久留米市・欠陥マンション裁判、鹿島建設の実に大人げない反論(後)
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欠陥マンション構造研究会
福岡県久留米市の「新生マンション花畑西」の区分所有者らが、元請施工業者の鹿島建設(株)などに損害賠償などを求めて訴えた裁判(次回9月1日)は、建物の瑕疵をめぐり、2014年6月の裁判開始から3年が経過した。裁判が最終局面を迎えるなかで、争点はある程度整理されるとともに、大手ゼネコンの実に大人げない、不誠実な姿勢が露わになっている。原告側の技術アドバイザーを務める協同組合 建築構造調査機構の仲盛昭二氏の解説を交えながら報じていく。
前回:「建物全体のおよぶコンクリートかぶり厚不足」
壁厚をごまかした図で印象操作
構造的自立性のない外階段は、建物本体部分との位置関係が強度に大きく影響する。一般的な外階段は、右図のように、階段の正面に建物本体があり、矢印上下方向の揺れを、通路のスラブ(床板)を通じて建物本体で直接受け止めることができる。また矢印左右の揺れは、「イ」、「ロ」両面に通路床スラブが存在することで、安定的に本体に伝えることができる。
しかし、「新生マンション花畑西」の場合、外階段と建物本体部分との位置関係は下図のようになっている。階段の正面に建物本体がなく、矢印上下方向の揺れを、通路スラブを通じて正面で受け止めることができない。また矢印左右の揺れに対して通路スラブが片側「イ」部にしか存在せず、一般的な外階段のように通路両面に囲まれたものと比べて安定性が悪く、強度も不足する。
このように建物本体から完全にずれた位置に設けられた階段の地震時の揺れを確実に建物本体に伝え、かつ支えるためには、何らかの構造的配慮が必要であることは論を待たない。
「その役割を担うために設計者が設けた唯一の梁が、施工段階で省略されたことは、施工者がこの梁の構造的重要性を理解していなかったからであると言わざるを得ない。鹿島建設は、設計図に記載された梁を施工しなかったことについて、身勝手な弁解を繰り返すが、建物通路の出隅に張りつくように設けられた(図示)自立性のない15階建て外階段の地震時の激しい揺れを、薄っぺらな(最薄部=8~9cm厚)通路スラブで受け止め、しかもその通路が破損することなく避難経路の機能を保持し続けることができるはずはない。鹿島建設は自らの施工ミスを覆い隠すためには、地震時のマンション居住者の生命、安全が損なわれても致し方ないとでも考えているのであろうか」(仲盛氏)。
さらに、鹿島建設が提出した外階段部分の立体透視図では、実際は120mm程度の薄い壁厚を階段中央部の構造壁と同じボリュームを持たせたような表現で描かれていた。「鹿島建設は施工ミスを帳消しにし、構造的に問題がないかのように裁判官に印象づけるため、このように不正な図を描いたのではないか」と、仲盛氏は訝しむ。
コンクリートかぶり厚と外階段に関する事実を歪曲したとしか思えない主張を見る限り、鹿島建設の企業モラルには大きな疑問符を付けざると得ない。
(了)
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