2024年11月05日( 火 )

相次ぐアメリカの銀行破綻:国家破綻を防ぐ方策は?

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、5月26日付の記事を紹介する。

ドル紙幣 イメージ    このところアメリカでは大手銀行の破綻が相次ぐようになりました。シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、シルバーゲート銀行と破綻の連鎖です。日本では馴染みが薄いかも知れませんが、シリコンバレー銀行の総資産は2,090億ドル、シグネチャー銀行は1,103億ドルと、日本でいえば大手地銀に匹敵します。

 思い起こせば、2008年に証券大手のリーマン・ブラザーズが経営破綻し、世界的な金融危機が発生しました。「その再来になりかねない」と新たな懸念が世界に広がっています。

 事態を重視した米財務省と連邦準備制度理事会(FRB)は「すべての預金を保護する」と発表しました。バイデン大統領も緊急声明を発表し「アメリカの金融システムは盤石だ」と強調。

 しかし、盤石なら連鎖倒産など起きないはず。背景にあるのはFRBの急速な利上げと言われています。市場金利が急上昇し、債権価格が急落したことは否めません。

 実は、シリコンバレー銀行もシグネチャー銀行も融資先の大半は新興IT企業です。しかも、その大部分を占めているのは中国企業に他なりません。そのため、中国系のメディアによれば、「中国のスタートアップ企業やベンチャーキャピタルの間ではパニックが起きている」とのこと。言い換えれば、今回破綻したアメリカの銀行は米中間の金融橋渡しの役目を担っていたわけです。

 FRBが「預金の保護」という措置に踏み切ったのも、バイデン大統領が3期目に突入した中国の習近平国家主席との首脳会談に意欲を見せていることが影響したと思われます。富士山の地下のマグマと同じように、アメリカ政界の深層部でも「中国マグマ」が火を噴く可能性が高まっています。

 と同時に、アメリカでは中央銀行にあたるFRBの債務不履行の可能性が取りざたされるようになってきました。先に広島で開催されたG7サミットにも、バイデン大統領は対面での参加がぎりぎりまで危ぶまれていたものです。

 その理由も議会共和党との連邦政府の借入額の上限引き上げをめぐる意見の対立でした。バイデン政権は上限を外さなければ、この6月1日にもアメリカは債務不履行(デフォルト)に陥りかねないと危機感を露にしています。

 他方、共和党は歳出削減を優先すべきで、現状のような無制限の借り入れを認めてしまえば、アメリカ経済は破綻し、世界から信用されなくなる、との立場です。「デフォルト」となれば、信用不安が巻き起こり、アメリカの国債やドルの価値が失われることにもなります。

 そのため、世界の投資家の間では、すでにドルを手放し、金や銀、あるいはレアメタルや不動産など現物への乗り換えを加速する動きが見られようになってきました。もちろん、ただちにアメリカが国家破綻するわけではありませんが、アメリカの金融政策に不信感や不安感が広がり始めていることは間違いありません。

 アメリカの表向きの財政赤字は32兆ドルと言われていますが、実際は200兆ドルを突破している模様です。連邦議会予算局の見通しでは、2040年までに税収の100%が高齢者向けの社会福祉に向けられることになるとのこと。

 ということは、2040年までにアメリカは国家破綻という危機的状況に直面するということです。連銀は今後も金融引き締め策を取るでしょうが、このピンチを回避する方策が財務省保有の金の評価額を現在の1オンス42ドルから実勢価格の2000ドルに変更することにあるとの見方が出てきました。いずれにせよ、金価格が上昇する流れはまだまだ続くと思われます。

 そんな中、この5月19日、中国の山東省では史上最大の金の鉱山が発見されたとの報道がありました。今後30年にわたり、毎日1万トンの金を産出できるようになるとのこと。中国が対米交渉で強気になるのも理解できます。


 次号「第343回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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