2024年12月27日( 金 )

北九州市新ビジョンの委員会説明が12月に延期

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 2月の北九州市長選挙以降、武内和久市長と市議会の間で続くしこりは解消されず、ついに市議会の説明・審議が延期される事態になっている。

委員会の1時間前に素案が公表

北九州市役所 議会棟    10月下旬に予定された自民党会派や旧民主系会派との会合の急な出席のキャンセル(「武内北九州市長、自民党会派との予算要望の場を急遽欠席(1)」)が行われたなか、今度は武内市長のもとで策定された北九州市新ビジョンの素案が、委員会開始1時間前に届く事態が起きた。

 当日(11月22日)の午前10時から委員会が行われるにもかかわらず、「1時間前に委員に完成版としての素案(21日午後5時時点の案から修正されている)が届いた」(村上さとこ北九州市議SNSより)という。今後の北九州市の方向を打ち出す重要なビジョンの中身を十分把握しないままでは、委員会で議論ができない。

 委員会の開催は10時からであり、1時間前に届いても内容を精査し検討する時間はない。12月から1カ月間は市民からのパブリックコメント(以下、パブコメ)の公募期間であり、パブコメの募集中に委員会の審議を行って、議会の意見は反映されるのだろうか。

 所管の総務財政委員会の委員長を務める佐藤栄作北九州市議(自民党)は、自身のXで次のように取り上げている。

「新ビジョンは市の最上位計画であり市民の関心も高く、慎重に議論をすべき重要な案件です。丁寧な説明が求められます。そして素案を読みましたが、向かう都市像やありたい姿が抽象的でよくイメージが出来ない印象を持ちました。どうも精神論的で具体的なミッションが見えません。

 それから市政変革についての報告の中で、市政変革を進めるための具体的手段のひとつとして『市長が総合調整するために活用できる財源を確保する仕組み』とありました。これが何を意味するのか分かりません。このような不可解な事柄については厳しく指摘をしていきます」

新ビジョンは福岡市の二番煎じ?

 公開された「北九州市新ビジョン」の素案を見ると、「『稼げるまち』の実現~人も企業も潜在力を開花できるまち~  「彩りあるまち」の実現 ~輝く個性と楽しさがあふれるまち~ 「安らぐまち」の実現」といった項目が並んでいる。

 全国の自治体において同種の計画で類似の文言がよく並ぶが、北九州市内総生産の1割増を目指すべく打ち出された基本計画の具体的なプランに「スタートアップの創出・成長」がある。

 福岡市の高島宗一郎市長が2012年に「スタートアップ都市宣言」を行い、14年には国のグローバル創業・雇用創出特区に指定され、スタートアップ法人減税などの支援策が展開された。武内市長も福岡市に倣って、起業家精神をもった人材の育成や創業支援をと意気込んでいるようだ。

 このこと自体は悪くない。何事にも受け身な姿勢の人が少なくない日本において、新しい事業を創造することや、リスクに挑戦する姿勢を育てていかなければ、弛緩した組織風土は改善されないというのはその通りだろう。

 だが、日本に限らずグローバル化というものは、アメリカ型金融資本主義の在り方に追従するものであることが少なくない。政策を実行していくには、人口減少が続く北九州市の実情を踏まえたものにしなければならず、そうでなければ絵に描いた餅になってしまう。

 今回のドタバタ劇に委員長の佐藤市議も、担当局長に強く抗議したという。結局、新ビジョンについての審議は12月8日に変更となった。来年1月にパブリックコメントを実施し、2月に最終案を議会に提出するというが、この状況ではいかにも心もとない。

西日本新聞は武内市長に迎合

 不可解なのは、「西日本新聞」の報道姿勢である。武内市長の手法を「武内流」と名付けて、誉めそやすような報道が目立つ。対して、北九州エリアで最大の販売部数を有する毎日新聞は、「北九州市長、議会ときしみ 会派の予算要望、延期や急きょ変更」(11月13日)との見出しで、市長と議会の関係について伝えている。

 毎日新聞の報道姿勢からは、市民の知る権利のために伝えるべきことを伝えようとする姿勢がうかがえる。

 福岡市もそうだが、政令市の市長は一般市町村より権限が大きく、メディアを通じた情報統制を行い、市政運営や次の選挙を有利にしようとする向きがある。記者クラブに加盟する報道機関は、自社だけ知らされないことを恐れ市の執行部に迎合しがちだ。だが、報道機関が市長という権力者に阿って、報じるべきことを報じないのはいかがなものだろうか。

【近藤 将勝】

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