韓国経済ウォッチ~サムスンのグループ再編はうまくいくのか?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
2014年5月10日、サムスングループの会長である李健照(イ・クォンヒ)氏が心筋梗塞で倒れ、その後、早2年の歳月が流れている。
最近は李会長に関する報道もあまりなく、実際はどのような健康状態に置かれているかを知る由もない。ただ、たまにある報道によると、李会長は意識はあるものの、経営に復帰できるような状況ではないことはたしかなようだ。サムスングループでは、李会長が倒れてからのこの2年間で、内外に大きな変化が起こっている。その変化はどのようなもので、サムスンはどのような方向に向かおうとしていて、それは果たして成功するのか――。今回は、それについて取り上げてみたい。
サムスングループは、韓国を代表するグループである。サムスングループの時価総額が韓国GDPの約20%を占めていることが象徴するように、韓国経済に与える影響力は絶大である。サムスングループの代表格であるサムスン電子の韓国製造業のなかでの付加価値の比率は8.8%で、ほぼ製造業全体の付加価値の10分の1に達している。
しかし、これまで成長を続けてきたサムスン電子に陰りが見えてきたことと、世界経済の急激な変化のなかでサムスンが今後も成長し続けられるだろうかということで、韓国ではサムスンの動向に耳目が集まっている。サムスン電子は16年第1四半期の業績発表で、売上高は49兆7,800万ウォン、営業利益は、6兆6,800万ウォンと発表している。前年同期比で、売上高は2兆6,600万ウォンの増加、営業利益では7,000億ウォンの増加になっている。
今回の業績を見ると、V字回復には成功したものの、営業利益率は大幅に縮小されている。懸念されているなかでサムスンが何とか売上を伸ばすことができたのは、ギャラクシーS7の販売開始、高付加価値メモリの販売好調、OLEDの販売拡大などで売上が立っているからだ。ところが、このような状況は、今後も続くかどうかまったくわからないという不透明感も増している。なぜかというと、スマートフォンの一番大きな市場である中国で、その前兆が明確に現れているからだ。
サムスン電子は、中国でシャオミに1位の座を明け渡しただけではく、去年は上位5位にも入らなくなった。シャオミが中国市場で旋風を起こし、それに追従した中国メーカーの躍進で、サムスンは中国で競争力を失いつつある。中国製は価格に比べて性能がかなり良くなって、中低価格品では中国製品に市場を侵食されている。スマートフォンはすでにコモディティ化されていて、スマートフォンの販売だけで売上を確保したり、利益を伸ばすことは難しくなっている。サムスン電子はそんななかでも、何とか世界市場ではシェア1位をかろうじて維持している。それに、今は半導体が好調で、売上にかなり貢献している。ところが、半導体も中国の猛追撃が始まっている。中国は国を挙げて半導体の育成を目指していて、25兆円くらいの投資も予定されている。とくに清華ユニーグループの存在は、サムスンにとっても大きな脅威になるだろう。
このような外部環境の変化に対して、後継者である李在鎔(イ・ジェヨン)副会長がどのような手を打っていくのかが、かなり注目されている。
李副会長は、アメリカのシリコンバレーに12年にはサムスン戦略革新センターを、13年にはグローバルイノベーションセンターを設立。新しい分野への積極的な投資を通じて、サムスンの未来を開こうとしている。今までの内部の開発だけでは成長の限界があると感じ、シリコンバレーで革新的な技術情報にアンテナを張ると同時に、その企業に投資をすることで、サムスンの未来をつくろうとしている。このように、グループの中核であるサムスン電子の未来の布石を打ちながら、一方では後継者になるためのグループ再編に、この2年間尽力してきた。そのプロセスはまだ完成しておらず、道半ばであるが、徐々に方向は見え始めたような気がする。
(つづく)
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