英EU離脱と世界経済への影響(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
イギリスのEUからの離脱を問う国民投票日の当日でさえ、残留と離脱の確率は半々とはいえ、多数の人は残留派が勝利するだろうと楽観していた。しかし、イギリスの国民投票の結果は、蓋を開けてみたら、予想外にも離脱派の勝利となった。
このニュースは、不意を突かれたような格好になり、世界経済を震撼させた。アメリカの株式市場は、この結果を受けて3~4%の株価下落を示し、アジア証券市場も軒並み株価を大幅に下げた。株式市場だけでなく、金融市場にも動揺が広がり、イギリスのポンドは、EU離脱によるイギリス経済への悪影響を懸念し最大10%も下げ、31年ぶりの安値をつけることとなった。
今回は、イギリスはなぜ自国の経済によろしくない、そのような選択をしたのか。また、その選択は今後どのような影響を、世界経済および韓国経済に与えるのかを取り上げてみたい。現在のEUは、28カ国が加盟している。第2次世界大戦後、欧州内で2度と戦争を起こさないという思いで、欧州統合は進められた。最初は資源をめぐる争いをなくす目的で、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が1952年に創設され、67年には、欧州諸共同体(EC)に発展し、ついに93年には今のEUに至っている。
EU域内の人口は5億人くらいで、域内のGDPは18兆ドルを超えており、通貨はユーロを使っている。域内では基本的に財・サービスの交流に関税はなく、シェンゲン協定に加入している国の間では、人の行き来も自由である。EUは世界最大の経済ブロックであり、欧州統合に向けて加盟国を増やしてきた。しかし、今回イギリスの離脱決定で、初めて逆向きの動きが発生したことになる。
イギリスが離脱を選択するようになった背景には、無理な統合により、EUにいろいろな問題が露呈してきたことがあるからであろう。一部では、EUは構造的な欠陥を持っているため、いつか必ずその問題は顕在化すると言われていた。とくにイギリスは、その間EUの他の国と意見対立を繰り返し、離脱する可能性があったことはたしか。だが、それがこのようなかたちで実現するとは、誰も予想しなかったに違いない。
国民投票の結果、広がりつつある波紋に、離脱派の人も驚いているようだが、イギリス国民が離脱を選ぶようになった背景には、次のような原因があった。1つ目には、イギリスの経済悪化が原因であろう。2008年のリーマン・ショックは、欧州経済をも直撃し、欧州も債務危機に陥った。ところが、イギリスはユーロを採用しておらず、他のEU加盟国に比べて、傷が浅かったようだ。そのためイギリスの国民は、なかなか低迷から脱しきれず、問題を抱えているEUとは一緒になりたくないという思いがあったのではなかろうか。
2つ目に、EUからの移民の流入に対する不満だ。域内から安い労働力が流入することによって、賃金が下がったり職を奪われたりして、低賃金労働者を中心に不満が高まっていた。国家統計局の発表によると、15年のイギリスへの純移民数は33万人で、過去最高になっている。移民の流入で、社会が不安定になったことと、各種サービスが悪くなったこと、財政への圧迫など、実生活への影響が出ていて、その不満が今回の投票結果として現れている。
3つ目に、イギリスはEUに年間3億5,000万ユーロの負担金を支払っている。その負担金をEUに払わずに、自国民の福祉などに投入すれば、生活の質が向上するという思いがあるのだろう。
(つづく)
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