照ノ富士 日本人の腹黒さを知る
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優勝10回は達成すると宣言
横綱・照ノ富士と4月半ば、友人Aの東京事務所でバッタリ会った。秋場所途中で休場、そして3場所全休途中のときのことだ。「少し体が細くなったかな」という印象を抱いた。「横綱!今、優勝7回ですね。あと3回、必ず栄冠を握って優勝10回を勝ち取ってくださいね」と約束を迫った。「必ずやりますよ」と力強く約束してくれた。「できるなら九州場所までに達成してください」と迫ったが、笑って即答をしなかった。
この夏場所は満を持して土俵に望んだ。手術後の体調と向き合いながら日々の土俵である。本人も糖尿病との闘いを公にしているが、節制し続けなければならなず、苦しいのである。ただ、場所は足の動きが滑らかで「前に前に」と攻め込んでいった相撲が多かった。やはり攻め込めばまだまだ照ノ富士に力でるはいない。14日目にして久しぶりの栄冠を手にした。おめでとう!
天国から地獄へ
生意気盛りで怖いも知らずの照ノ富士が、内に這い上がってきた時期のこと。「あー!白鵬に迫る怪童が現れた」と叫んだ。まずは体が柔軟、懐が深い。組んで相手を圧倒していくパワーには素人の筆者でも恐れ慄いた。素人の勘もたまには当たる。2014年3月に入幕をはたすと、8場所となる27年7月名古屋場所には大関に昇進した。「白鵬をしのぐ大物」という評価を得て照ノ富士の周囲にはいろいろな応援者が群がった。
ところがだ。体調悪しというか膝の故障が災いした。種々の手術も行ったが、土俵を踏むのも容易でなく大関から陥落してしまった。ここからが照ノ富士の相撲転落が待ち構えていた。まさしく「天国から地獄へ」へ落ち込んでいったのである。ここで横綱は「人間の本性、社会の卑劣さ」を思い知ったのである。
車を引き揚げられる体験
相撲業界の支援者のことをタニマチという。通常の表現でいえばスポンサーである。勢いに乗じてきた相撲取りの贔屓になってさまざまな支援をすることで喜びを得る連中が照ノ富士に群がってくる。食事に誘うことから始まり金品などプレゼントの応酬を繰り返す。新大関が有頂天になるのは戒められるものではない。
大関転落から始まって幕内、十両に転げ落ちていくと周囲の群がっていた贔屓者たちが一瞬にして消えていった。この消滅スピードには本人が驚愕している。一番、驚き呆れたのは「運転手付きで車を提供していた」スポンサーから一夜にして車を回収されたことである。「弱くなれば支援が閉ざされる。責任は自分にある」と、照ノ富士自身は承知しているのであるが、やはり釈然とはしない。「横綱になって裏切者たちはまた近づいてきているのか?」と質問を投げかけてもニタニタ笑って黙して語らず。
相撲協会に貢献する
照ノ富士には「自分の現役活動期間が長くないこと」を認識している。九州場所までには10回の栄冠をつかむ確信をもっていることは間違いないし達成するであろう。2年後には現在の伊勢が浜部屋を継承することが決まっているそうだ。日本人の腹黒さを身に染みて体験した横綱は、社会経験を踏まえて引退後も本人らしい相撲協会貢献が期待できるであろう。
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