【連載】コミュニティの自律経営(53)~もやい九州・節目のメッセージ

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 元福岡市職員で、故・山崎広太郎元市長を政策秘書などの立場で支えてきた吉村慎一氏が、2024年7月に上梓した自伝『コミュニティの自律経営 広太郎さんとジェットコースター人生』(梓書院)。著者・吉村氏が、福岡市の成長時期に市長を務めた山崎氏との日々を振り返るだけでなく、福岡県知事選や九州大学の移転、アイランドシティの建設などの内幕や人間模様などについても語られている同書を、NetIBで連載していく。
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<もやい九州設立15周年と「もやい九州@東北被災地ツアー」に寄せて/2017>

 2002年4月13日に産声を挙げたもやい九州も、早15周年を迎えました。

 もやい九州は「大人の部活」をモットーとして、「この指止まれ」を行動原理にさまざまな活動に取り組んできました。なかでも、東日本大震災の発災以来、三陸地域を中心に毎年続けてきた東北被災地ツアーは特筆すべきものです。

 もやい九州と被災地のつながりは、震災直後の2011年3月に遡ります。一関市在住・元岩手県庁の今泉さんからの「ロウソク、単一乾電池、下着が足りない!」との支援要請に、もやい九州のメンバーが応え、その後の老舗醤油・八木澤商店の支援活動に発展していきました。震災翌年の2012年には、もやい九州設立10周年記念事業として、三鉄ツーリストの「三陸被災地フロントライン研修」を活用して、23人が参加し、もやい九州の東北被災地ツアーが始まりました。

 毎年訪ねていくごとに、東北各地の人々とのつながりは広がり、東北地方の雄大な自然、豊かな風土や食への愛着も深まって行きます。いつの間にか、九州から遠く離れた東北の大地が第二のふるさとのような気持ちさえ生まれてきたように思います。復旧から復興へ、復興から創生への道のりはこれからも続いていきます。2012年にお会いした陸前高田市の戸羽市長からの「被災地を忘れないでください」とのメッセージを胸に、これからも東北の地を訪ね続けたいと念じます。

<もやい九州20周年/10回目の東北ツアーに寄せて/2022>

 2002年4月13日に産声をあげたもやい九州、今年設立20周年を迎えています。人間で言えば、成人式なのですね。

 振り返ると、今年古稀を迎えた僕は、当時ちょうど50歳。「天命を知る」節目の年でした。その年の誕生日のことをよく覚えています。その日は、もやい九州の母体でもある行政経営フォーラムの例会が東京で開催されており、僕は福岡市のDNA改革をテーマに登壇していました。終了後の交流会で参加者の皆さんが、誕生祝いをしてくれたのですが、その場でマイクを向けられた僕は「(自治体)改革を自分の天命とする」と宣言したのでした。その当時、僕はまさに自治体改革のど真ん中、フロントランナーとして渦中にあったし、職業人として絶頂期にあり、今思い起こしても実にパワフルだった、と思います。が、すぐに挫折も待っていました。3カ月を超える入院生活、もやい九州のメンバーの励ましは心の支えでした。それからは自治体改革の「現場」とは少しところを変えて、ローカル・マニフェスト運動や議会改革に、もちろん、もやい九州のメンバーと一緒に取り組みました。思い起こすとその頃は、次は何をもやい九州のメンバーとやろうかと、ワクワクしていました。

 歳を取るというのはよくしたもので、60歳還暦を迎える頃から、自分が何かをやるということよりも、誰かの何かをやりたいを応援することの方が、喜びが大きくなってきました。もやい九州のモットー「この指とまれ」は、誰が言い出したのか忘れてしまいましたが、素晴らしいと改めて感心しています。3年に及ぶコロナ禍の中で、もやい九州も御多分に洩れず、恒例の各種迎撃会や大望年会の機会を逸していますが、with コロナの時代のニューノーマルを目指して、次の「この指とまれ」の発声を楽しみに待ちたいと思う、今日この頃です。

 そして、三陸被災地フロントライン研修に端を発するもやい九州/東北ツアーも10回を数え節目を迎えました。三陸各地も「復興」から新たなまちづくりのフェイズに移ってきています。当初の定点観測の役割は終わったと思いますが、この間に築いてきた東北各地の皆さんとの交流を、どう深め、つないでいくか?皆さん方とゆっくりじっくり考えていければと思います。

 もやい九州のセカンド・ステージに幸あれ!

(つづく)


<著者プロフィール>
吉村慎一
(よしむら・しんいち)
1952年生まれ。福岡高校、中央大学法学部、九州大学大学院法学研究科卒業(2003年)。75年福岡市役所採用。94年同退職。衆議院議員政策担当秘書就任。99年福岡市役所選考採用。市長室行政経営推進担当課長、同経営補佐部長、議会事務局次長、中央区区政推進部長を務め、2013年3月定年退職。社会福祉法人暖家の丘事務長を経て、同法人理事。
香住ヶ丘6丁目3区町内会長/香住丘校区自治協議会事務局次長/&Reprentm特別顧問/防災士/一般社団法人コーチングプラットホーム 認定コーチ/全米NLP協会 マスタープラクティショナー
著書:『パブリックセクターの経済経営学』(共著、NTT出版03年)

『コミュニティの自律経営 広太郎さんとジェットコースター人生』
著 者:吉村慎一
発 行:2024年7月31日
総ページ数:332
判サイズ:A5判
出 版:梓書院
https://azusashoin.shop-pro.jp/?pid=181693411

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