2024年11月26日( 火 )

COMPUTEX 2016 ~日本とアジアを結ぶ架け橋・沖縄(後)

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沖縄県商工労働部情報産業振興課長 盛田光尚氏

 台北で「COMPUTEX Taipei 2016」が5月31日から6月4日の5日間にわたり開催された。今年で36回を数え、同ICT(Information and Communication Technology)国際見本市は中華民国対外貿易発展協会(TAITRA)と台北市コンピュータ同業協会(TCA)の共催で行われ、アジア最大規模を誇る。近年、県単位で展示ブースを構える沖縄県、来台中の商工労働部情報産業振興課の盛田光尚課長に聞いた。聞き手は沖縄・公立大学法人 名桜大学 清水則之名誉教授である。

海外への展開、ネットワークの構築が喫緊の課題

講演会・セミナー(「Intel」)<

講演会・セミナー(「Intel」)

 清水 「沖縄21世紀ビジョン」、そして情報通信関連産業においては「おきなわSmart Hub構想」が進行中です。その進行過程で、COMPUTEXはどのような役割を果たすことができるとお考えですか。

 盛田 人口が減少に転じた日本経済は、国内市場だけに依存していたのでは、縮小を余儀なくされ、成長著しいアジアを始め海外に市場を求めて展開せざるを得ない状況にあります。すなわち、経済社会の枠組みが「アジア規模」でなければ成り立たなくなっています。沖縄もやがてやって来る人口減少に対応せねばならず、アジアをはじめとする海外への展開、ネットワークの構築が喫緊の課題となっています。

 「沖縄21世紀ビジョン」、そして、その将来像の実現を目的とする「沖縄21世紀ビジョン基本計画」においても、「グローバル経済が進展し、世界経済成長の原動力がアジアにシフトしている状況を踏まえ、アジアや世界を大きく視野に入れ、沖縄の経済を担う、移出型産業、域内産業に対する施策、魅力ある投資環境を整備し、県内投資を呼び込む施策、多様な産業の展開を担う人材、伝統文化、自然、生物資源など沖縄の様々な資源を活用し、涵養していく施策を戦略的に展開していくことが極めて重要」としています。

アジアの活力を取り込み沖縄県の自立型経済を発展

 これらの状況を踏まえ、沖縄21世紀ビジョン関連施策を補完・強化し、比較優位・発展可能性を高めつつアジアのダイナミズムを取り込み、今後の沖縄とアジア地域の経済交流、産業振興に向けた基本的な指針となる「沖縄県アジア経済戦略構想」を15年に策定しました。
 アジアの巨大なマーケットの中心にいる沖縄の地理的優位性を生かし、アジア経済と連動することで、アジアの活力を取り込み沖縄県の自立型経済を発展させていきたいと考えています。

 沖縄県アジア経済戦略構想の実現に向け、今年3月に「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」を策定したところです。この戦略計画では、沖縄21世紀ビジョン関連施策を強化するために、情報通信関連産業を今後の沖縄経済を牽引する基軸となる「重点戦略」の1つと位置づけています。そして以下の5つの政策を展開することとしています。

 (1)産学官一体となった「沖縄IT産業戦略センター(仮称)」の設置
 (2)情報通信産業と他産業連携の促進
 (3)アジアと日本のITビジネスを結びつけるブリッジ人材の育成
 (4)アジア企業と県内企業の連携開発拠点の形成
 (5)国際海底ケーブル等の利活用促進による情報通信基盤の拡充

アジア・首都圏間を接続する国際海底光ケーブルの敷設

 特に(5)については、沖縄を起点にアジア・首都圏間を接続する国際海底光ケーブルを敷設することで、高速・大容量・低価格のネットワークサービスを提供します。同時に、
沖縄IT津梁パークや沖縄クラウドデータセンター、民間のデータセンターなどを接続する沖縄クラウドネットワークと連携することで、県内のクラウド環境のサービスを向上させることを目指しています。

 現在このクラウド環境の構築による新たな通信市場が形成されることを見越して、県内外のハイレベルな企業が沖縄へ立地しており、これらの大手企業と県内IT企業が協業・連携することで、高い技術力を持った人材との交流や、最先端の技術、ノウハウの蓄積等が期待されています。

沖縄経済全体が潤うようなスキームの構築を目指す

 COMPUTEXなど海外での展示会は、沖縄県の投資環境や情報通信関連施策を広くPRし、県内への立地につなげる機会であるとともに、県内企業と国内外企業との橋渡しが行われることで、新規取引先開拓や受注拡大につながり、沖縄とアジアの経済交流が促進される効果があります。

 COMPUTEXは日本から遠くない、しかも親日国と言われる台湾・台北で行われる、アジア最大、世界最大級のICT国際見本市と聞いています。IT製品商戦のトレンドや、海外調達先の検討など、アジア展開を見据えたIT企業にとっては、自社の事業展開を見極めるビジネスの場としては、かなり有効ではないかと考えています。現在のIT産業は、IoTという言葉を出すまでもなく、あらゆる産業と関係しています。私たち沖縄県は、今後も、ITと観光・イベント、医療、そして農林水産業等の他産業との連携も含めて、沖縄経済全体が潤うようなスキームの構築を目指して行きたいと考えています。

台湾との関係で言えば、今はまさに絶好のチャンス

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会場視察中の蔡英文中華民国総統

 清水 本日、盛田課長のお話をお聞きしていて、「沖縄21世紀ビジョン」そして、情報通信関連産業においては「おきなわSmart Hub構想」が順調に進行中であることがよく分かりました。さらに、それを加速・推進して行くためには、「沖縄県アジア経済戦略構想」は不可欠ですね。しかし、琉球王国時代に歴史を遡れば、アジア諸国との親和性、交流は沖縄にとって初めてのことではなくすでに存在していたことになります。しかも、台湾との関係で言えば、今はまさに絶好のチャンスです。

 先月5月20日に誕生した第14代中華民国総統の蔡英文氏は親日とも聞いています。日本大使館に相当する台北経済文化代表処の代表(大使)には、日本に留学経験(京大)のある謝長廷・元行政院長(首相)が決まりました。さらには、対日関係の実務を担当する「亜東関係協会」トップの会長に就任した台湾政界の大物、邱義仁氏は記者団に「台日関係は新たな段階に入る」と語り、日台交流の深化を匂わせました。引き続き、盛田課長の手腕に大いに期待しています。

 ――盛田課長、本日はご出発間際のお忙しい中、ありがとうございました。清水先生ありがとうございました。

(了)
【文・構成:金木 亮憲】

<プロフィール>
morita_pr盛田 光尚氏(もりた・みつなお)
沖縄県商工労働部情報産業振興課長
沖縄県出身。1985年沖縄県庁入庁。沖縄県土木建築部、観光リゾート局、知事公室、商工労働部企業誘致主幹を経て東京事務所勤務。その後、商工労働部情報産業振興課基盤整備班長、東京事務所企業誘致対策監を歴任し、2016年4月より現職。

 
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