2024年12月19日( 木 )

中国で普及しているメタノール混合燃料(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 まずメタノールは、金属やゴムなどを腐食させる性質があって、メタノール混合燃料は自動車のエンジンを腐食させてしまうのではないかという懸念があった。
 また、メタノール混合燃料は、始動性があまり良くないうえ、ガソリンに比べて燃費が劣るという短所が指摘されてきた。さらにメタノールは、他の石油化合物と混合すると層分離現象が発生し、混ざっていたものが分離されてしまう。これは、密度の違いによるものだ。なお、うまく混ざっていたとしても、マイナス10度以下になると層分離現象が発生してしまうため、燃料として問題があったわけである。

eco_img ところが、エネルギー問題を最も深刻に受け止めており、エネルギー問題をうまく解決できないと経済発展を期待できない中国政府は、石油の輸入量を抑制したいという狙いもあり、メタノール混合燃料を前向きに推進してきた。
 その結果、中国ではガソリン配給が十分でない内陸地方を中心に、積極的にメタノール燃料の普及を推奨。地方政府も産業政策の一環として、メタノール混合燃料に積極的であった。
 中国のメタノール混合燃料の年間生産量はすでに 1,010万トン規模であり、2017年にも新規に3つのプロジェクトが予定されていると、中国のマスコミで報じられている。

 一方、中国のこのようなスタンスと違って、韓国と日本では、自動車会社や石油卸大手などがメタノール混合燃料の普及にネガティブであり、市場はほとんど形成されていない。

 ところで、約10年前にメタノール混合燃料の開発に成功した後、中国現地で試験生産し、中国の各地域および車両を対象に約5年間テストをして、商用化に成功した韓国の中小企業があり、話題を集めている。
 その会社は、「ビジョンE&F」(以下、ビジョン社)という名前の会社である。ビジョン社のメタノール混合燃料は、メタノールを50%混合する「M50」の開発に成功したばかりか、既存のガソリンとも何の装置なしに混ざるようになる画期的なメタノール混合燃料の開発に成功した。

 メタノール混合燃料の長所は、メタノールは完全燃焼するため、一酸化炭素や窒素酸化物などの排気ガスが、従来のガソリンに比べて約半分から最大で90%ほど減少するという点である。排気ガスを減らし、環境汚染防止に貢献することはもちろん、燃料代も25%程度削減できる燃料である。同社製品の最も大きな特徴は、一度混合すると層分離が発生しないこと。それに、悩みの種である寒い地方(マイナス10度以下)で使用する際の層分離の問題まで見事に解決している。マイナス20度以下でテストした結果でも、層分離は全然起きないことが確認されている。
 同社で開発された特殊添加剤は、工程の最後に投入されるが、この添加剤は金属とゴム腐食の防止、燃費の改善、始動性の改善などの役割を担う。
 ビジョン社の趙柄三会長は、この添加剤はコカコーラの原液のような役割を果たすもので、この部分は“ブラックボックス”として、技術が他社に流出されることを防ぐのに役に立つと付け加えた。
 同社は今年から、中国やタイなどでプラントを稼動し、中国の需要に対応するだけでなく、隣国であるモンゴルやラオス、ミャンマーなどへの販売も計画している。

 燃料費の低減と環境問題の解決という“二兎”を追うメタノール混合燃料のビジネス展開に、関心が集まっている。石炭を有効活用する新しい方法として、それから環境汚染を解決する切り札として、それに石油資源の有効活用の1つの方法として、メタノール混合燃料が今後もっと普及されることを願ってやまない。

(了)

 
(前)

関連キーワード

関連記事