楽天G、3,300億円増資で勝負~筆者もにわかに応援したくなってきた!(前)
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市場評価は冷ややかだが、当人の覚悟はこれまでと違うようだ
16日、楽天グループは、公募と第三者割当で約3,300億円規模の新株式を発行する旨を発表した。
ところが、本件増資について、前日の15日に「調整中」との報道が流れると、東京株式市場で楽天グループの株価は始値728円から急落し、一時11.5%安まで下落、終値は643円で前営業日比9.05%安となった。さらに17日には一時600円を割った。
ちなみに前回、第三者割当で2,400億円を増資した2021年3月には、増資のための日本郵政との提携を発表した3月12日から株価が急上昇し、一時、15年以来となる1,488円まで上昇した。当時の増資と提携に対しては、市場の期待があったわけである。
一方、今回の3,300億円規模の増資に対して市場は、財務基盤の強化よって将来的な収益力強化が見込まれるとの期待感よりも、増資によって1株の利益が希薄化するとの意識が先行し、株価が急落したかたちである。要するに、これまでの楽天の業績と経営に対する増資を、市場はまったく評価していないわけである。
無論、「今まで通りやります。だからお金ください」では、誰も金を出すわけがない。そんなことは楽天も分かっている。だから今回の増資は、21年の増資とは意味合いがだいぶ違う。むしろ、楽天モバイルの新規参入ドラマもいよいよ佳境に入ったことを知らせる覚悟の幟旗なのであり、命運をかけた最終カンパの呼びかけなのである。
その理由を以下で解説する。
増資の中身に覚悟のほどを見る
発表によれば、増資のうち公募分は約4億6,810万株で2,800億円規模。第三者割当分は約7,879万株の470億円規模で、(有)三木谷興産と(有)スピリットがそれぞれ約2,814万株ずつ、その他、サイバーエージェントと東急にそれぞれ約1,876万株と約375万株を割り当てる。
三木谷興産とスピリットは、それぞれ三木谷氏の子女の資産管理会社であるが、この2社への割り当てについては、「当社代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏より、自らとしてもかかる強固な財務基盤構築の一翼を担うべきとの決意」に基づく申し出があったという。21年3月の増資時にも三木谷興産とスピリットに対してそれぞれ約436万株(約50億円規模)を割り当てているが、その際には両社が「長期的に保有する方針」という程度の説明であったものが、今回は三木谷氏の自腹を切った決意表明となった。前回、日本郵政に1,500億円を出資させた手前、今さら感もないではないが、感心すべきはそこではない。
問題は調達される3,300億円の使途である。いずれも年内の使途で、社債償還用として780億円、コマーシャルペーパー償還用として540億円、楽天モバイルへの投資資金として1,883億円である。楽天モバイルへの投資内訳は、400億円を第4世代移動通信システム(4G)および5Gの基地局などに係る設備投資とし、1,483億円を運転資金(端末購入資金、顧客獲得に関する費用およびローミング費用等)として充当予定としている。償還費の1,320億円にも感心するが、覚悟のほどがうかがえるのは、設備投資費が400億円であるのに対して、1,483億円をローミング費用等の運転資金として明示していることだ。ちなみに、21年3月の増資時の説明では、2,400億円全額の使途が4Gおよび5Gの基地局などに係る設備投資としていた。
今回明示された運転費用のうちローミング費用がどの程度の割合を占めることになるかは分からないが、次に示す通り、ローミングの利用効果の成否が、楽天モバイルの命運を握っている。
楽天モバイル、「最強(2流)プラン」の意味
KDDIは11日、楽天モバイルとの新たなローミング協定を契約したと発表した。新協定ではローミングサービスの提供対象エリアとして、新たに東京都23区・名古屋市・大阪市を含む都市部の一部繁華街が追加され、さらに契約期間を26年9月まで延長すると発表された。
楽天モバイルは12日、新ローミング契約を背景に、6月1日から「Rakuten 最強プラン」と銘打つ新プランを提供すると発表した。料金は従来プラン通り月3,278円を維持し、自社回線に限られていた通信量無制限を、最大5GBに制限されていたKDDIのローミングサービス提供エリアまで拡大するという。
この新プランによって楽天モバイルは、ついに既存3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)と肩を並べて、文字通り「通信量無制限」のサービスを提供できるようになったのである。しかも既存3社の通信量無制限プランは月額7,000円台であるのに対して、楽天モバイルは半額以下だ。
だが、このサービス提供で1つ、重要な点がある。それは、ローミングサービスを利用しての通信量無制限は、決して既存3社と同じ品質にはなれないということだ。
(つづく)
【寺村朋輝】
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