2024年12月22日( 日 )

精神医療の良き在り方を求めて60年(後)

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(医)井口野間病院

より良く生きるための援助に徹する

in 作業療法にも哲学を持ち、誠意ある精神医療を手がけてきた同院だが、近年、精神医療を取り巻く環境は、目まぐるしく変化しつつある。若い世代では気分障害が、高齢者では認知症が増加した。これに加えて高齢患者の治療には、身体合併症をともなうことも少なくなく、他病院との連携が欠かせなくなった。他病院にとっても、精神治療の専門医の協力を求めることが喫緊の課題となりつつある。

 この社会情勢に応えるべく、15年4月、同院は新しい理事長を迎えた。山口県でケアミックス型の病棟体制を整え、地域住民へ幅広く受け入れられる医療提供してきた高山成吉理事長だ。高山理事長は、外科一般から内科、がん疼痛コントロールまで幅広く診療し、今の時代が求める地域のかかりつけ医として在るべき姿を実践してきた。

 これまで精神科は一般的に静謐な環境を患者に提供すべく、世間からある程度距離を置いた環境を守ってきた。だがこれからは、精神科・心療内科病院だからこそ、地域との連携を強く結び、外科、内科、老人医療の領域に長けた視点を院内に持った病院に変わっていく必要がある。精神科・心療内科の在り方を変えていく時代になったのだ。これに高山理事長はスピーディーに応えた。
 「院内スタッフには、私たちにできることは患者さんやご家族の援助であり、治療や病後の人生設計を決めるのは患者さんであることを忘れてはいけない、と常に伝えています」と高山理事長。「援助」とは、患者と患者を支える家族の苦しみを和らげ、軽減することを指している。高齢者に対する医療は、終末期を意識せずには成り立たない。「昔は大家族が主流で家族が患者を取り巻き、支え合い看取ることが一般的でした。でも今は核家族が主であり、老人独居も珍しくありません。病院の援助と介入は避けられない時代です。そのような環境にあって、患者さんとそのご家族がより良く生き、人として避けることができない死をより良く迎えるための援助を担うのが、我々の役目なのです」と高山理事長。徹底して患者と家族を支えるという高山理事長の思いは、理事長自身が家族のつながりのなかで、死を看取り、疾病を乗り越える経験を積んできたことから生まれたものだけに揺るぎない。

 患者には生きる権利と同様に、終末期の過ごし方を選ぶ権利がある。決してその選択権を医療側の都合で奪ってはならない。人として、大切なことは人から教えられる。だからこそ、生きることで受ける痛みや悲しみは可能な限り取り除いて、自分らしく生きてほしい。同院が60年間貫いてきた理念は高山理事長の就任によって、今、新たな高みを目指そうとしている。

(了)

<INFORMATION>
理事長:高山 成吉
所在地:福岡市南区寺塚1-3-47
設 立:1995年11月
TEL:092-551-5301
URL:http://www.inokuchinoma.com

<プロフィール>
takayama_pr高山 成吉
北九州市出身。外科専門医、がん治療認定医、乳腺外科専門医、医学博士。緩和ケアや老人医療も専門とし地域密着型医療を提供。医療法人周友会徳山病院理事長、医療法人信和病院副理事長など、兼務多数。

 
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