九州ラグビー復権への道 サニックスの撤退と今後(5)
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パトロン出現を期待する!
これまで4回にわたって、ジャパンラグビーリーグワン(以下リーグワン)に参戦していた、宗像サニックスブルースの活動休止(事実上の撤退・廃部)、同チームの戦歴、そしてリーグの現状と福岡での新たな活動について述べてきた。これを踏まえた上で、今後九州ラグビーの復権はあるのか?
今の時点では、現状維持が精一杯というところではないだろうか。前回取り上げた「ルリーロ福岡」については、この春に創設され活動を始めてまだ5カ月で、判断するには早計であろう。リーグワンD3の九州電力キューデンヴォルテクスはリーグ戦参戦とともに、地域に根ざしたラグビー普及など社会貢献活動への取り組みは高く評価されている。一方でチーム体制は、一部選手およびスペシャリティスタッフ以外は九州電力および関連会社の社員である。つまり企業スポーツ=アマチュアの枠を出ていない。7人制女子ラグビーチーム「PRISM FUKUOKA」は、所属選手の大半が同チームのスポンサー企業の所属あるいは学生で、興行としてラグビーを実施できているかは、未知数である。
かつて九州のラグビー界は、配炭公団、三井化学、新日鐵八幡ラグビー部(現・日本製鐵八幡ラグビー部)、門司鉄道管理局ラグビー部(現・JR九州ラグビー部)、三菱重工長崎ラグビー部、九州電力など名門チームが奮闘していた。新興勢力としてニコニコドー、コカ・コーラそして宗像サニックスが九州ラグビー界をけん引し、全国レベルに押し上げた。当時から現在まで活動を続けているのは、日本製鐵・三菱長崎・JR九州そして九州電力である。現状、これらの4チームはリーグワンD1を目指した活動は行っていない。ラグビーを事業化する意志は今のところ聞かれない。今後もこの状況が変わるとは考えられない。
高校ラグビーに目を転じると、東福岡高等学校は全国屈指の強豪である。そして小中学生のラグビースクールは20を超え、全国トップ5に入るほど盛んに活動している。これらのスクールが毎シーズン有望選手を輩出し、東福岡高校へ進学するケースが多い。一方、東福岡から地元福岡・九州のチーム(大学・社会人など)に残る選手は残念ながら少ない。ほとんどが、首都圏や関西の強豪大学に進み、その後リーグワンもしくは社会人チームへと進む。つまり高校生までの世代は全国屈指であるものの、それより上のカテゴリーは、90%近くの選手が本州へ渡り、より高いレベルのラグビーに挑戦する。現状リーグワンのチームは九州電力のみであることから、その流れはさらに加速するだろう。やはり宗像サニックスの廃部による九州ラグビーの沈下は、否めない。
今後「ルリーロ福岡」はじめ新興チームの新設があるのか?
宗像サニックスの拠点であった、宗像市神湊の2面天然芝フィールドのある施設は現在、地元ラグビースクールなどが利用している。つまり、ハードはある。新たに名乗りをあげるパトロン・資本家が現れるであろうか。最低年間10億円の運営費が必要だ。そしてリーグは、ホームゲームの興行は15,000人以上の観客動員数を基準値としている。また、競技特性上、週に1試合が限度である(選手の心身リカバリー・健康のため)。
他方、九州・福岡はラグビー処であることは明らか。ラグビーの試合を通じて、付加価値を創造した事業を実現できれば、興行として成立する風土はあるのではないか。例えばリーグ独自のOver The TOP(OTT)配信を実施し、独自の映像コンテンツを制作して放映収益を上げる。そして当該映像を他社へ売却する映像権利ビジネスなど、可能性はまだまだある。
【難波 二郎】
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