「小池都知事と都民ファーストの会」という壮大なる茶番劇(3)
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SNSI・副島国家戦略研究所 中田 安彦
ここからは私独自の分析だが、この「都民ファースト狂騒曲」というのはメディアが煽り立てるものでしかなく、その実際の狙いは「大阪維新のような保守政党を東京都に誕生させ、リベラル派のお株を奪う」ということが目的である。この点をしっかり認識していく必要がある。
作家の菅野完氏など他の識者も指摘しているが、都民ファーストの会の幹事長の野田数(のだかずさ)という人物は小池氏の元秘書で元都議だが、別に最近まで日本会議系の「日本教育再生機構」という団体の常任理事だったこともあるほか、12年5月に自民党を離脱、「東京維新の会」に移籍した直後、国会議員の「尖閣視察団」に都議では1人だけ参加し、都議会では、現行の日本国憲法を無効とし、戦前の「大日本帝国憲法」の復活を求める時代錯誤の請願を提出するための紹介議員となっていたという。要するに小池氏の最側近は筋金入りの右派だ。
さらに小池氏本人も、自民党時代の09年に保守派の宗教系政党である幸福実現党と合同で北朝鮮拉致事件についての合同演説会をやったことがある。このように、現在街頭演説で振りまいている、ソフトな「百合子グリーン」のイメージだけではなく、小池氏にはこういう強面な勢力を許容する側面がある。小池氏は決してリベラル一辺倒ではない。(動画)
保守派の小池氏が、共産党の業績である豊洲問題や共産党・民進党の功績である加計学園問題を、持ち出して安倍政権を批判することは、イメージ戦略の側面も大きい。「無党派の声」を加計問題、豊洲問題を使って喚起する。しかし、都民ファーストの会が支持を奪おうとしているのは、国会や都議会でこの2つの問題を追及してきた既成政党の都議会の議席なのだ。
そして、都民ファーストが民進党や共産党を超える都議会の勢力になることは、国政に対しても大きなインパクトを与える。まず、民進党では求心力を失っていた、蓮舫・野田佳彦の代表・幹事長体制が崩れていく。さらに、民進党を離党した保守派の重鎮の長島昭久衆議院議員は、地元の都議会議員3人が呼応して離党したのを受けて都議選でも熱心に応援しており、「中央公論」でのインタビューでも小池知事を評価し、小池都知事との距離を縮めている。都内の地方議員の地盤がない「都民ファースト」には大きな援軍になるだろう。
何故かと言うと、都民ファーストが仮に国政政党としても進出する場合、選挙活動に詳しい地方議員を持つことが必要なる。その意味では大阪拠点の「日本維新の会」のような国政政党を首都圏で作ることになる場合、地域を知っている勢力を育成する必要がある。民進党は地方選挙で勝てないと、総選挙を戦う体制を崩されていく。民進党は東北や北海道では強いが、関西や九州では弱すぎる。そこに加えて今度は首都圏で「地域政党」に水を開けられるのは本当にリベラル派にとってはつらい状況だ。
(つづく)
(リンクは2017年6月15日現在のもの)
<プロフィール>
中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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