北九州空港を東南アジアの玄関口に(後)
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北九州エアターミナル(株) 代表取締役社長 片山 憲一 氏
LCCを用いた東南アジア便の北限
――アジアからの九州への需要を取り込む、ということですか。
片山 そうですね。アジアといっても広いですが、とくに東南アジアと航路を結ぶことが重要になってくると思います。実は東南アジアからLCCで飛行できるエリアの最北点が北九州空港なのです。LCCが主に使っている飛行機はボーイング737-800やエアバスのA320ですが、航続距離はおよそ4時間が限界です。乗客が狭い座席で我慢できるのもそのくらいです。すると東南アジアから関空への運用は困難です。そういう意味でLCCと相性の良い24時間空港である北九州であれば、東南アジア便の受け皿として活用できる可能性が高いと考えています。
――飛行機の能力の問題もあるのですね。
片山 燃料タンクの大きさ、飛行機の運用を考えると東南アジアからはここ北九州空港が北限ですし、九州のなかで24時間空港は北九州空港のみです。現在、東南アジアからの玄関口としては、24時間利用できる沖縄の那覇空港が役割を担っています。那覇空港はここ2年で150万人くらい国際線旅客が伸びていますから、伸びしろとしてはそれくらいあると考えています。東南アジアからのLCCはいったん沖縄に下りて、そこから関西、関東に飛んでいくということをやっています。LCCが沖縄に行かずに九州に拠点を持ってくるとなれば、大いに利用者増加を見込むことができます。そのためには北九州自体の魅力・知名度を高めていかなければなりませんね。東南アジアの方々に、北九州・福岡で降りたらどのようなことができるのか、ということをもっと知ってもらう必要があります。
――福岡に降りる外国人は韓国と台湾、中国からが大半です。これからは東南アジアの中産階級の方たちが日本に訪れるようになると考えられます。
片山 ベトナムやタイからは、すでに富裕層がナショナルフラッグを利用して日本に来ていますね。中産階級が使うのはLCCですから、東南アジアの受け皿として北九州空港は有望です。インドネシアも人口が多い国ですので、機内サービスやラウンジなどでハラル対応などができれば期待が持てます。マレーシアなどにもムスリムの方がいらっしゃいますから、ハラルへの対応を進めながら、受け皿を拡大していきたいですね。そのためには設備投資が不可欠ですし、投資をするにはそれに見合ったお客さまの数が必要です。ですから、やはり九州全体でインドネシアなどからのお客さまが来たらどう対応するか、ということをきちんと決めたうえでやっていかないと難しいですね。逆に、それができれば、発展の可能性は一段と上がると思います。
九州全体で観光マインドを高めよ
――九州全体でお客さまを迎えるという考え方が必要ということですね。
片山 九州は観光マインド、つまり観光で食べていく、という発想がまだ弱いですね。同じお金をかけるならばホスピタリティのいいところに行くことになりますから、そこを強化していくことも重要だと思います。観光ビジネスが三次産業として九州の基幹産業になっていくためには、九州全体で取り組まなくてはならないでしょう。たとえばドイツのロマンチック街道は、スイスから入ろうがどこから入ろうが、全体としてロマンチック街道として売り出しています。この発想はすばらしいですね。
ロマンチック街道では交通手段も宿泊施設もすべてが地域同士でつながっています。それと同じように、どこから九州に入っても、九州全体がネットワークで結ばれている、どこへでも行けるということになれば、観光地域としての認知は深まると思います。今は残念ながら、その部分が不十分です。
――九州での観光ビジネスが育ちそうで育たないのは、そういったところにあるのですね。
片山 長崎に来たら長崎でお金使ってほしいと思うし、熊本なら熊本でお金を使ってほしいと各地域単位で考えているのが現状だと思います。ところが実際に観光で発展しているところは発想が逆なのです。自分のところに来たお客さまに対して、他のエリアは楽しいですよと言っているところほどうまくいっています。たとえば函館がそうですね。函館から入ったお客さまを他の観光地に送り出すかわりに、札幌にいらっしゃったお客さまは函館にきて泊まってください、という観光戦略を立てています。これが奏功して函館はうまく循環しています。その発想を九州の人が持てたらうまくいくのではないでしょうか。
――観光インフラを充実させることも重要ですね。
片山 基本的には宿泊施設をつくらない限り産業にはならないと思います。福岡にはホテルが約2万5,000室あります。旅館も含めると3万5,000室くらいになります。一方で北九州には1万室しかありません。宿泊すれば宿泊客はさまざまなところでお金を使いますから、やはり泊まるための観光者向けの施設が必要です。北九州はビジネスマンに向けた宿泊施設がほとんどですから、ここを改善しない限り、北九州にお客さまがきてもお金が落ちないし産業化し得ないと思います。まずは滞在時間を増やすために宿泊施設を増やしていく、「泊まってもらう」ということが大事ですね。
福岡空港との連携は大切
――福岡空港が民営化されます。北九州空港の民営化はあり得ることなのですか。
片山 十分あり得ると思います。北九州空港は国の空港です。国営の空港は基本的に民営化の方向で進んでいますから、北九州空港もいずれはそういう方向で進んでいくと思います。福岡空港が民営化されたら、北九州空港も一緒に運営していきましょう、という話はよくされます。北九州だけではなく、佐賀空港も含めた戦略も考えられます。佐賀空港は県営空港ですが、協力することで選択肢が増えます。ただし、将来利用者を増やすことができる魅力ある空港になれるかどうかが問題です。
――お互いの役割を補完し合うということですか。
片山 空港会社が1つになることのメリットは大きいですね。海の港で考えたらわかりやすいですが、海港は第一ふ頭を使うか第二ふ頭を使うかという選択ができます。同じように、北九州空港と福岡空港が1つになれば選択できるようになり、運用の幅が広くなります。だから1つの方がいいのかなと思います。ただし、一方では「そうではない」という意見もあります。福岡に大きな飛行機が集まって、北九州には小さな飛行機ばかりが来るようになるのではないか、地域としてさびれるからやめたほうがいい、という考え方です。そこを総合的に検討して、このままでいいのか、民営化して1つにする方がいいのか、判断していかなくてはならないでしょう。
――本日はご多忙のなか、ありがとうございました。
(了)
【文・構成:柳 茂嘉】<COMPANY INFORMATION>
代 表:片山 憲一
所在地:北九州市小倉南区空港北町6
設 立:1989年5月
資本金:35億2,400万円
売上高:(15/3)6億8,610万円
URL:http://www.kitakyu-air.jp関連記事
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