2024年11月22日( 金 )

サムスン電子のサプライズ業績(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 一方で先日、サムスン電子の2016年第4四半期の実績発表があった。

office6min 16年第4四半期の売上高は53兆3,300億ウォンで、営業利益は9兆2,900億ウォンになっている。
 今回の営業利益の規模は史上3番目に大きく、最大は13年第3四半期の10兆1,600億ウォンで、2番目が13年第2四半期の9兆5,300億ウォン。そして今回の9兆2,900億ウォンが3番目の規模になるとのことだ。
 営業利益を部門別に見てみると、半導体部門は4兆9,500億ウォンの営業利益を記録し、IT、モバイル部門は2兆5,000億ウォンの利益を上げ、ディスプレイ部門は1兆3,400億ウォンの利益を上げた。
 「Galaxy Note 7」の販売が想定外にリコールという事態になったにも関わらず、サムスン電子は損失計上どころか、莫大な利益を計上している。とくに半導体部門の利益は史上最大で、サムスンの半導体部門の世界的な競争力をよく表している。

 当分の間、サムスン電子の業績を牽引するのは、半導体になりそうだ。
 なぜかと言うと、2000年度半ばにはパソコンの需要爆発が、2010年には携帯電話の爆発的な成長が半導体の成長に寄与したが、17年には自動走行自動車、人工知能(とくにマシーンラーニング)、ビッグデータ、IoT分野などで、半導体の需要が急増し、特需が見込まれるからだ。
 サムスンはメモリ分野で10ナノの量産を最初に成功するなど、高付加価値商品に力を入れている。なお専門機関によると、今後、自動車に搭載されるDRAMは16年に2.62GB、17年に5.80GB、20年には27GBになるようだ。車載DRAMは、価格も通常のDRAMに比べ2~3倍高いという。
 もう1つの市場であるNANDフラッシュメモリでは、サムスン電子は48層に次いで、世界で最初に64層の大量生産に着手し、競合会社の追撃を追い払おうとしている。48層まではそれほど難しくないが、64層は大変難易度が高く、大量生産すると歩留まりが良くないという。サムスン電子は、64層の歩留まり改善はもちろん、その次のバージョンも計画しているようだ。

 サムスン電子は有機ELにおいても、中小型の世界シェアを9割くらい占めている。その間、ディスプレイ部門はパネルの供給過剰でLCDパネルの価格が下げ止まらなかったが、価格が少し値上がりしているし、新規に有機ELの需要が増加し、今回の利益計上になっている。
 サムスンは、世界のどの会社よりも投資にも積極的である。昨年、韓国の平沢(ピョンテク)に15兆ウォンを投資し、半導体団地を造成した。また、フレキシブル有機ELにも10兆ウォン近くの投資を実施している。

 サムスン電子の16年の売上高(連結)は201兆8,700億ウォンで、営業利益は29兆2,400億ウォンを計上した。サムスンは5年連続で、200兆ウォンを上回る売上高を記録している。

 一方では、現在のサムスングループを築き上げた李健照(イ・ゴンヒ)会長が入院中で経営が空白状態であることを心配しているし、新しい司令塔である李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の経営能力および手腕は検証されていないことを懸念する声があるが、個人的にそれは危惧に過ぎないと思っている。
 李在鎔副会長はグループを構造調整することによって、すでに世界的に優位性が確保できない事業は整理しているし、時代の要請に合うバイオなどの新産業でグループの新成長動力を模索しており、今まではかなり成功を収めている。
 それから、すでに確保したグローバルブランド力と資金力をベースに、すべての開発を内部で行うのではなく、M&Aを通じてグループを成長させたいという明確なビジョンを打ち立てている。
 サムスンはシリコンバレーに拠点を構え、情報収集を通じて、今後成長が見込まれる有望企業の情報を確保している。その情報を基に、すでに20社以上の有望企業へ投資したり、その企業を合併したりしている。

 このように、半導体を中心に今後成長するデバイス産業をはじめ、電装事業、人工知能、IoT、バイオ、金融などに、サムスングループは力を入れていく。今回の業績回復が、一時的なものなのか、それとも継続するものなのか、市場では注意深く見守っている。

(了)

 
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