リコールで冷や水をかけられたサムスン「Galaxy Note7」(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
それでは、発火、爆発の原因は、何だったのだろうか――。専門家の間では、いくつかの原因が挙がっている。
今回の「Galaxy Note7」には高速充電が採用されており、そのためサムスン電子は、USB3.1(タイプC)を採用している。USB3.1は USB3.0に比べて電力伝送量は10倍くらいで、100ワットの電力を充電できる。だが、このように充電する電力量が大きくなると、その分、熱も発生するため、過電流、過負荷のリスクも高くなる。もちろん保護回路などがあるが、この保護回路も絶対的なものではなく、衝撃を与えると、保護回路が壊れて機能しなくなることがある。今回は、これが1つの原因ではないかと推定されている。
もう1つの原因として指摘されているのは、セパレーターである。バッテリー内部のセパレーターが破損されると、このようなことが起こるということである。ショックによって、セパレーターに穴が開いたり、セパレーターが破損したりすると、化学化合物が過熱する。そのため、セパレーターの場合には頑丈につくることが最も大事なようだ。ところが、「Galaxy Note7」はバッテリー一体型で、どうしてもセパレーターを薄くせざるを得ない事情があり、それが原因でセパレーターに問題があったのではないかという推測である。
もう1つは、設計上のミスである。今回、サムスン電子はアップルのiPhone7の発売より先に発売して、機先を制するため、発売の日程を前倒しした。日程を急ぐなかで、何らかの設計ミスでもあったのではないかということである。製造では通常、ロットを重ねるごとに品質は安定し、ミスは取り除かれていく。今回の事故は、早く原因を突き止め、市場の不安を払拭しないと、サムスンに大きな打撃を与えかねない。
サムスンが250万台をリコールすることによって、営業利益が1兆5,000億ウォンくらい減少するだろうと証券業界では指摘している。しかし、サムスン電子は目先の利益よりも、長期的な顧客との関係を重視し、今回のリコールに踏み切ったらしい。今回のリコール決定には、サムスンの未来戦略室と最高決定者の意思が反映されているようだ。韓国では旧盆休みが終わって、19日から製品の交換に応じることになっている。サムスン電子の社員は休みも返上し、この非常事態に一生懸命対応している。
韓国国内のマスコミの反応は、概ねサムスンに好意的で、交換ではなくリコールという決定を下したことを高く評価している。しかし、今回の決定が今後どのような結果をもたらすかについては、誰も予断できない。
発火、爆発、リコール宣言、各国の使用中止の勧告など、事態が拡大することによって、最初は好意的であった市場の反応も、少し冷ややかになっている感もある。サムスンは新品を用意し、28日から販売を再開することを発表した。
サムスンは危機をうまく乗り越えて、もっと飛躍するのか、それとも今回のリコールがつまずきになって、坂を転げ落ちるようになるのか、まだ誰も判断できない。サムスンのつまずきとは対照的に、アップルのiPhone7とiPhoneプラスの販売は絶好調である。サムスンの早急な原因究明と、原状回復を期待したい。(了)
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