携することで合意した。(1月)6日に同自治区南寧市で開かれた「地域的な包括的経済連携(RCEP)ビジネスリーダーフォーラム」で調印式を行った。

 両社は「ラストワンマイル」と呼ばれる短距離の配送や狭い範囲での移動に適した配送用小型EVを開発し、柳州で製造、日本で販売する。今年12月に量産と販売を始める計画で、販売台数は30年までに10万台を超えると見込む。〉

 RCEPが今年1月1日に発効したことにともない、世界2位と3位の経済大国である中国と日本の間に初の自由貿易協定が成立した。関税の引き下げや原産地規則の累積制度などが日中間の貿易に実益をもたらし、地域の産業チェーン、サプライチェーン、バリューチェーンの再編を促す。

 ASF(株)(東京都港区)の田村敦専務執行役員は「広西汽車集団との提携を通じて、日本の自動車業界に革命を起こしたい」と語った、と新華社通信は報じている。

佐川急便は宅配特化の軽7,200台をEVに切り替え

EV 充電 イメージ    SGホールディングス(株)グループの佐川急便(株)は21年4月13日、開発中の軽電気自動車(EV)の試作車を報道陣に初公開した。EVベンチャーのASFと共同開発していた配送用の軽商用バンで、中国・広西汽車集団が製造するEVだ。

 軽自動車タイプの2人乗りで、屋根に太陽光パネルを搭載。1充電あたりの走行距離は200km以上を確保した。車両生産には約1年以上かかるため、佐川急便の営業所には今年9月に納車される予定。佐川急便は30年までに、集配用として使う約7,200台の軽自動車をすべてEVに切り替える計画だ。

 報道によると、佐川急便は20年6月、ASFと小型EVの共同開発で合意した。当時、自動車メーカーからオールマイティーな車両は出ていたが、宅配便に特化した車はなかったため、宅配業者自らがEVベンチャーと共同開発することになった。

 EVに切り替える軽自動車は、佐川グループの全車両(2万7,000台)の3割近くを占める。集配用軽自動車をEV化することで、全車両が排出する二酸化炭素(CO2)の約1割に相当する2万8,000tを削減できる見込みだという。

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 佐川急便と宅配向けEVを共同開発していることが明らかになり、ASFは一躍、EVベンチャーの旗手に躍り出た。しかも、ASFの飯塚裕恭社長が、家電量販店ヤマダ電機出身で、自動車業界とは畑違いの業界からの挑戦ということも話題をさらった。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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