2024年12月23日( 月 )

サムスン電子の未来戦略(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 もう一つの製造業の変化は、インダストリ4.0と呼ばれるものである。インダストリ3.0は製造にIT技術を活用することであったとすれば、インダストリ4.0は一歩進んで、融合と革新を進めることだ。最近話題になっているビッグデータ、人工知能などをインフラ技術として活用することは基本で、ソフトウェア技術の活用において、融合の最適化を実現するのがインダストリ4.0の肝である。このような産業の変化に対応できる企業と、出来ない企業とでは、明暗が分かれることは間違いない。

jinkoutinou_img サムスン電子も遅まきながら人工知能などに注目し、投資を始めている。しかし、グーグルなどの先行企業に比べると、遅れていることを否定できない。このようなソフトウェアのパワーは結果に大きな違いももたらし、浮上する企業と、沈んでいく企業とに別れることになるだろう。このような時代の変化に素早く変身しているいい事例として挙げられているのはGEである。GEは家電部門を、中国のハイアールに54億ドルで売却し、その代わり、フランスのアルストム社の発電、送配電事業を、97億ユーロ(約1兆2,800億円)で買収している。アルストムの売上高の7割を占める事業を買収したことになる。アルストムは世界発電設備の25%を供給している会社で、世界170国以上で顧客を確保している会社である。GEはこの買収によって、今後成長するインフラ、再生エネルギー事業で、世界トップの競争力を確保したことになる。GEは今までグループの中核事業であった金融事業もグループから分離しているのである。このような変化の激しい時期に先手を打てるかどうかとても大事である。

 実はサムスン電子も徐々に重い腰を上げて動き始めている。サムスンは未来戦略の一つとして、M&Aでの事業体質の強化と新規事業参入を狙っている。サムスンはこのM&A戦略を実行するために、米国のシリコンバレーにいくつか拠点を作っている。1999年にサムスンベンチャー投資を、12年にはサムスン戦略革新センターを、13年にはサムスングローバルイノベーションセンターを設立している。サムスン戦略革新センターは半導体の新技術など主にハードウェア技術に、それからサムスングローバルイノベーションセンターは、ソフトウェア中心に投資をしている。サムスン電子は14年からシリコンバレーで投資を始めたが、その間1,000社くらいを検討し、このなかの54社に投資をしている。投資案件のなかで、サムスンの未来にとても貢献するだろうと評価されているのは、モノのインターネットのフラットフォームであるスマートシングス社、それからモバイル決済のループペイ社、スマホですべてのキーを代替するユニキー社であろう。

 ご存知のようにシリコンバレーでは、いつも革新的技術が生まれている。それで、シリコンバレーには115社のIT企業の本社が所在しているし、スタンフォード大学を始め、31の大学が密集している地域でもある。シリコンバレーはもともと防衛産業のロッキードなどがあった場所だが、IT企業が集積し始め、今日に至っている。サムスン電子は自社内の開発に限界を感じ、世界最先端をいくシリコンバレーで最先端の情報に接すると同時に、いい情報を下に、良い技術に投資をし、アメリカ企業と同じ土俵でゲームをやろうとしている。サムスンのこのような未来戦略は、成功したかどうかを判断するのは時期尚早であろう。サムスンの未来に韓国国民も神経を尖らせている。

(了)

 
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