2024年11月22日( 金 )

分裂もあり得る後継会長不在の安倍派の前途多難

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 16日、自民党最大派閥である安倍派のパーティーが開催された。昨年の安倍元首相の逝去から現在まで後継会長が決まっていない。今後の行方を考察する。

難航する後継者選び

自民党 イメージ    自民党の各派閥のパーティーが立て続けに開催されている。4月26日の二階派(志帥会)に始まり、5月10日は森山派(近未来政治研究会)、16日には最大派閥の安倍派(清和政策研究会)のパーティーが開催された。17日は総裁派閥の岸田派(宏池会)、18日は麻生派(志公会)と続く。

 なかでも注目されるのは、安倍派の動向だろう。会長だった安倍晋三元首相の逝去後、1年近く後任の会長が決まらない状況が続いている。複数の後継会長候補の名前が挙がるが、安倍政権時、「安倍の後は安倍しかない」といわれたほど安倍氏の存在感は大きかっただけに、いずれも決め手に欠ける。

 16日のパーティーでも、会長代理の塩谷立元文部科学大臣は「(次期会長に)誰がなっても派閥としてこれから日本の政治を動かしたい」と語ったが、安倍氏に代わる後継についての言及はなかったようだ。パーティーを機に新しい会長選出を目指す動きもあったが、今、後継者を誰かに決めると、間違いなく安倍派は分裂してしまう。

 現在、安倍派は100人を擁し、自民党国会議員380人のうち4分の1を超える。安倍氏は生前、下村博文・元文部科学大臣、西村康稔・前経済再生大臣、松野博一官房長官、萩生田光一・自民党政調会長の4人を将来の首相候補に挙げたが、自らの後継者を指名したことはなかった。安倍氏の逝去後、会長を置かずに集団指導体制を続けてきたのは、派閥の分裂を避けるための苦肉の策である。

森氏の幸運による政権奪取

 現在の安倍派である清和会は、保守本流と呼ばれる宏池会(現・岸田派)や旧経世会(現・茂木派)の勢いがあった1970年代から90年代後半までは、自民党内で傍流だった。小渕恵三元首相が倒れた際、後継首相をどうするかについて会談の場がもうけられ、自民党内における有力者の5人が赤坂プリンスホテルに集まった。当時の森喜朗幹事長(森派)、青木幹雄官房長官(小渕派)、村上正邦参議院議員会長(江藤・亀井派)、野中広務幹事長代理(小渕派)、亀井静香政調会長(江藤・亀井派)の5人である。

 森派は現在の安倍派、小渕派は茂木派、江藤・亀井派は現在の二階派であるが、村上氏の「あんたがやればいいじゃないか」との一声で森氏が首相となった。森氏は「神の国」発言などで支持率低迷に喘ぎ、野中氏や古賀誠氏らの力を借りて加藤の乱を鎮圧したが、1年余りの短命に終わった。しかし、森氏が首相の座を得たことは幸運であった。

 小泉純一郎氏は首相になるや、「聖域なき構造改革」を推し進め、郵政事業民営化などを断行した。郵政選挙などでは、かつての仲間も切り捨てる非情な面も見せた。旧経世会などに気をつかうことはなくなり、一気に清和会が天下を取った。小泉・安倍両氏の政権運営に批判は少なくなかったが、やはり権力側にいたいのが政治家の性というもの。毎年、所属議員が増えていった。

 ただ、人数が増えると、さまざまな考え方を派内に抱え込むことになる。これまでは安倍氏の求心力が強かったため、あまり表面化しなかっただけの話である。

LGBT法で揺れる安倍派

 派閥パーティーが開催されたのと同じ16日、自民党本部で総務会が開催され、LGBTなど性的少数者への理解を深めるための法案が正式に了承された。自民、公明両党は与党政策責任者会議でもこれを了承し、週内に国会に共同提出することで合意したが、安倍派のなかも賛否が分かれている。

 法制化を進める超党派議員連盟の1人として、2年前の法案のとりまとめに関わった稲田朋美・元防衛大臣は、「総理総裁が指示を出している。今国会で成立させるべきだ」と主張している。現在、首相補佐官を務める森雅子・元女性活力・子育て支援担当大臣も法案成立に賛成の立場である。一方、総務会にオブザーバーとして出席した高鳥修一・元農林水産副大臣は、自身のFacebookで「私のTwitterの表示回数が400万回を超えました。差別や性同一性の定義、説明をせず反対多数にもかかわらず無理やり部会を通した自民党への抗議だと思います」と述べつつ、LGBT理解増進法案の成立を急ぐ党執行部を批判した。

 このままいけば派閥が割れる可能性もある。伝統的家族観を重視する保守派は、安倍政権時代の岩盤支持層であるだけに、対応を間違うと自民党離れにもつながりかねない。

 年内に解散が行われるとみられるが、5つの衆議院補欠選挙で4勝一敗。勝ったとはいえ、山口2区では、安倍氏の甥にあたる岸信千世氏と平岡元法務大臣との票数は僅差であった。日本維新の会の躍進や公明党との軋轢などもある。支持者離れは避けたいところだが、このタイミングで派閥会長に就任して矢面に立ちたいと考える者はいない。

 2カ月後には7月8日の安倍元首相の一周忌が控えている。今後も後継者選びは難航するだろう。

【近藤 将勝】

法人名

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