2024年07月16日( 火 )

参議院と八女市長選挙に二股かける?~立憲・野田国義氏の戦略(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 2009年の政権交代選挙以来となる野党への期待が高まる中、4月末の衆議院3補選、5月の静岡県知事選挙と野党第一党の立憲民主党は、不戦敗も含めて連勝を重ねている。福岡においても、次の議席をめぐって駆け引きが繰り広げられている。

3選への道か、市長選か

 3月9日、参議院福岡選挙区(改選数3)で2期連続当選している立憲民主党の現職・野田国義氏が、3選を目指して立候補する意向を表明した。

定期的に開催されている同党の常任幹事会の後に、集まった報道陣に対して明らかにしたものだが、翌日の西日本新聞などが報じた。

だが、野田氏の地元・福岡県八女市では、額面通りには受け止めた人は少なかった。

 ある八女市議会議員は「上手ですよ。新聞に書かせて。もし参議院がだめなら、八女市長選に出るシナリオではないか」と語った。

 野田氏は、1993年、34歳で八女市長選挙に無所属で出馬し、初当選した。全国最年少市長として「八女のクリントン」と呼ばれた。その後4期15年8か月にわたり市長を務めている。

 2009年に、市長を辞職し、国政に転じてからも、地元の八女市を中心に県南に基盤を置いてきた。現在でも、八女を中心に熱烈な野田氏の支持者がいる。かつて野田氏が秘書として仕えた古賀誠元自民党幹事長とは、疎遠どころか、選挙でも骨肉の争いを繰り返し、市長時代も対抗馬を擁立されたこともある。

 野田氏自身、様々な思いがある八女に愛着があるからだろう。福岡市にあった事務所を閉鎖し、八女市内に福岡事務所を置いている。

当選が目的か、初心の志か

 ただ、そうした思いを同じ党の誰もが理解しているわけではなく、福岡都市圏や北九州はどうなるのかという声がある。野田氏に代わる人を国政に送りたいという声が出てくる。

 公平を期したいので、述べておくが、現職県議や市議の中にも野田氏に近い議員もいる。そうした方々は「野田先生にお世話になってきた」と語る。決して面倒見が悪いのではないのだろう。野田氏を慕う地方議員は、若手に多い。党員拡大も野田氏が増やした数は多かったという。

 一方で、立憲の前身、旧民主党の慣例では、「3期はない」と同党時代からの関係者は語る。

 自民党の長期政権をみてもわかるように、長く政治をやっていると、いろいろな綻びが出てくる。当選した頃の青雲の志は、いつのまにかどこかへ行ってしまい、当選することが目的になってしまう。これは与野党問わない。そうなると、そろそろ交代させるべきだという声が出る。

 そうした風当たりがある中で、野田氏は、今回、自身の秘書を、地元八女市などを選挙区とする福岡7区から立候補させる決断をした。だが、一番慎重にならなければならない「身体検査」にぬかりがあったのだろうか。この野田氏秘書はかつて市議を務めていた時代に、「社会的に問題のある団体」との関係があったことが取り沙汰されている。

 ところで、野田氏について、ある関係者は「秘書擁立は、野田氏の焦りではないか」と指摘する。参議院3選が、県連の中でもし難しくなった場合、もう一つの選択肢があると指摘するのが、先述の市議らである。

 11月に八女市長選挙が行われるが、現職の三田村統之市長は、5月8日で80歳を迎えた。三田村氏ではあまりにも高齢すぎるとして、一部の関係者は次期市長をめぐって、若手官僚が立候補する準備を進めているという。もし、参議院が厳しいのであれば、野田氏は状況を見ながら市長選に打って出るとの見方が、八女市内を中心に広がっている。

 秘書を地元選挙区から出すという情報を出すことは、野田氏にとって、事前運動的な効果をもつ面がある。まだまだ野田氏の知名度は、八女では高い。もしもの際に、市長選に転じることも可能だ。

 二股をかけるようなことは、よもやないと思うが、政治の世界は、なんでもありが現実だ。有権者もしっかり注視していく必要がある。

【近藤 将勝】

政治・行政記者募集

 企業調査会社(株)データ・マックスが手がける経営情報誌『I・B』やニュースサイト「NetIB-News」は、信頼性の高い情報ソースとして多くの経営者にご活用いただいています。メディアとしてさまざまな情報を取り扱っており、国内外や地元福岡の政治動向に関する情報は経営者以外にも自治体組長や国会議員、地方議員などに幅広く読まれています。

 そこで、さらなる記事の質の向上を目的に、福岡の政治・行政、また中央政界の動向などをテーマにオリジナル記事を執筆いただける政治・行政記者を募集しております。

 記事の内容は、インタビュー、政局や選挙などを中心に扱います。詳しくは掲載実績をご参照ください。

 企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。現在、業界に身を置いている方や行政取材に興味がある方なども大歓迎です。

 ご応募いただける場合は、こちら(hensyu@data-max.co.jp)まで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点などがございましたらお気軽にお問い合わせください(返信にお時間いただく可能性がございます)。

(2)

関連キーワード

関連記事