【連載】コミュニティの自律経営(59)~広太郎塾の開講
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元福岡市職員で、故・山崎広太郎元市長を政策秘書などの立場で支えてきた吉村慎一氏が、2024年7月に上梓した自伝『コミュニティの自律経営 広太郎さんとジェットコースター人生』(梓書院)。著者・吉村氏が、福岡市の成長時期に市長を務めた山崎氏との日々を振り返るだけでなく、福岡県知事選や九州大学の移転、アイランドシティの建設などの内幕や人間模様などについても語られている同書を、NetIBで連載していく。
連載の第1回はこちら。広太郎塾の開講
令和2年(2020)11月のある夜、広太郎さんを囲んで、参議院選挙への出馬経験のある弁護士の春田久美子さんと守谷聡子さん(両人は福高の同級生)と食事をしていた。安倍政権から菅政権への移行期で、話題は自然と政治の話になり、あまりの日本の政治の劣化に呆れ果てるしかなかったが、悔やんでいても嘆いていてもしかたがない。ここは、主権者の自覚を喚起するしかない、「政治塾」を立ち上げようと話は一致した。
その後、春田さん、広太郎さんと幾度か企画書のやり取りを重ね、翌2月7日に設立趣意書が広太郎さんから送られてきた。ちょうどこの時期、福岡市のDNA運動から20年を記念したオンラインイベントが計画され、広太郎さんにもメインゲストとして登壇いただき、盛会裡に終えることができて、とても喜んでくれていた。
次は広太郎塾の立ち上げを進めましょうと言っていた矢先の令和3年(2021)3月11日、広太郎さんが急逝してしまった。茫然自失となったが、その遺志は継がなければならないと、有志と準備を進め、本来であれば80回目の誕生日であったはずの同年9月3日に広太郎塾設立キックオフ・ミーティングを開催した。
【広太郎塾/キックオフ・ミーティングを終えて】
Facebook 投稿2021.9.4 から広太郎さんが塾をやろうといってから9カ月、あまりに突然の急逝から6カ月、本来であれば、80歳の誕生日を迎えるはずだった昨日9月3日。傘寿の祝いの代わりに広太郎塾を立ち上げた。北は北海道から南は沖縄まで全国各地の皆さんのご参加をいただき、概ねご好評をいただけたようだ。
あの高揚感から一日を経て、つくづく、広太郎さんは大きな遺産を残してくれたものだと思う。「一流は人を残す」のである。僕は最初、遺志を継がなければという義務感や使命感が強かったのだけど、次第に自分の人生の集大成という気持ちが出てきた。
広太郎さんは僕にとって、運命の人だった。議長秘書という人事による出会いがなければ、僕の人生は全く違ったものになったはずである。その後の僕の公務員人生が大きく軌道をはずれ、浮き沈みの激しい?ジェットコースター人生となり、家族にも多大な犠牲を強いてしまったこと、反省や後悔はないものの、どこか何かを引きずってしまっているところがあった。とっくに決着がついているはずなのに。
今回、広太郎塾を立ち上げて行くにあたり、いろんな方々にお声がけし、人脈をたぐり寄せてみた。そして、なんと素晴らしい出会いに恵まれてきたかを思い知らされた。道を外れたればこそである。つくづく人生は人との出会いであり、振り返れば点と点が繋がっているのだ。そして、すべては導かれている。
思えば、20年前に広太郎さんとともに描いた究極のミッション「コミュニティの自律経営」がそこにある。広太郎塾の開講も予め計画されていたかのようである。
広太郎さんの遺志〜広太郎塾設立趣意書概要
(遺稿2021.2.7より)〇国民一人ひとりに於いて、主権者としての自覚とその責任の自覚が求められている。
〇民主主義政治とは国民中心の政治である。国民と語らい、国民の力を如何に引き出すかにある。民主主義の定着、国民の主権者意識の醸成に取り組まなければならない。
〇国民が政治を獲得し、自らの問題として政治を動かす能力を身につけ、責任ある主権者としての自覚を喚起するための勉強の場を手探りながら設置する。1.広太郎塾が目指すもの
広太郎さんのDNAを受け継ぎ、主権者意識を育み、市民自治を創造する。
2.やりたいこと3つの柱
(1)シティズンシップ(主権者の自覚と責任)を主体的に学び、育てる。
(2)自治を育む~市民自治の自覚と身近な問題解決を実践する。
(3)対話による信頼関係づくりと合意形成の体験を重ねる。3.大切にしたい3つの原則
(1)私たちごと化~国や社会や身の回りの問題を、自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく。
(2)参加と責任~リベラルデモクラシーにおける市民のあり方を基本に据える。
(3)理念と行動の連動~理念が行動を律し行動が理念を鍛える。主体的に学ぶ仲間を増やす。4.開催実績
第1回 令和3年(2021) 9月3日
『キックオフ・ミーティング』(箱崎水族館喫茶室&オンライン)
第2回 令和3年(2021) 12月4日
『とことん選挙談義〜衆議院選挙、どうだった?』(オンライン)
特番 令和4年(2022)4月17日
25歳の私が立ちあがったわけ~小さな一歩で未来が変わる』(オンライン)
第3回 令和4年(2022)12月5日
『みんなでつくる飯塚市~飯塚シティズンシップ推進会に学ぶ~』(オンライン)
第4回 令和5年(2023)3月11日
『参加したくなる民主主義とは? デンマークで地方議員に立候補したニールセン北村さんから学ぶ』(オンライン)
第5回 令和5年(2023)6月3日
『統一地方選挙とわたし ~これまでとこれから~』(オンライン)
第6回 令和5年(2023)12月17日
『日本で2番目に小さなまちで30代町長が住民との対話をマジで始めたら……!?』(オンライン)
第7回 令和6年(2024)2月3日
『対話はまちに一体何を起こしたのか?〜福岡県大刀洗町での取り組みを立体視する〜』(大刀洗町中央公民館)(つづく)
<著者プロフィール>
吉村慎一(よしむら・しんいち)
1952年生まれ。福岡高校、中央大学法学部、九州大学大学院法学研究科卒業(2003年)。75年福岡市役所採用。94年同退職。衆議院議員政策担当秘書就任。99年福岡市役所選考採用。市長室行政経営推進担当課長、同経営補佐部長、議会事務局次長、中央区区政推進部長を務め、2013年3月定年退職。社会福祉法人暖家の丘事務長を経て、同法人理事。
香住ヶ丘6丁目3区町内会長/香住丘校区自治協議会事務局次長/&Reprentm特別顧問/防災士/一般社団法人コーチングプラットホーム 認定コーチ/全米NLP協会 マスタープラクティショナー
著書:『パブリックセクターの経済経営学』(共著、NTT出版03年)『コミュニティの自律経営 広太郎さんとジェットコースター人生』
著 者:吉村慎一
発 行:2024年7月31日
総ページ数:332
判サイズ:A5判
出 版:梓書院
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