2024年11月25日( 月 )

中国流通市場のキーパーソン~昇陽(株)・任陽陽代表

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 2014年10月の日本の免税店制度改正と元高円安を背景に、ここ数年日本を訪れる中国人観光客が急増。「爆買い」をはじめ、インバウンド消費が伸長するなど、日本製品への評価の高さがうかがえるような活況が見られる。日本製品の中国輸出というビジネスチャンスへの期待も高まるなか、成功へと導くキーパーソンの1人が、中国流通市場で日本製品の卸販売を行う昇陽(株)の代表取締役・任陽陽(レンヤンヤン)氏だ。

日本IBMでキャリアを積む
昇陽(株) 代表取締役 任 陽陽 氏

 任氏は、中華人民共和国遼寧省大連市生まれ。1989年、留学生として広島大学工学部に入学。卒業後、エンジニアとしての勤務を経て、日本IBM近江八幡事業所(滋賀県近江八幡市)に入社した。同社で10年間、アジア地域(中国、台湾、韓国)の営業担当として、商談やマーケティングの経験を積んだ。2005年、レノボ社によるIBMのPC部門の買収で、所属部署が縮小。それを機に、独立を考え始めたという。

 2010年、任氏は独立して仲買業を始めた。当初は、中国製品を日本に輸入していたが、人件費が安い中国製の電子部品は日本製品よりも安く買うことができる。その反面、製品の更新が早く型番が次々と変わるため、仕入れで追いつくのがやっとという状況だった。そのうえ、不良品の返品も多く、1年間、電子部品の輸入を行った結果、安定的に長期継続できる事業ではないと判断した。そして発想を転換し、日本製品を中国に輸出する方向へシフトチェンジした。

 今となっては正解と言える方針転換だが、当時は、日本の商品が中国市場に浸透しておらず、3.11の福島第一原発事故の影響もあってか、軌道に乗るまでには時間がかかった。当初任氏は、酒類、タオルや洗剤などの生活用品など、できるだけ多くの商品を少数仕入れ、販売状況から、売れる見込みが立てば追加で仕入れて卸すようにしていたという。

 「商売をすることが好き」と笑顔で語る任氏。売れなかった時はすぐに気持ちを切り替え、次の商材を探す。また、ある商材が売れるとわかれば、ライバル業者が追従するため、競争が激しくなる。「常にリサーチを行い、ニーズを先読みし、先回りをしておかねばならない」と、任氏は考える。
急成長の輸入品スーパー「D.I.G.」と取引
 現在、任氏の昇陽は、2014年から、わずか1年半で中国国内に約30店舗まで拡大した輸入品スーパー「D.I.G.」(Direct Imported Goods)へ日本の商品を卸している。取引額は月1,000万円ほど。「D.I.G.」は、上海自由貿易試験区に本店を構え、売り場面積約5,000m2の店内には食品・雑貨など約8,000点が販売されている。ヨーロッパの化粧品やアメリカの健康食品も売られており、日本製品では菓子やおむつ、とくに日本の酒類や袋めんなどの品揃えが豊富だ。「現在、中国では国内産の製品が多く、品質も良くない。また、国民の生活レベルが向上したため、品質の良い製品の需要が高まっている」と任氏。まだ見ぬ日本のヒット商材を求め、中国流通市場についての講演活動も行っている。


【川元 浩明】

<COMPANY INFORMATION>
昇陽(株)
所在地:滋賀県草津市大路1-1-1エルティ932 4F 草津SOHOビジネスオフィス18号
代 表:任 陽陽(レン ヤンヤン)
創 業:2013年3月
URL:http://shoyo-risingsun.co.jp
TEL/FAX:077-535-8528

 

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