【マックス経営講座】中小企業の生き残り戦略 (13)DX時代に必要な人材づくり~スモールリスキリングから始める変革の第一歩~

はじめに

 前回は、DXを進めていく過程でぶつかる壁について話をしましたが、今回は、その壁を乗り越えるために不可欠な人材についてお話をします。近年、コロナ禍、物価高、人手不足と中小企業を取り巻く環境は激変しています。

 そんななかで「デジタル化」や「DX」の必要性はわかっていても、「人がいない」「使える人材がいない」といった声が多く聞かれます。しかし、本当にそうでしょうか?実は「今いる人材をどう生かすか」こそが、これからの企業存続のカギを握っています。本稿では、DX推進と表裏一体である「リスキリング(学び直し)」に焦点を当て、中小企業でも実践できるステップをご紹介します。

なぜ今、リスキリングが必要なのか?

 「リスキリング」と聞くと、「そんな余裕はない」と感じる方も多いかもしれません。でも、たとえば日常業務のなかで少しずつ「できることを変えていく」ことからでも十分スタートになります。DXとは単なる「デジタル化」ではなく、業務やビジネスモデルの変革です。その変革を担うのは、人です。中小企業では新たな人材の採用が難しいことから、既存人材のスキルアップが現実的な選択になりますが、とりわけ現場レベルでのデジタル活用力を持つ人材の育成が重要です。

中小企業における現実的なリスキリング方法

 まずは、チャットツールやクラウド共有の利用などスモールリスキリングから始めます。次に、ノーコードツールによる受発注業務の自動化など業務改善プロセス自体を学びの機会と捉えます。さらに、それらの成果を社内で共有し、新たな気づきにつなげます。

成功するリスキリングの3ステップ

[step1]小さな成功体験の積み重ね:受発注業務の効率化など具体的な業務改善の実体験
[step2]成功体験による意識の変化:「やってみたらできた」「便利になった」という実感
[step3]自ら学び変えていく自走化:現場主導による提案と改善の習慣化

 ここでのポイントは「現場の“困りごと”から逆算した学び」のサイクルを構築することです。ただ、最初から難しく考える必要はありません。

DXと人材戦略は車の両輪

 DXを進めるうえで、デジタルツールやシステム導入ばかりに注目が集まりがちですが、それを使いこなす人材が育っていなければ成果は出ません。人材育成を「コスト」ではなく「投資」をして考える視点が中小企業の未来を左右します。

 1つ身近な例を挙げると、SNSなどでの情報発信が苦手だった雑貨店さんが、経営者の娘さんのアイデアで「スマホでLINE公式アカウントを開設し、QRコードで来店者に登録してもらう」という小さな一歩を踏み出したところ、3カ月で登録数300件、来店客の再訪率20%アップという成果を上げた例があります。同店では、これをきっかけに「やってみよう」という雰囲気が生まれ、小さなチャレンジが社内の学び合いにつながり、今ではスタッフ同士でSNS活用のコツを共有する場も生まれています。

まとめ

 組織の階層が少ない中小企業では、「トップの意思」と「現場の行動」がダイレクトにつながります。また、近年デジタル化に関するツールも以前に比べて格段に使い勝手が向上しています。だからこそ、学びを積み重なることで、小さな取り組みが大きな変化を生み出す可能性を秘めているのです。まずは社内で「学ぶ文化」を育てることから始めてみてはいかがでしょうか。

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<プロフィール>
(株)コンシャスマネジメント代表取締役/中小企業診断士
西岡隆
(にしおか・たかし)
大学卒業後、会計事務所、監査法人などを経て2001年中小企業診断士登録と同時に西岡経営管理事務所を開設。21年、事業拡張にともない(株)コンシャスマネジメントを設立




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(12)DX推進後の課題とその壁を乗り越えるための知恵

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