2024年11月05日( 火 )

【トップインタビュー】10年先を見据えた事業戦略で躍進するコングロマリット~メガソーラー、ホテル、人材戦略の展望~

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芝浦グループホールディングス(株)
代表取締役社長兼CEO 新地 洋和 氏

 建設、不動産、太陽光発電、ホテル、農園経営などグループで多くの事業を行う芝浦グループホールディングス(株)。新地洋和・代表取締役社長兼CEOを中心とした新体制は2年目を迎えた。社内の体制を整えつつ、激動の時代、多業種を率いる新代表はどのような企業の未来を描くのか。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長 児玉 直)

将来を見据えた事業の再構築

芝浦グループホールディングス(株) 代表取締役社長兼CEO 新地洋和 氏
芝浦グループホールディングス(株)
代表取締役社長兼CEO 新地 洋和 氏

    ──グループとしてさまざまな事業を展開していますが、これから重視される事業は何でしょうか。

 新地洋和氏(以下、新地) 現状として当社グループの収益を支える一番の柱は不動産事業です。これからも同事業が当社にとって重要な事業であることは変わりありません。しかし、中長期の収益を考えると、メガソーラーも重要な事業の1つではないかと思っています。2012年に始まって太陽光発電の普及を支えてきた「固定価格買取制度(FIT)」が8年後には20年を経過します。当社のメガソーラーからも適用期間終了を迎えてFITを卒業する発電所が出てくることになりますが、これらの発電施設をどのように収益化していくかが大きなポイントになります。

 ──メガソーラー事業の現状について教えてください。

 新地 当社のメガソーラー事業は12年に第1号を稼働して以来、多くの発電所の開発を行い、総出力量は115MWにおよびます。FITは申込をした年度によって電気の買取価格が決められる仕組みとなっており、20年間は同額での買取が保証されます。32年、第1号のメガソーラーがFITを卒業しますが、その際に発電所が売電していた電力も契約がいったん終了します。

 FITを卒業するメガソーラーが次から次へと出てくるわけですが、それらをどのように収益化していくのかということがメガソーラー発電事業者にとって大きな課題です。これは国のエネルギー政策としても重要で、数年以内に国としておおよその方針が決まってくるのではないかと思われます。

 ──FIT卒業後戦略のポイントは何ですか。

 新地 メガソーラーを30年、40年と長寿命化させて、再生可能エネルギーを必要とする需要家へいかに供給していくのかがビジネスとして問われると思います。FITを卒業した発電所は20年経過して、銀行からの借り入れもすでに返済が終わり、会計上の償却も全部終わっています。そのような発電所が、そこからさらにどれくらいの期間運用が可能で、どれくらいの収益を上げることができるかという点でメガソーラーの資産価値は大きく変わります。

 ──メガソーラーの寿命はどの程度なのでしょうか。

 新地 メンテナンスを適切に行えば、基本的に40年はもつと考えています。1番コストがかかるのは半導体の塊であるパネルです。パネルが経年劣化で少しずつ壊れていくことなどにより発電出力が低下します。1年で最大0.5%程度、20年だと最大10%出力が低下することになります。FIT卒業時にはまだ90%の発電能力を保持しているわけですが、壊れたパネルだけを1枚ずつ交換してこまめにメンテンナンスをしていけば、20年後の出力低下は10%より低く抑えることができます。パネルは全部が一度に悪くなることはなく、またメンテナンスは地上で作業ができます。比較的安価な作業費用で発電能力を維持できることはメガソーラーの優れた点だと思います。

 メガソーラーを構成するパーツのなかで、パネルに比べて寿命が短いのはPCSです。PCSは直流の電気を交流に変換するインバーターで、耐用年数はおよそ10~15年と言われています。PCSの価格も建設当初に比べてずっと安価になっているので、メンテナンスのコストは抑えることができると考えています。

メガソーラー事業の転換期

 ──FIT卒業後の展開はどのように考えますか。

 新地 メガソーラーが生み出す電気には、単純に電力としての価値だけでなく「再生可能エネルギー」としての環境的な付加価値があります。国が目標として定めた『2050年カーボンニュートラル実現』のために再生可能エネルギーの需要は年々高まっていますし、九州に根差した企業が九州でつくられた電力を求めるといった、電力の地産地消が近年注目されています。

発電出力33MW「九州ソーラーファーム45山口地区 厚狭発電所」
発電出力33MW
「九州ソーラーファーム45山口地区 厚狭発電所」

    当社は21年に稼働した山口県の厚狭発電所(33MW)を最後に、新規開発をストップしていました。しかし、このような社会の大きな流れを汲み、新たに福岡県内でメガソーラーの建設を検討しています。FIT卒業後のメガソーラー事業を想定して、この新規の発電所は当初からNon-FITで運用することを視野に入れています。10年後の販売戦略を考えるうえで、Non-FITの買取単価がどの程度になるかはとても重要です。当社としては、先行的にNon-FITの発電所を運用してビジネスノウハウを蓄積することを計画しています。

 また、当社がメガソーラーを重視する理由がもう1つあります。それはこれからの時代避けられない人材不足の問題です。メガソーラーは運用を工夫すれば人材コストを抑えて収益化が可能な事業です。除草作業や計測点検など、メガソーラーの運営管理には人の手による定期的なメンテナンスが不可欠ですが、維持管理コストを抑える仕組みを構築することによって、人材リスクに晒されにくい事業部門として、グループを支える貴重な収益の柱に育て上げていきたいと考えています。

人材不足時代に挑むホテル事業の戦略

 ──ホテル事業も行われていますが、人材戦略が重要なポイントになりますね。

 新地 ホテル事業は人材問題への対策で大きな変革が求められています。当社には現在、直営ホテルが9つ、外部へ貸しているホテルが2つあります。ホテル事業はコロナ禍で大打撃を受けて運営的に厳しい時期もありました。

 将来的に人の手によるサービスが非常に高価になる可能性があります。当社の一部ホテルでは以前、宴会場の運営も手がけていましたが、宴会の外注スタッフを手配する派遣会社も人員確保に苦慮しています。そのような時代において、採算性とお客さまの満足を同時に追求するためには、DXがカギとなります。DXを巧みに活用し、少数精鋭で運営できるホテルの仕組みを構築することが非常に重要です。

 当社のホテル運営については、一部に宿泊者向けの飲食店舗を維持しつつ、基本的には宿泊に焦点を当てたスタイルに特化することを進めています。現在、9つの直営ホテルのうち8つのホテルで順次改装工事を行っており、宿泊者がセルフサービスでコーヒー、アルコール、一部ホテルではソフトクリームなどを無料で利用できる「宿泊者専用ラウンジ」を設置しています。この宿泊者専用ラウンジは、導入したホテルにおいて大変ご好評をいただいていますが、すべてセルフサービスですので、人の手が必要なのは機械のメンテナンスだけです。このように、いかにホテルスタッフの負担を抑えながらお客さまの満足度を向上させるか、ということが重要だと考えています。

 また、お客さまの視点に立ち、あったら嬉しいと思えるサービスを提供するためには、気づきの感覚が大切です。たとえば、直営ホテルの全客室にエアウィーヴの「マットレスパッド」を導入しました。お客さまの心地よいホテルステイのためには、睡眠の質にもこだわる。そんな1つひとつの積み重ねで、ホテルニューガイアスタイルを確立していきたいですね。

 ──ホテル事業の拡大は考えられていますか。

 新地 新規のホテル建設も含めて、積極的な展開を検討しています。

キウイ農園からスーパーカーまで

 ──農園も経営されていますね。

 新地 17年に新規事業としてゴールドキウイの栽培をスタートし、年々成長し続けています。キウイは定植から初めての収穫までに約4年がかかりますが、その後は毎年収穫できるようになります。収穫量は順調に増えており、23年秋は17園地(総面積35.2ha)のうち10の園地で合わせて213tのキウイを収穫しました。また、キウイは出荷の際に一部の規格外品が出てしまいますが、フードロスの観点からもこの規格外品をどうにかしたいと思い、二次製品化も計画しているところです。

 ──スーパーカーイベント事業はいかがですか。

 新地 昨年「メガスーパーカー展2023」を芝浦グループ本社ビル10階スカイホールにて開催しました。これは17年から3回開催した「メガスーパーカーモーターショー」の新たなかたちで、新型コロナウイルスの影響もありましたので、実に4年ぶりのイベント開催となりました。
 メガスーパーカー展は、コロナ禍でどこにも行けなかった子どもたちに再びワクワク感を提供し、笑顔を見たいという思いから始まっています。「子どもたちに夢を!」という前会長の強い想いを引き継ぎ、今後もこのイベントを定期的に開催していく予定です。

グループ12社が集結する「ザ ニューガイア ビルディング 天神北」
グループ12社が集結する
「ザ ニューガイア ビルディング 天神北」

    ──先ほども、これからの時代は人材戦略が重要という話がありましたが、御社の戦略としてどのように考えますか。

 新地 仕事のやり甲斐や内容も重要ですが、当社で働くことそのものの魅力もアピールしていかなくてはならないと思っています。具体的には社員の福利厚生や待遇を改善して、社員にとってより魅力ある会社にしていくことが重要だと考えています。その仕組みをしっかりつくって、社内に具体的なメッセージとして伝えていきます。

 実際に、昨年12月に行われた芝浦グループ総会では、給与のベースアップと確定拠出年金導入について私自身の言葉で全社員に説明しました。また当社には10年、20年、30年と勤めてくれている社員がおりますので、その方たちに会社として感謝の意を示したいと思い、永年勤続表彰も行いました。このような取り組みは、会社が社員のために「働きたい職場づくり」を実現する決意を伝える、重要なメッセージの1つです。

 当社は不動産、メガソーラー、ホテルなど多業種にまたがって事業展開しています。不動産を核としながらも、FIT卒業後のメガソーラー事業、新しい時代の収益化に取り組むホテル事業と、さまざまな事業を行う業種複合企業体としての強みがあります。しかし、企業として事業を継続的に行うには人材が不可欠です。

 事業戦略と人材戦略の双方に取り組むことによって、地域と社会、そして従業員たちにとっても希望のある企業体を実現していきたいと考えています。

【文・構成:寺村朋輝】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:新地洋和
所在地:福岡市中央区那の津3-9-1
設 立:2009年3月
資本金:7億450万円(資本準備金を含む)
売上高:(23/7単体)62億5,508万円


<プロフィール>
新地洋和
(しんち・ひろかず)
1979年生まれ。福岡県北九州市出身。2002年、芝浦特機(株)入社。(株)ニューガイアおよびニューガイアエナジー(株)代表取締役を経て、17年、芝浦グループホールディングス(株)代表取締役社長就任。22年10月、同社代表取締役社長兼CEO就任。

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