中国企業が東南アジアへ進出加速
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中国企業がこのところ、続々と東南アジアに工場を設けている。当初は人件費の節約や関税の回避が目的だったが、今は大口取引先を狙う「追随進出」や、サプライチェーンを利用しての中国国内の生産支援を主眼とするようになり、新たなビジネスモデルや成長の場を生んでいる。このような変化で、各社ともグローバル化戦略における新たなバランスを見出している。
老舗の家電メーカーで欧米中心の輸出を手がける「邦沢創科」の徐寧会長は、6年前に貿易摩擦対策としてベトナムに工場を構えてから、次第に「恩恵」を被るようになった。工場の稼働で販売チャネルがすぐに拡大した上、注文品もメインであった事務用機器からキッチン家電や金具類などへと拡大していった。広東省東莞に本社と中国の製造拠点を置き、ベトナムと東莞の工場の生産を支えるべく東莞とハノイの間にある広西チワン自治区の玉林に主要部品の製造場所を構えるかたちで、「3カ所一直線」という供給体制を敷いている。ベトナム工場のおかげで新たな注文や海外ユーザーが生まれ、これらが中国国内の主力部品の生産拡大につながっており、国内の生産やラインナップ拡大へのパターンにもなっている。
新興EVメーカーである哪吒汽車(Neta)は、現地市場を狙って東南アジアに工場を建設した。2022年から「ASEAN掘り下げ、南米進出、中東・アフリカ開発」との戦略を打ち出し、タイ、インドネシア、マレーシアに相次ぎ工場を建設した。タイでは2023年11月末に稼働し今年3月から本格生産体制に入り、マレーシアでは今年1月に現地合弁で3カ所目の工場の着工式を行い、2025年に本稼働の予定である。また今年5月31日、インドネシアのEVメーカーがCKD(コンプリートノックダウン)により現地で哪吒の最新車種の基本組み立てを始めている。
哪吒は、東南アジアでの工場建設はサプライチェーンの多角化であり、地政学的な衝突や関税問題などによるサプライチェーンの悪化というリスクを下げるものと見ている。また中国企業にとって、市場拡大をする大切な道のりでもある。人口6億人以上の東南アジアは自動車市場が急成長期に差しかかっており、現地に工場を構えれば間近で役務対応ができるようになるほか、諸外国の市場の開拓にも有利である。
ただし東南アジアはビジネス上、狙い目ではあるがリスクも無視できない。中国の潤滑油専門メーカー「安美科技」の汪小竜会長は、「中国企業が海外進出するには人手やパワーが必要だ。まずは取引相手や競争力をはっきりさせ、現地での市場展開がメインならインドネシアが最適で、製造自体が目的ならタイやベトナムが適切だろう」と述べている。
また邦沢創科の徐会長は、海外進出では人材をめぐる争いがとくに強烈だと見ている。中国語堪能で会社の運営に長けたベトナム人社員の養成がカギとなるが、多くの企業が進出することで人材獲得競争も激化し、人集めのため賃金倍増などという事態も出ている。また、現地の法律を守ることが大切であり、「とくに就労や環境対策などは、法に従ったうえで現地の文化も尊重しなくてはならない」と強調している。
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