2024年07月18日( 木 )

異論の存在認めるのが民主主義

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。
 今回は4月8日付の記事を紹介する。

バイデン大統領はプーチン大統領を「戦争犯罪人」と公言する。

理由はロシアが戦争犯罪を実行しているから。

戦争犯罪として挙げられているのは民間人が殺害されていること。

紛争の解決に武力を用いることも国際法違反。

国連憲章第2条第4項は
「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しないほかのいかなる方法によるものも慎まなければならない。」

と定めている。

紛争の解決のために武力を行使すること

民間人(文民)を攻撃すること

は許されない。

平和を維持するための基本は

1.内政干渉しないこと

2.紛争の解決に武力を用いないこと

である。

これを破る行動を非難しなければならない。

この意味でロシアの行動は非難されねばならない。

しかし、これまでの歴史の事実を踏まえるなら、米国が絶対善でロシアが絶対悪ということにはならない。

米国の悪徳が際立つ。

2001年に同時テロと呼ばれる事件が発生した。

事件の真相は確定していない。

多くの状況証拠などは米国政府による自作自演を示唆している。

しかし、定説は確立されていない。

問題はこの事件後の米国の対応。

アフガニスタン、イラクで米国が軍事侵攻した。

イラク戦争ではイラク文民多数が虐殺された。

イラク戦争で死亡した文民は少ない推計で10万人、多い推計で60万人。

とてつもない数のイラク市民が虐殺された。

現在、ウクライナでの市民の犠牲が連日連夜報道されているが、イラク戦争の際に、類似した報道は皆無に近かった。

この点に疑問を感じなければならない。

イラク戦争は米国による侵略戦争である。

米国はイラクが大量破壊兵器を保持していると主張した。

しかし、イラクから大量破壊兵器は発見されなかった。

米国は国連安保理の決議を経ずに軍事侵攻した。

軍事侵攻によって虐殺されたイラク市民の数はウクライナの比ではない。

この事実を踏まえるなら、バイデン大統領はブッシュ父大統領を「戦争犯罪人」と断罪すべきである。

ブッシュ父大統領を「戦争犯罪人」と呼ばず、プーチン大統領を「戦争犯罪人」と呼ぶことは「ダブルスタンダード」である。

平和を維持するために重要なことは、戦乱を引き起こさないこと。

ウクライナの戦乱発生には理由がある。

ロシアが理由もなく軍事行動を始めたのではない。

この戦乱は回避することが可能だった。

戦乱を回避するためにミンスク合意も制定された。

ミンスク合意は国連安保理で決議され、国際法の地位を確保しているもの。

このミンスク合意を踏みにじったのはゼレンスキー大統領である。

ロシアは軍事行動に踏み切る前に米国に対して具体的かつ現実的な提案を示している。

しかし、米国はウクライナと結託して平和的な問題解決を拒絶した。

この意味で戦乱をもたらした重大な責任が米国とウクライナの側にある。

国連でロシア非難決議が採択されたが、賛成した国の人口と反対・棄権した国の人口はほぼ同数。

賛否が二分されているのが現実である。

日本の情報空間に片側の情報しか流布されないことが重大な問題である。

自由、人権、民主主義の価値は重要。

私たちはこの価値を重んじて、大切にこれを守らなければならない。

しかし、たとえば自民党が提示している憲法改定案では、日本国憲法と比較して人権に対する保障が著しく後退している。

日本国憲法は第十章「最高法規」という章を設けて、次の条文を置いた。

第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託された
ものである。

憲法が定める基本的人権を

「侵すことのできない永久の権利」

と認定している。

ところが、自民党改憲案では、この条文が丸ごと削除されている。

憲法第十三条も次のように書き換えられる。

現行憲法
すべて国民は、個人として尊重される。
生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しな
い限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

改憲案
すべて国民は、人として尊重される。
生命、自由および幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に
反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならな
い。

この点は、言論の自由に関わる条文でも踏襲される。

第二十一条は次のように書き換えられる

現行憲法
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

改憲案
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活
動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。 基本的人権が「制限付きの保障」に変わる。

※続きは4月8日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「異論の存在認めるのが民主主義」で。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

関連記事