2024年07月18日( 木 )

表現の自由奪う自民党壊憲案

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、日本の刑事司法は腐敗しており、ロシアと大差がないと指摘した3月25日付の記事を紹介する。

ロシアで戦争反対のデモを行う市民が当局によって摘発されることを日本のメディアが大きく報道するが、同様の政府対応が日本国内で見られることを日本のメディアは大きく報道しない。

2019年7月の参院選の期間中、安倍晋三首相(当時)が札幌で街頭演説した際、ヤジを飛ばした市民を警察官が力尽くで排除した。

排除された市民の男女2名が、表現の自由を侵害されたとして警察が所属する北海道に対して損害賠償を求めた裁判の判決が3月25日に示された。

札幌地方裁判所の広瀬孝裁判長は、「生命や身体に危害を加えるものや事件性があったとは確認できない」「表現の自由を侵害し違法と言わざるを得ない」として原告の訴えを認め、北海道に88万円の賠償を命じた(https://bit.ly/3IxVn9G)。

この事件が発生したのは2019年7月。第一審の判決が示されるまでに3年弱の時間が経過している。違法行為を働いた警察官の刑事責任が問われるべきだが、日本の司法機関は警察の刑事責任を追及していない。

日本とロシアの差は極めて小さいといえる。警察は市民の安全を守る存在ではなく、権力のために市民に刃を向ける存在である。日本の刑事司法は歪み、腐敗しており、ロシアと大差がない。

日本の刑事司法制度には3つの重大な欠陥がある。
第1は、警察、検察に不当に巨大な裁量権が付与されていること。
第2は、警察、検察が基本的人権を侵害していること。
第3は、裁判所が法の番人ではなく、政治権力の番人に成り下がってしまっていること。
いずれも重大な問題だ。

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第1の不当な裁量権とは、犯罪が存在するのに、犯人を無罪放免にする裁量権と、犯罪が存在しないのに、無辜(むこ)の市民を犯罪者に仕立て上げる裁量権である。

警察は密室で犯罪を創作する。取り調べ過程が可視化されておらず、密室で関係者の証言がねつ造され、無実の市民が犯罪者に仕立て上げられる。

他方、政治権力の事情で、犯罪が明白に存在するのに、犯罪者を無罪放免にする裁量権も付与されている。検察審査会という制度が存在するが、検察審査会の委員と補助弁護士の選出が不透明であり、この人選によって、検察審査会の結論は人為的に誘導されてしまっている。

犯罪を立件するかどうか、起訴するかどうかは、警察と検察の裁量権に委ねられているため、犯罪者が無罪放免される事例が後を絶たない。

第2の人権侵害は極めて深刻である。憲法は刑事手続きの適法性を要請しているが、適法性のない刑事手続きが放置されている。

裁判で適法手続き違反が明らかになるのに、裁判所が適法手続き違反を認定しない。無罪推定の原則、罪刑法定主義、適法手続きなどの基本的人権を守るための制度が形骸化している。現行犯逮捕していないのに、事後的に「現行犯人逮捕手続き書」を偽造して任意取り調べが現行犯逮捕に切り換えられても裁判所がこれを問題にしない。

裁判所裁判官の人事権を最高裁がもつ。最高裁長官、最高裁判事の人事権は政府にある。このため、最高裁は常に政治権力の顔色をうかがう。

裁判所人事権を最高裁が保持するため、裁判所の判断は政治権力の意向に支配される。法と正義に基づく裁判所判断が示されないことが多い。地方裁判所においては裁判官が正しい判断を示す場合があるが、上級裁判所では、その正しい司法判断が覆される。

公道上で選挙演説に対して意見を表明することは憲法が保障する基本的人権である。警察が力尽くで意見を表明する市民を排除することは憲法違反、法令違反の行為である。今回判決では裁判所が市民の民事上の主張を認めたが、警察官の違法行為を問う刑事責任追及においては、警察、検察、裁判所、検察審査会のすべてが、刑事責任を否定した。

日本の現状がロシアと大差のないことをすべての日本国民が知っておく必要がある。

※続きは3月25日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「表現の自由奪う自民党壊憲案」で。


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