鹿児島大学名誉教授
ISF独立言論フォーラム編集長
木村朗
今回のブログでは、皆さんにいま私が最もお薦めしたい秋嶋亮さんの近刊をご紹介させていただきます。
書評:秋嶋亮 (著)「もうすぐ日本は戦争する国になる―この危機を回避するための102のトークセッション―」(白馬社)を読み終えて
いまの日本は統一教会が支配する事実上のカルト国家となっており、アメリカの属国として軍国化・戦前化への道を急速に歩み始めている。閣議決定のみで国家の進路を決める重要な決定が行われ、憲法違反の法案が次々と国会を通過している。
《高市首相の台湾有事介入発言による中国との関係悪化、日本全土のミサイル基地化(とりわけ、南西諸島の軍事要塞化)、防衛費の倍増と殺傷兵器を含む武器輸出による戦争国家化、大増税による国民の負担増と貧困化、国家情報局設置(監視機関の創設)で加速化する日本の警察国家化、スパイ防止法案や国旗損壊罪などの言論弾圧法の提出、憲法改正の国民投票法成立と緊急事態条項を盛り込んだ改憲のゴリ押し、隠され続けている放射能汚染水の海洋放出と汚染土(除染土)の全国への拡散など......。》
このように高市政権下でいま起こっていることは、あまりにも異常すぎるのだ。だが、そのことを大手メディアはほとんど報じず、国会において野党も重要案件について徹底的な追及をすることなく、多くの国民はなぜか沈黙して無関心を装っている。
本書の著者である秋嶋亮氏は、これまでの作品と同様に、本書のなかでも、そうした今の日本の不可視化された都合の悪い真実をあぶり出して、思考停止に陥っている多くの国民(読者)の前に、いまこそ考えなければならない材料を提起している。
ここでは、本書が取り上げている重要課題のなかでも、私が注目する次の3点だけに絞って紹介したい。
「処理水」「除染土」をめぐる情報発信への疑念
第一は、放射能汚染水の海洋放出と汚染土(除染土)の全国への拡散の問題である。この国民の健康と命にとって深刻な影響を与える問題は、2011年3月の福島第一原発事故以降、福島県住民を含む国民から隠され続けている。
その典型的なやり方は、放射能汚染水を単なる「処理水」と、放射能汚染土を単なる「除染土」(あるいは「復興再生土」)と言い換える政府と大手メディアによる情報操作による真相の隠蔽である。
「新聞もテレビも汚染水の放出についてほとんど報じません。戦時に匹敵する厳重な報道規制が敷かれているからです。すでに13万トンを超える汚染水が放出されていますが、今後も毎年5~6万トンのペースで海洋に垂れ流されるのです。」(SESSION76、P178)。
「しかも2045年までに除染土を全国で再利用する計画が進められています。新聞各紙は“自治体は除染土を積極的に受け入れ、全国的な再利用を促す役割を担うべきである”などという社説を掲載しています。」(SESSION76、P179)。
こうして日本は、すでに国内では「二次汚染」で健康被害が広がりつつある一方で、海洋汚染の「加害国」になろうとしているのだ。
選挙結果に向けられる「不正選挙」への疑念
第二は、最近の日本で横行していると思われる、不正選挙の問題である。
昨年末の総選挙で立民、れいわ、社民、共産などの護憲派が壊滅的に議席を失い、自民党単独で3分の2以上の議席を獲得する結果となった。その結果、緊急事態条項を最大の狙いとする改憲が政治日程に上ることになった。だが、この選挙結果はあまりにも不自然ではないのか、という疑問がある。
「だから、そのために大掛かりな不正が行われた、という仮説が成り立ちます。別の言い方をすれば議会を改憲派で埋め尽くすために未曾有の“選挙介入”が行われたと推論できるのです。」(SESSION72、P170)。
「2011年、2012年、2014年に行われた都知事選挙の得票率は区市町村でほぼ一致します。これは確率的にまずありえないことです。つまり開票が操作されていたと疑われるのです。(中略)現実として都知事選挙でも、同じ業者が投票用紙の読み取り機や集計機を納入しています。これはおそらく国民投票にも用いられるでしょう。」(SESSION72、P171)。
ここで提起されている仮説・推論は、十分な根拠に基づいた説得力のあるものである。それは、できたばかりのチームみらいがなぜあのような議席獲得ができたのか、をちょっと考えてみるだけでも分かるのではないか。
再軍国化・ファシズム化へ向かう日本への警鐘
第三は、本書の核心的テーマである、日本の再軍国化(ナチス化)・ファシズム化の問題である。
これは、「ナチスの全権委任法と実質同一」とされる、緊急事態条項の導入を最大の狙いとする改憲(=壊憲)の動きと明らかに連動している。まさに、「権力者に白紙委任状を渡すようなもの」であり、時の内閣の独断で、反政府的な言論や国民運動に「秩序の混乱」のレッテルを張り、弾圧的に取り締まることが可能になるのだ(SESSION1、P22~23)。
この日本の軍国化を促しているのが、宗主国アメリカとその背後にある軍産複合体であることはいうまでもない。日本は独立した主権国家ではなく、アメリカの駐留軍が置かれる事実上の「付庸国」である。日本政府は、宗主国の命令に従う「傀儡政府」に過ぎない。マイケル・グリーン氏(戦略国際問題研究所:CSISの元理事長)が語ったといわれる「日本の首相は馬鹿にしかやらせない」との言葉は、その象徴であろう(SESSION42、P107)。
日本の防衛費をGDP比5%まで引き上げるように要求しているのは、「戦争中毒国家」アメリカである。日本の大軍拡のための防衛費増強は、「米軍の支援強化のための軍事費」であり、そのための「戦争の準備」であるといえよう(SESSION2、P24)。
まさに、いまの日本は、巨大な権力(国家・大企業・アメリカ)と大手メディアが一体化して戦争という自滅への道を暴走するという狂った状況にある。
それでは、なぜ多くの日本国民は、このような日本の再軍国化(ナチス化)・ファシズム化の流れのなかで、沈黙を守り、無関心であり続けているのであろうか。著者は、その理由を、国民の歴史的健忘症、SNSによる思考の断片化、メディアの軽薄化、平和教育の希薄化、などに求めている(SESSION2、P25)。
そのなかでも、「国民の歴史的健忘症(歴史から学ぶ知性が絶望的に欠けている)」が重要である。それは、「赤信号みんなで渡れば怖くない」という集団心理とともに、日本および日本人の致命的弱点となっていると考えられるからだ。
別の視点から見れば、日本政府が進める国益を無視し相手国に媚びる「従属外交」や戦争準備に、日本国民は「それがおかしいとも思わないし、反抗しようともしません。そもそもアメリカに搾取されている自覚すらないのです」。この日本人の思考力を奪うことで成り立つ植民地支配・占領統治という状況は、「無意識の植民地主義」に他ならない(SESSION48、P121)。
これは、「権力者が不都合な真実を隠すためマスコミをフル動員して大衆に仕掛ける無知」が、国民に巨大な暗愚をもたらしている(SESSION38、P99)、「日本人は永遠にヤプー(白人の家畜人種)である」(SESSION46、P117)ともいえよう。
日本が再軍国化するもう1つの背景には、財界の圧力があることも触れておく必要がある。三菱重工業、川崎重工業、NEC、富士通、東芝、IHIを筆頭に約2,000社が加盟する「日本防衛装備工業会」という軍需産業のロビー団体が、「自民党に献金を繰り返し、防衛費を倍増させ、殺傷兵器の輸出を解禁させた」(SESSION4、P28)というのが著者の見立てである。しかも、これらの企業がいずれも外資化しており、受益者の多くが外国人投資家となっているのだ。つまり、「日本は外国人投資家のために軍国化する」ともいえる。
ここまで著者が鋭く切り込んで描いているように、私たちの前にこれから待ち受けているのは、まさに恐怖支配による暗黒時代の到来であり、考えるだけでも恐ろしい監視社会・警察国家の未来図である。いまの日本社会は、まさにあの「ナチスの手口を学んだらどうか」という麻生太郎氏の言葉(13年7月29日)通りに、その道を着々と歩もうとしているのは明らかである。
本書を一読して、深い戦慄を覚えるとともに、情報の真偽を見極めることの重要性を痛感させられた方々も多くおられると思う。
権力側にとって本書の内容がよほど不都合なものであるためか、本書の販売や白馬社に対してさまざまな圧力や妨害行為が行われていると聞く。このような高市政権によるあからさまな検閲・言論統制、すなわち現代版「焚書坑儒」を私たちは決して許してはならない。言論の自由は一度失うと取り戻せないからである。
本書は、ますます凶暴性を強めつつある巨大な権力に真正面から立ち向かい、最後まであきらめることなく抗う術を学ぶための国民にとっての必読書である。
暗黒の未来の到来を防ぎ、自ら戦争を引き起こすという取り返しのできない過ちを再び繰り返さないためにも、本書が1人でも多くの人々に読まれることを切に願っている。
※追加:【解説(木村朗)】秋嶋亮 (著)『スマホに召集令状が届く日―ようこそ!戦争と独裁の未来へ』(白馬社、24/7/29)解説 秋嶋亮氏と一連の作品群について 木村朗ISF編集長









