2024年12月22日( 日 )

鳥取銀行の支店撤退に行政がクレーム~地銀の経営統合にも影響か(後)

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 【表1】を見ていただきたい。3行の経営成績である。

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<この表から見えるもの>
◆3行とも18年6月期(第一四半期)の当期純利益は前期比マイナスとなっている。日銀のマイナス金利の影響がジャブのように効いてきているのがわかる。従って、通期の当期純利益予想も前期比マイナスとなっている。

◆とくに目に付くのは島根銀行で18年6月期の当期純益はわずか2,800万円。来月には半期決算が発表される予定となっている。はたして通期目標の3億6,000万円の目標は達成できるのだろうか。また鳥取銀行は4億800万円(前期比▲4,700万円)となっているが、通期目標は9億円となっている。6店舗の閉鎖や廃止を発表。そのなかに指定金融機関を受託している日南町の生山支店を隣接する日野町へ移転を最終決断した裏には、赤字転落を含め、収益悪化が大きな問題となっていることが隠されているのではないだろうか。

◆山陰合同銀行も18年6月期は31億9,700万円(前期比▲15億7,200万円)と大きく減少しているが通期目標の131億円の達成は可能なのだろうか。いずれにせよ、地銀にとっては厳しい経営状況にあるといえよう。

鳥取銀行の対応について

◆日本銀行のマイナス金利政策で貸出金の利息収入が減り、地方銀行の経営環境は厳しい。鳥取銀行も今年3月期の連結決算で経常収益が5年連続の減収となり、店舗の再編が急務となっていた。

◆日南町のクレームを受けて、鳥取銀行の平井耕司頭取は9月14日、町役場を訪れて増原聡町長と面談。町内預金者への不便さや負担を軽減する方法など善後策を協議し具体化させることで合意はしたが、町は同行の今後の対応などを見て取引再開を判断するとしており、5億6千万円の定期預金は解約したままとなっている。

◆経営統括部は「ネットバンキングやコンビニのATMの普及もあり、窓口の利用客は少なくなっている。窓口を減らす分、営業担当者を増やして『攻めの経営』に力を入れる」としているが、はたして計画通りに進むのだろうか。

まとめ

 【表2】を見ていただきたい。鳥取銀行の18年6月期の純資産は499億円。また島根銀行は183億円。山陰合同銀行は3,640億円となっており、圧倒的な差があることが読み取れる。
 地銀にとって日銀の進めるマイナス金利政策の影響は大きい。預貸金のボリュームの小さい銀行は支店の閉鎖を含め、経営の効率化を図っていかないと、単独で生きていけない状況にある。それに「クレーム」をつけたのが日南町だった。
 しかし、今後を生き残るためには経営統合を選択するしか道はない。今までの経営統合は独禁法の関係で公取委の承認を得れば良かった。しかし今回の件で、収益力回復のため支店の統廃合を進める銀行側と、住民の利便性低下に危機感を抱く自治体側が対決する構図が新たに加わった。今後は全国で展開することが予想され、地銀にとっては今まさに、『進むも地獄退くも地獄』の状況にあるといえそうだ。

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(了)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

(中)

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