2024年12月22日( 日 )

「日本最初の禅寺」聖福寺と福岡市との間でトラブル発生(後) 下水道管をめぐって

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 建久6(1195)年に創建された臨済宗妙心寺派の寺院である聖福寺(福岡市博多区)は、「日本最初の禅寺」とされている。中国・南宋で禅宗を学んだ栄西(ようさい)禅師が、その教えを広めるために創始した。聖福寺は、元久元(1204)年に後鳥羽上皇から「扶桑最初禅屈(ふそうさいしょぜんくつ)」の勅額を賜ったという非常に由緒正しい寺院で、1969年7月には、境内が国指定の史跡に指定されている。その聖福寺と福岡市との間で2つのトラブルが発生した。

下水道管をめぐってのトラブル

最初禅窟(最初の禅寺)と刻まれた石標
最初禅窟(最初の禅寺)と刻まれた石標

    聖福寺と福岡市との間で発生しているもう1つのトラブルは、聖福寺の私有地内(私道)に埋設された下水道管についてだ。

 当該下水道管は、34年ごろに敷設されており、老朽化が進んでいるため、更新工事の必要が生じている。福岡市道路下水道局は「整備当時、道路が国有地と私道だったが、地域の要望を受けて、無償占用を前提に整備したものと思われる」としているが、書面などにより取り交わした契約が確認できない状況で、聖福寺から占用料の支払いを求められている。

聖福寺 下水道管 埋設状況

 占用料を算出するために当該地内の下水道管渠(かんきょ)の調査が必要なため、福岡市道路下水道局は、聖福寺に協力を依頼しているが、聖福寺がこれに応じず、協議が難航しているという。

 この件についての経緯は以下のようなものである。2020年9月15日、福岡市下水道局は、更新工事の設計委託業務として私道に無断で立ち入ったため、聖福寺側から注意を受けた。10日後の25日、私道への無断立ち入りについての謝罪を行い、口頭で聖福寺から調査委託の実施許可を得たという。しかし、10月26日に書面で立ち入り申請を聖福寺に提出したところ、一転して「立ち入りを認めない」との回答があった。

 21年3月2日、聖福寺から福岡市下水道局に「下水道帳を見せてほしい」との連絡があったため、同22日に聖福寺に下水道帳をもって説明に行ったところ「無償占有は認めない」「無償地上権を設定するつもりはない」「占用料を支払わないのであれば撤去するように」との回答があったという。

 4月19日には聖福寺から「下水道管設置に係る占用料の請求について」という郵便が送られてきた。内容は、1953年(※53年は福岡市が占用料の徴収を開始した年)から68年間分の福岡市道路占用料に基づく2,754万3,808円の支払いを求めるものだった。

聖福寺には第32代内閣総理大臣・広田弘毅、
玄洋社初代社長・平岡浩太郎、
博多織の祖・満田彌三右衛門の墓がある

    2021年5月24日に福岡市下水道局は聖福寺に1回目の条件を提示したものの、「話も聞いてもらえない状態」で、同28日に再提示した際、下水道管渠の調査について文書を提出するよう指示された。福岡市下水道局は6月4日に「下水道管渠の調査(お願い)」の文書を複数回提出するも回答がなかったため、10月5日と12日の2度にわたり調査についての再説明を申し入れたが、聖福寺は「占用料を支払わないと許可しない」として申し入れを却下している。その後、10月29日と2022年3月28日に「下水道管渠の調査(お願い)」の文書を郵送したが、回答がない状態が続いている。

 聖福寺はなぜ、これほど頑なに福岡市からの提示を拒むのか。聖福寺側の主張はこうだ。

・昭和9(1934)年ごろに福岡市が聖福寺の私有地内(私道)に整備した下水道管について、現在まで約90年間無償占有を許してきた。

・博多区地域整備課が聖福寺と当該私道整備時(2000年度)に締結している「土地使用貸借契約書」(※更新前の「土地使用貸借契約書」では、契約道路内の占有物に係る占用料は市が徴収し、道路の維持管理にあてるとしていたが更新時に削除)の貸付期間が2020年度に満了となるが、更新にあわせて私有地内にあるすべての下水道管について、1953年からの占用料を支払うように。支払わないのであれば撤去すること。清掃・調査の実施にも応じない。

 というものである。

 これに対し、福岡市は、

・遡っての支払いが求められるのであれば、民法に照らし合わせて10年分を支払わせていただきたい。

・当該敷地内の下水道管は、公共下水道と宅内排水設備に区分されるものが混在しており、公共下水道に区分されるものしか占用料を支払えないとし、宅内排水設備に区分されるものは今後も無償占有※とさせてほしい
(※支払いが求められるのであれば、今までの10年分の支払いは可能だが、今後市では管理は行わない)。

・実際の使用状況などを確認し、占用料を算出するため、まずは管渠の清掃および調査を実施させていただきたい。

 と主張している。

 福岡市道路下水道局にこの件について問い合わせたところ、「聖福寺の私道に下水道管があるのは事実。現在、聖福寺と協議中につき、詳細については、お答えできない」との回答があった。

 なお、聖福寺に上記2件について取材を申し入れたところ「取材はお断りします」との返答だった。平行線をたどる両者の主張だが、今後折り合いがつくことはあるのだろうか。

(了)

【新貝 竜也】

(前)

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