サムスントップの李在溶副会長の逮捕(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
それでは、疑惑の端緒となったのは、何だったのだろうか。今の李副会長は3代目である。祖父の李秉喆(イ・ビョンチョル)会長がサムスンの創業者であり、父は2014年5月に心筋梗塞で倒れた李健照(イ・ゴンヒ)会長である。
李会長は1995年に61億ウォンを李副会長に贈与することで事業継承をスタートさせたが、実は事業継承はあまり進んでいないなか、突然倒れることになった。
李会長が倒れた後、事業継承の重要性に気づいたサムスングループでは、3代目に事業継承させるため、いろいろな手を打ち始める。しかし、どういうわけか、家族の協力をあまり得られず、李副会長は1人で経営基盤を強化しようとする。その1つが15年6月の第一毛織とサムスン物産の合併である。李副会長は、第一毛織の株はかなり所有していたが、サムスン物産の株はあまり持っていなかった。サムスン電子の大株主であるサムスン物産を第一毛織に合併させることで、結果的にはサムスン電子への支配を強化しようとした。
ところが、合併比率を第一毛織が1に対してサムスン物産を0.35としたため、サムスン物産の株を大量に持っていたアメリカのヘッジファンド「エリオット・マネジメント」から猛反対を受けることになる。ところが、「エリオット・マネジメント」の反対にも関わらず、最終的にその合併は無事成功する。その背景には、当時サムスン物産の株を11%保有していた「国民年金管理公団」が賛成に回ってくれたからだ。この賛成に対して、「国民年金管理公団」が自分の資産価値を減らすような合併に賛成したことに、疑問の声が上がっていた。合併の結果として、李在鎔副会長は、新「サムスン物産」の16.5%の大株主となり、李副会長個人的には大きなプラスとなったが、国民の資産を減らすだけでなく、サムスン物産の株主にも損害を与えたことになる。合併の結果、李副会長はサムスン電子への支配力も強化されたわけである。
ところが、今回の資金提供は合併成功への見返りであることを立証すべく、特別検事チームは合併に照準を合わせていた。その結果、実は国民年金管理公団も、最初はこの合併に反対であったことがわかった。それを朴大統領が大統領府の高官や保健福祉省に働きかけて、合併が成功していたことが確認された。当時のムン・ヒョンピョ保健福祉相は、両社の合併に賛成するよう国民年金管理公団側に圧力を加えた容疑で逮捕されている。李副会長は、父が倒れた14年5月と合併の間に朴大統領に面会している。李副会長は父が倒れ、また事業継承を推進するなかで、合併での壁にぶつかっていた。それを崔順実(チェ・スンシル)被告人によって見抜かれていた。崔容疑者からすれば、サムスンと取引できる絶好のチャンスであった。そこで朴大統領は合併に便宜を図り、その見返りを直接朴大統領ではなく、共同体である崔一家に支払うことによって、収賄の疑いからも逃れられると思ったのだろう。
事業継承の問題を完結できなかったことが、このような結果を生んでいる。サムスン電子の持ち株会社化や、米自動車部品大手のハーマン・インターナショナルの買収決定など課題が山積しているなかで、李副会長の空白はサムスングループにどのような結果をもたらすのか、世界から注目されている。
(了)
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