過去最低の投票率でいいのか
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9日に投開票された統一地方選挙の前半戦において、福岡県議会議員選挙の投票率が35.50%で初めて4割を切った。福岡市議会議員選挙の投票率は、県議選同様、前回より5ポイント低い36.85%で、過去最低であった。
今回の投票率の低さについて、福岡県選挙管理委員会は、「前回まで同日投開票されていた県知事選挙が今回から別日程となり、選挙への関心が高まらなかった」という説明をしているが、県政界の重鎮と元筑後市副市長の一騎打ちで注目を集めた筑後市選挙区でも、投票率は45.82%であった。今回44ある福岡県議会の選挙区のうち、14選挙区で無投票当選となり、うち筑豊地区は直方市選挙区以外、無投票。残り30の選挙区で選挙戦が展開された。
選挙中、福岡都市圏の某市に取材に赴いた。県議候補が「選挙は民主主義にとって大事です。1つの考え方で物事が進められる政治でよいでしょうか。皆さん投票へ行ってください。私の名前でなくともよいですから、投票へ行きましょう。〇〇市だけでも投票率をあげましょう」と訴えていた。
しかし、結果はどうだったか。福岡を含めた41道府県議選挙の投票率は41.85%。過去最も低かった2019年の44.02%から2.17ポイント下がった。41道府県のうち、栃木、群馬、埼玉、千葉、愛知、兵庫、岡山、広島、山口、愛媛、福岡の11県で40%以下と低迷した。
統一地方選で行われる道府県議選挙の平均投票率は、1995年以降は概ね50%台で推移していたが、11年に48.15%となり5割を切った。15年は45.05%。前出のように19年は44.02%である。
劇作家の鴻上尚史氏が自身のツイッターのなかで「投票率の低さに絶望する。本当に絶望する」と綴っている。鴻上氏はさらに「政治に関心がないこと、投票率が低いことが、この世界が良いことの証明だという政治家がいる国だから。教育から変えていかなければと、真剣に思う」と教育に言及し、低投票率を憂慮している。
物価高や賃上げは、国の政策や、企業と労働者の問題と捉えられがちだが、地域経済と切り離せず、県や政令市といった自治体、その議会の役割は大きい。教育問題は、予算1つとっても公立学校を所管する自治体の役割が大きい。
投票率が低迷し続けているのは、やはり若い世代が投票に行かないことが大きい。動画ニュース「『投票行きません』 若者に政治への関心を聞く」で取材した若者たちは、次のような理由で選挙に行かないと述べている。
「政治がわからないから」「どの候補者も同じように見えるから」
また、彼らのほとんどはソラリアプラザに投票所が設置されていることも知らなかったようだ。
ただ、彼らを批判して投票率が上がるというものではないだろう。若者だけでなく中高年も投票に行かないからだ。そもそも政治について何も教わらず、興味をもてという方が無理な話だ。鴻上氏が指摘したように、政治や選挙について学ぶ主権者教育がごく最近までほとんどなかった。かつて、偏向教育が問題となった時期がある。それから教育現場で政治について語るのは半ばタブーとなった。我々の親世代も含めて政治について関心をもつ入り口の段階で、排除されていたといえる。
八女市議会議員・牛島孝之氏は「投票率が5割に行かないのは教育の影響が大きいと思いますよ。戦後教育は、公を語らず、政治的無関心を生み出しました」と指摘する。
政治が一部の人たちのためになっている。そのように指摘されることが多いが、それを変えるには、海外のように、政治や社会の在り方についてもっと議論する場が必要だし、学校教育や地域、家庭のなかで、子どものころから、世の中の仕組みや政治の役割について話し合う取り組みが求められていると思う。今後も引き続き、選挙はもちろん、政治や法制度、行政と住民の関わりなど、報道を通じて、市民の皆さんにお伝えしていきたい。
【近藤 将勝】
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