日本製鉄と宝山鋼鉄が「熟年離婚」した理由(後)
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EV産業が急速に拡大している中国で、ガソリン車が中心である日系車のシェアはここ数年、じり貧状態である。中国乗用車連合会によると、2021年以降の3年間、日系車シェアは順に22.6%、20%、17%であり、さらに今年上半期は14.9%、なかでもトヨタ、ホンダ、日産の大手3社が販売台数を20%以上も落としている。現在、三菱自動車がすでに中国撤退を発表している上、日産も中国の工場の一部を閉鎖し、ホンダも早期退職者を募集する、中国から敗走する姿が鮮明になっている。
日本製鉄はこれを受け、自動車用の鋼材の生産を次第にアメリカやインドにシフトさせるなど、事業の見直しを進めている。
2つ目の理由は、アメリカ側にある。
日本製鉄は2023年12月、USスチールを2兆円(約940億元)で買収する計画を発表したが、これがアメリカの議員に反対された。 民主党のシェロッド・ブラウン上院議員は今年4月、バイデン大統領に対し、日本製鉄の中国事業について経済の安全といった角度から、「宝山鋼鉄の建設支援をしたうえに合弁企業を設立しており、中国政府と切っても切れない関係にあると見られる」と、買収に反対する書簡を提出した。USスチールが日本製鉄に買収されれば中国にプラスになるというのである。
これに対して日本製鉄は6日、「確かに宝山鋼鉄とともに自動車用鋼板を生産してはいるが、中国からアメリカヘの輸出はない。中国事業の占める割合はごくわずかだ。中国の軍需産業を支援しているなどという報道は事実無根だ」との声明を発表した。
アメリカ政府は現段階で、この買収案件を許可していない。
3つ目の理由は、中国鉄鋼メーカーの技術力の高さである。
中国は日本との提携を通じ、宝山鋼鉄という世界最大の鉄鋼メーカーを生み出したほか、日本製鉄との合弁で高級車用の鋼材を製造する技術を手に入れた。2023年の粗鋼生産量は世界全体の53.9%にあたる10億1,900万tである。この数字は、鉄鋼の生産における世界的な地位を示したものであるほか、中国鉄鋼業界の規模や競争力を表すものでもある。中国メーカーはまた、長年にわたる成長や独自の研究開発を経て、さまざまな分野や品種を海外品から置き換えた上、多くの良質な製品を海外に輸出している。
中国の鉄鋼業界では今、勢力地図でいえば日本製鉄はすでに指導役から一介のパートナーに変わっている。財聯社の取材に対する宝山鋼鉄の関係者の回答のごとく、さしたる存在でない日本製鉄が合弁から撤退してもさほど影響はないのである。
ただこの「熟年離婚」は、日本では随分と話題になっており、経済や技術面で中国とともに歩んできた努力の道のりに 「黄色信号」がともり始めた、と見られている。 日本製鉄と宝山鋼鉄の手切れ、それは時代の流れとして当然ではあるが、少し寂しい。
(了)
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